【第四回】川淵三郎×池田純。2人の革命児が語るスポーツエンターテイメントの経営と未来
第4回となった川淵三郎氏と池田純氏の対談では、日本スポーツ界への具体案を提示。スポーツ経営を引っ張る2人の具体案とは——
インタビュー=岩本義弘、撮影=新井賢一
bjリーグとNBLの統一を阻んだ問題点
©共同通信川淵 bjリーグはプロのクラブとしてスタートした。NBLというのは企業チームのリーグだから、あまり集客に努力しなくても会社が支援してくれるし、お金が潤沢にあって給料も高いからいい選手が入っていた。そういう対比で、両リーグはなかなか一緒になれなかった。bjリーグはエンターテインメント性とか地域に根ざすとか、経営者としてなんとか顧客を増やしていこうっていろいろな努力をしていた。
しかしながら、実力のない急造のチームを参入させる等、実力差があり過ぎる22ものクラブがあってどうするのかっていうくらいおかしなことをやっていた。ただ、少なくとも僕が見る限り、すごく優秀な若い経営者がいる。こういうのがいれば大丈夫だなって思った。というのは、やっぱりお客さんを集めるためにはどうしたらいいか、地域に密着するためにはどうしたらいいか、どうしたらお金を集められるか、スポンサーを集められるか、ものすごく苦労している人がいるんだよ。だから僕はすごく安心している。
今のBリーグには最低でもそういう苦労をしながらクラブ作りをしてきたのが7〜8人はいるね。だから、Bリーグの将来を心配はしてない。bjリーグでは給料はそんなに出せない。出せないから日本代表クラスの選手は来ないよね。みんな高給な企業チームのところに行くわけでしょ。お客さんが入ろうが入るまいが、選手にとっては関係ないからね。給料をもらえるかどうかだから。そういう理由で、レベルの高い選手はみんなNBLに行っていた。bjリーグには弱いというか、背の高くない上手でない選手しかいない。でも、彼らはそれなりに努力をしてきていた。そういった区分けに今まではなっていたわけだよ。
これが1つにまとまり、全体がBリーグという形で収入も増え、スポンサーも増えて、bjリーグ所属だった選手たちの給料も上がっていって、実力がある程度平均化していけばいい。だけど、今はまだ多少いびつだから、bjリーグ出身チームはほとんど勝てていない。沖縄なんかbjリーグで優勝するクラブだったけど負けが込んでいる。僕らは負ける理由をはっきりわかっているんだけど、彼らはそれをカバーするだけの能力を持っているから、あまり心配はしていない。移籍もドンドンと行っていけばいいしね。bjリーグは1人当たり最高でも500万円しか出せなかった。100万円とか、ほとんど年俸をもらってない人もいた。
今ではかなりの給料がもらえるようになった。それが僕としては一番うれしいことなんだけどね。今、日本人選手で高給なのは5000万円くらい。だから、早く1億円の選手を作りたい。だけど、今の感じを見ていると3年も経てば大丈夫だろうなって思う。選手が頑張れば頑張るほど給料が増えるということのスタートが、ようやく始まったところ。今の戦力格差はbjリーグとNBLリーグの延長線上だから、ある程度はやむを得ない。これは初めから割り切っていた。
地元の人たちにしてみれば、「なんで沖縄が勝てないの?」「秋田がこれだけ勝てないの?」ってなっていて、その説明に社長は頭が痛いと思うよ。でもそうなることは十分予想していたことであって、いずれそんなのはバランスが取れていくに違いないんだから。配分金だとかに関しても、ちゃんとした努力に報われる形での配分にしてあればいいなと思っているしね。
池田 僕もBリーグの開幕戦に行ったんですよ。
川淵 本当? すごいね。
池田 おっしゃられているとおり、エンターテインメントというステイトメントで、ドーンとうたわれている。あの開幕戦はすごくそれを感じました。ですが、これから先にどうなっていくのかというニュースにはまだ多くは触れていません。今後は、どれだけスポーツエンターテインメントとして突き詰めていくのかなというのは気になりまし、期待しています。バスケも好きでNBAも見に行ったことがあるんですけど、床がキュッキュッキュッキュって鳴る音が好きなんですよ。下をLEDコートにしたことであれが鳴らなくて、好きな部分がなくなっていてちょっと……って思いましたね(笑)。
Bリーグの未来
©共同通信池田 今後はどのようにエンターテインメント性を追求されていくのでしょう? やっぱり野球もサッカーもバスケも全部、スポーツエンターテインメントであってほしい。それらの競技がスポーツ界を引っ張っていってくれる何かを作ってくれるのかなって感じています。
川淵 サッカーなんかよりは、ずっとやりやすいのよね。音楽が使えるでしょ。それからハーフタイムにいろんなことをやれるし、タイムアウトを取っても何かやれる。あれはバスケットの利点だね。
池田 これまでの野球もイニング間はみんな、「おトイレタイム」だったんですよ。僕らはそこを全部、1000万円のスポンサーがつくクオリティのイベントに変えました。1回から9回まであるので、それで年間8000万円くらい入ってくるんですよ。バスケットは音とかで……重低音シートとかあったらいいなと思います。だけど、やり方はいっぱいある。ハードもいっぱいあるじゃないですか。エンターテインメント性をあまねくいろんなところにということが難しい中で、どれくらいどこにフォーカスするのでしょうか。
川淵 まだ、そこまで突き詰めていないけどね。Bリーグにいる葦原一正事務局長が、池田さんの時代の横浜DeNAベイスターズでのいろんな経験を生かして、今そういったことを中心にやっています。やっぱり若い人の感性がすぐ有効に活用できることはすごくいいと思う。エンブレムもそうだけど、僕なんかは一切口出ししていない。僕らは口出しする年代じゃないもん。若いものが考えるべきこと。僕らは経営のことについての問題点で譲れないものはいろいろと言うけど、ほとんど意見は言ったことないね。意見を言わなくても大丈夫だから。今のBリーグを運営している若手は、自分がこの競技を発展させたいと思って来ている人だから、日本バスケットボール協会の職員と立場が全然違う。新しい人たちは任せておいてもいいけど、協会という旧体制を変えていくのが大変なんだよ。だから、協会の改革は最低でも2年はかかると思っている。こっちが大変。いかにどう変えるか。これは具体的な目標設定を与えながら、47都道府県の全部を変えていかないといけないから一筋縄ではいかないですよ。人を全部変えられたら簡単だけど、それをカバーする人材がいるとは限らないからね。Bリーグがラッキーだったのは募集したというか、葦原事務局長みたいのがいっぱい来てくれた。今の広報の女性も前向きで、いろいろやってくれたりしてくれているからね。ただ、それがまた協会とのギャップが大きい。
【第六回】川淵三郎×池田純 スポーツエンターテイメントの経営と未来
スポーツ界のリーダーである川淵三郎氏と池田純氏の対談もいよいよ最終回。2020年に開催される東京オリンピックへの提言。そして、未来へと続く日本スポーツ界への提言とは——