4本のフリースローを与え集中力が切れたアルバルク東京、勝負どころで11-0と走った栃木ブレックスが首位攻防戦を制す
リーグを代表する強豪がハイレベルな攻防を展開 東地区首位の栃木ブレックス、2ゲーム差で追うアルバルク東京。この両チームによる東地区の首位攻防戦がブレックスアリーナで行われた。ここまで対戦成績では栃木が3勝2敗とリードしている。 A東京は田中大貴が疲労性腰痛で欠場となり、松井啓十郎が今シーズン3度目の先発出場となった。オン・ザ・コート数はともに「1-2-1-2」を選択。 序盤はザック・バランスキーの思いきりの良い3ポイントシュートや松井のペリメーターのシュートが高確率で決まりA東京が先行する。それでも第2クォーターに入り田臥勇太のドライビングレイアップで栃木が19-18と逆転。 互いにボールマンへの激しいチェックでパスコースを塞ぎ、守り合いの展開となる。ここでじわじわとリードしていったのは栃木だった。キーマンとなったのは渡邉裕規。ディナイ気味のディフェンスの前に攻め手がなくなった場面で、ショットクロックギリギリからタフな3ポイントシュートを連続で沈め、さらにはリバウンドから速い展開に持ち込んでディアンテ・ギャレットのアンスポーツマンライクファウルを誘発。最後にはライアン・ロシターがオフェンスリバウンドからボールを押し込み、39-31とリードして前半を終えた。 だが後半開始から45秒で田臥が個人3つ目のファウルを犯しベンチに戻ると、流れはA東京に。前半よりもリングへのアタックを意識したオフェンスに、ドライブで崩され失点を重ねる。ジェフ・エアーズのワンマン速攻が決まりA東京が8-0と走って39-39の同点に。 だが、その後は栃木も持ち直す。第3クォーターの最後には須田侑太郎が自陣から高速ドリブルで持ち込み、そのままレイアップを沈めるコースト・トゥ・コーストが飛び出し、栃木が55-53とリードして最終クォーターを迎えた。 相手のミスから得た『勝機』を逃さず勝ち切った栃木 勝負の第4クォーター、先行したのは栃木だ。ファウルトラブルにより45秒しかプレーしなかった第3クォーターの分まで積極的にプレー。重たかったオフェンスリズムを変えようとボールをプッシュし、アップテンポな展開を作り出す。だがA東京もセカンドチャンスからの得点やジェフ・エアーズのインサイドプレーで食らい付き、膠着状態のまま時計は進んでいった。 そして残り5分19秒、栃木が2点リードの場面で勝敗を左右するプレーが生まれる。3ポイントシュートを狙う古川孝敏にギャレットがファウルを犯し、栃木が3本のフリースローを獲得。さらにそのコールに納得のいかないギャレットが激昂し、テクニカルファウルをコールされる。これで栃木は計4本のフリースローとポゼッションを獲得。古川がこの4本をすべて沈め、一気に6点のリードを奪った。 試合巧者の栃木はこの機を逃さなかった。ボールマンにも受け手にも一段と激しくチェックし、シュートを打たせず24秒バイオレーションを取る。さらにギャレットのパスミスを誘い、ロシターが速攻を決めて点差を2桁に乗せた。 悪い流れを止めたいA東京がタイムアウトを取るも、その直後に古川が3ポイントシュートを決め、11-0のランに。ギャレットのバスケット・カウント、エアーズの3ポイントシュートを浴びながらも、ジェフ・ギブスのブロックショット、田臥から古川のバックドアでトドメを刺し、80-66で栃木が勝利を収めた。 重要なフリースローを託された古川「リズム良く打つだけ」 ヘッドコーチのトーマス・ウィスマンはリバウンドとフリースローを勝因に挙げた。「ロシターとギブスが重要な局面のリバウンドを制してくれた」と特に2人の奮闘を称えた。「フリースロートライも多く、高確率で決めれたことも良かった。アグレッシブに攻めていた証拠だと思います」 実際、勝負どころの第4クォーターで11本のフリースローを獲得し(A東京は1本)、そのうち10本を成功させた。明日の第2戦へ向け「フィールドゴールの確率が40%なのでここは上げていかないといけない」と反省点を口にした。 第4クォーターだけで13得点を挙げた古川は、ターニングポイントとなった4本連続フリースローの場面の心境をこう説明した。「緊張したんですけど、決めるっていう気持ちは正直なかったです。いつもどおりのルーティーンがあるので、それを一つひとつ自分の中の流れでやって、リズム良く打つだけでした」 敗れたA東京の伊藤拓摩ヘッドコーチは「残り5分までに1点差だったんですがあそこで3本のフリースロー、プラステクニカルファウル、あそこで試合が変わってしまった」と0-11のランのきっかけとなったシーンを振り返った。 「あそこで我慢ができなかったのがチームの弱さなのかなと。どんなことがあっても集中し続けないといけない。その弱さが明確に見えたので、チームとしてよりタフにならなければいけないと気付かされた試合でした」 これでA東京とのゲーム差を3に広げ、地区優勝に一歩前進した栃木だが、ここまで上位チームとの連勝がないだけに、チャンピオンシップでの戦いを見据える上でも『連勝』が至上命令となる。
文=丸山素行 写真=B.LEAGUE