まず、日本が11連勝できなかったことについては、いずれ連勝は途切れるものですから、悲観的に考える必要はないでしょう。それがグループリーグの試合だったので、負けたら終わりというトーナメントでの敗戦でなくてよかったと思います。
そしてこの敗戦で雰囲気がピリッと引き締まったのではないでしょうか。日本は2022年カタールワールドカップのあと、非常に順調に試合をこなしていました。それが「アジアでもきちんと対峙しなければ足元をすくわれる」と再びしっかり地面に足を着けられたのではないかと感じます。
2位突破が現実的になったことで、今後の対戦カードに強豪チームが続くことも見えてきました。ベスト16で韓国、準々決勝はイラン、準決勝は前回のチャンピオンであり、決勝で敗れた相手でもあるカタール、そして決勝はオーストラリアや今回負けたイラクという可能性が出てきています。
さらに日程もきびしくなります。1位通過だった場合は中4日、中3日の組み合わせでトーナメントを戦うことが出来ました。ですが、2位通過だと準々決勝以降は中2日、中3日の組み合わせになり、特に決勝まで進んだときは対戦相手よりも1日休息日が少なくなるのです。
これはワールドカップ本大会のいいシミュレーションになるでしょう。選手の体調をどう整えるかということだけではなく、スタッフが相手をどこまで分析することが出来るかなど、多くのテストが出来ると思います。
今のアジアカップは優勝したからといって賞金など以外に他の大会につながることはありません。だったらここは思い切ってアジアの強豪チームと厳しい日程で戦い、チーム力を向上させることのほうが重要だと思います。
そして何より、イラクに負けたことで、勝ったときには曖昧になっていた問題点が浮かび上がってきました。現時点でそのポイントを確認することはとても重要です。
まず、イラク戦はアジアのチーム相手の典型的な負けパターンでした。日本がボールをキープするものの相手は少ないチャンスに掛けて得点を奪いに来るというものです。そして日本は少し構えて相手を受けてしまいました。ロングボールを放り込まれ、守備ラインが下がって中盤にスペースが生まれ、相手がセカンドボールを拾いやすくなるという状況も生まれました。
日本が強豪チームを相手にしたときのように、前線から積極的にプレスをかけていけば改善できたのではないかと思います。アジアのチーム相手であっても、受けてしまう戦いをしては苦しくなるということを「教訓」として得ることが出来ました。
選手の組み合わせにも改善の余地があることも分かりました。ベトナム戦で短い時間ながら投入された久保建英の出来がよかったので、久保を中央に、ベトナム戦で活躍した南野拓実を左サイドに配置したのでしょう。南野が中央に進出して、左のアウトサイドに伊藤洋輝が進出したことで、伊藤のチャンスメイクを見ることはできました。
ただ南野と久保が中央で重なってしまうことになり、結果的にお互いのよさが出なかったと思います。今後、2人が同時にプレーする機会をもっと作らなければ解決できないというのも見えました。
左サイドはコンビネーションをどう作るか苦労していた一方で、前半の右サイドは伊東純也に任せっぱなしになってしまいました。そのため横のバランスが悪くなっていたように見えます。伊東を左に回したのは、左右のアウトサイドともピッチの横幅を広く使って攻撃したいという変更だったと思いますが、その点についてはもっと早く修正してよかったでしょう。
それから、選手の適正ポジションは分かっているので今後はその組み合わせの可能性を見出してほしいと思います。たとえば、久保と浅野拓磨のワントップという組み合わせについては改善の余地がありました。浅野はディフェンスラインの裏に抜け出すタイプ。でも久保はボールを持ったときに前線に当てて、落とされてきたボールを持って前を向いたときに強みを出せます。ですので、上田綺世のようなポストが出来るプレーヤーのほうが持ち味を発揮できると思うのです。
こういう組み合わせで解決策を探していくという作業は必要でしょう。特に前線は2人のコンビで崩しからフィニッシュまで行く場面が出てきます。そんなプレーを期待したいときに誰と誰が機能するのか、さらに探っておくべきではないでしょうか。
と、これだけいろいろなポイントをイラク戦の敗戦で考えることができました。そしてまだ大会から別れを告げる状況にはなっていません。ここから盛り返してこそ、本当に強いチームです。今後の戦いを楽しみにしています。
【前園真聖コラム】イラクに負けたことで日本代表に起きたプラスとは
アジアカップで日本はイラクに1-2の敗戦を喫してしまいました。もちろん負けたことで批判しなければならないことはあると思いますが、僕はこれをプラスに捉えてもいます。
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