前年は赤字だったヴィッセル神戸が、それまでの記録だった2017年度の浦和レッズの79億7100万円を大幅に更新するJリーグ史上最高額の営業収益96億6000万円という“数字”を叩き出した。その中身はというと、「スポンサー収入」が28億5600万円増の62億800万円、「入場料収入」が3億2600万円増の8億4000万円、「物販収入」が1億9300万円増の3億8800万円、「その他収入」が11億2700万円増の16億1400万円。「さすがイニエスタ、スーパースターの加入がこんなに効果があるとは!」という単純な話ではないようだ。

「一般的に考えると、人件費は売上の半分程度に抑えないとプロスポーツチームの経営はまわりません。でもイニエスタだけで32億5000万円、さらにポドルスキがいて、今シーズンはビジャも加入した。この3人と他の外人選手だけで96億の半分は超えているのではないでしょうか。経営のバランスとしてはあまりよくないと思います」(森本氏)

池田氏は、ベイスターズ時代の経験から、チームに突出した年俸の選手がいることに疑問があるという。

「イニエスタは素晴らしい選手だと思いますが、ちょっと払いすぎですよね。イニエスタに払っている半分の金額でアントラーズを買えるんですから、費用対効果がいいとは思えない。それに選手同士って意外と年俸を気にしていて、『オレが3000万下がった分がアイツに払われているのか』とかって考えますからね(笑)。チームに不協和音が生まれないか心配です」(池田氏)

「そういう部分は少なからずあると思います。有名選手がチームに来るのはいいけど、だいたいがピークを過ぎているので、守備をそれほど真面目にやってくれない。そうすると、彼らの分まで若手選手が汗をかくことになるんですが、それでも年俸は100分の1。ヴィッセル神戸があれだけの選手を揃えているのに成績が振るわないのは、そういう事情もある気がします」(森本氏)

「スポンサー収入が62億円以上というのもちょっと疑問があります。プロ野球は72試合ホームゲームがありますが、それでもスポンサー収入は20〜30億円程度。それが20試合程度のJリーグで60億以上というのは、考えにくい。実際はほとんど楽天グループがスポンサードして補填しているのではないでしょうか」(池田氏)

イニエスタなどの高額な有名海外選手の獲得にDAZNマネーが大きく寄与していることは業界内では有名な話。イニエスタの32億円のうち、DAZNマネーが20億円とも25億円とも言われている。それが62億円のスポンサー収入にカウントされているのだとすると、それは果たして、持続力のある、実力で獲得したスポンサー費用といえるのだろうか。もちろんどこにどんなふうに資金を使うかは、各チーム、各企業それぞれが考えること。ただ池田氏は、この莫大な資金の“将来像”が見えないことを懸念する。

「イニエスタが加入したことで、楽天のネットショッピングの売上が伸びたとか、そういう効果があるのかが気になります。さらにいえば、Jリーグの課題点はファンの年齢層が高く、その人たちがリピートすることで経営がまわっていること。ファン層が拡大していない。イニエスタ効果によって、ファン層が広がっているのならいいのですが……」(池田氏)

「Jリーグのファンの平均年齢は40歳代前半。Jリーグ発足時にファンになった若者がそのまま年をとったような状態です。ヴィッセルが大量に投下している資金が20〜30歳代の若いファンの獲得につながっているかと言われれば、確かに疑問ですね」(森本氏)

現在(2019年9月20日時点)ヴィッセル神戸はJ1の18チーム中9位。いまのところ成績にイニエスタ効果があるとは言い難い状況だ。こういったビジネス面ばかりでなく、サッカーそのもので注目されることを誰よりもヴィッセル神戸のファンが望んでいるだろう。




取材協力:文化放送

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VictorySportsNews編集部