小池百合子都知事が見直しを図った3会場

 小池百合子知事が見直しを図ったのは3会場。いずれも経費削減をすることで、当初予定していた会場のまま決着を迎えた。

▼ボート・カヌー
誘致の際より推薦されていたのは、「海の森水上競技場」(東京)。立候補の段階では約69億円の見込みだったが、実際には約500億円という巨額の整備費がかかるという試算が問題視されていた。また、通常は淡水で行う競技を海水で行うことによる競技性の低下も懸念されて、会場の見直しが図られた。コストや競技性を考慮に入れて、長沼(宮城)や彩湖(埼玉)が新たな候補地となったが、結果として経費削減をすることを条件とし、海の森水上競技場への新設が決定された。

▼水泳
東京都江東区に新設する「オリンピック・アクアティクスセンター」もコストの面から見直しを図られた。立候補段階では約321億円だったコストが、都の調査により約683億円と試算された。その後、「東京辰巳国際水泳場」を拡張することによる会場変更も検討されたが、座席数を減らすなどの見直しにより経費を圧縮。当初の予定どおり「オリンピック・アクアティクスセンター」を新設することになった。

▼バレーボール
誘致段階では約176億円で「有明アリーナ」を新設することになっていたが、改めて試算したところ約404億円となり見直しが検討された。代替案として横浜アリーナが候補となったが、「海の森水上競技場」や「オリンピック・アクアティクスセンター」と同様に、経費削減を行うことで「有明アリーナ」を新設することに決まった。また、大会後には運営権を民間企業に売却する方針も発表されている。

 見直しを表明した3会場だったが、すべてが変更されることなく当初予定していた地に整備されることで決着。小池知事は「約400億円を削ることができる」と見直しを図ったことによるコスト面での成果を挙げて事態は収束した。

新たな問題が発生している会場選定

 小池知事による会場の見直しは、昨年中に結論が出て現在は落ち着きを取り戻している。しかし今年に入り、別の会場や競技で新たな問題が発生し、紛糾している最中となっている。

©共同通信

(写真=2020年東京五輪会場の霞ケ関カンツリー倶楽部)

▼ゴルフ
国内屈指の名門コースとして知られる埼玉県にある「霞ヶ関カンツリー倶楽部(以下、霞ヶ関CC)」が選定されていた。しかし、女性正会員を認めていないことが差別を禁じる五輪憲章に抵触していると指摘され、別会場への変更も含めて見直すべきとの声も挙がっている。そもそもは、候補地選びの段階で国際ゴルフ連盟(IGF)に送付する霞ヶ関CCの資料に、その細則である「正会員は男子とする」という英訳文が抜け落ちていたことに端を発しているというが、霞ヶ関CCは細則の改定を求められているのが現状となっている。

代替候補地として、横浜カントリー倶楽部(神奈川)や若洲ゴルフリンクス(東京)が挙がっているが、現状ではIGFの出す条件を満たしておらず、コース改修など新たな整備費が必要となる見込みだ。

この問題を受け、世界ランキングで日本人最高位につける松山英樹は、「メンバーシップのことでいろいろ問題はあると思います」と前置きした上で、「できれば霞(ヶ関)でやってほしい」とコメント。現在の礎となっている2010年アジアアマチュア選手権優勝の地で開催されることを希望している。

霞ヶ関CCは細則を改定する方向で協議をしている段階だがまだ結論は出ておらず、国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ副会長が「6月末までに決着がつくことを期待している」と声明を出している。

▼サッカー
招致段階では、新国立競技場(東京)、味の素スタジアム(東京)、札幌ドーム(北海道)、ひとめぼれスタジアム宮城(宮城)、埼玉スタジアム2002(埼玉)、日産スタジアム(神奈川)の6会場で行う計画で決定していた。3月に入り、大会組織委員会がカシマスタジアム(茨城)を加えることで調整していることがわかった。それを受けて、日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長が会見し、「1つ増やすだけでは足りない」と述べ、組織委員会に再検討を求めていく考えを明らかにした。

連日の使用によるピッチ状態の悪化によって競技性が損なわれることを懸念したJFAは、当初より決まっていた6会場に加え、カシマスタジアム(茨城)、豊田スタジアム(愛知)、市立吹田スタジアム(大阪)の3会場を追加申請していた。さらに、他競技でも使用する「新国立競技場や味の素スタジアムが、どのくらい使えるのかはっきりしない」とも話している。

最終的な決定には国際サッカー連盟(FIFA)の承認が必要で、結論はしばらくの間持ち越されることになる。

 「有明アリーナ」問題を最後に落ち着いたように思えた五輪会場の問題だが、今年に入りすでに2競技で問題が発生しており、いずれも解決には至っていない。今後どうなるか行く末を見守りつつも、新たに同様の問題が発生しないことを祈るばかりである。


VictorySportsNews編集部