富山グラウジーズ『6度目の正直』でサンロッカーズ渋谷から初勝利、アグレッシブ&タフに戦い抜いてB1残留に一歩前進
前日の反省を生かし、宇都が負けん気全開でチームを牽引 土曜の第1戦では62得点とオフェンスが不発に終わり、62-71でサンロッカーズ渋谷に敗れた富山グラウジーズ。4月2日の第2戦、まずは前日に14-22と離された立ち上がりの悪さを修正した。スタートからとにかく積極的に。宇都直樹はこのクォーターわずか2得点だが、自ら仕掛け続けて6本のシュートを放ち(前日は1本)、チームに推進力を与えた。 すっかり先発に定着した特別指定選手の小原翼もアイラ・ブラウン、ロバート・サクレといった大型選手に臆することなくファイト。接触プレーで鼻を強打しベンチに下がったが、それまではチーム最年少の彼が身体を張ったプレーでSR渋谷の攻めを食い止めた。 課題の第1クォーターを17-17の同点で乗り切ると、第2クォーターに流れがやってくる。両チームともセカンドユニットで戦う時間帯、SR渋谷は満原優樹がオフェンスリバウンドに3ポイントシュート、さらにはうまくパスをさばいて2アシストと活躍するが、他が続かない。一方の富山はデクスター・ピットマンがインサイドを抑え、ドリュー・ヴァイニーがペリメーターを自由に動いて多彩な攻撃を演出。37-31とリードして前半を終えた。 そして第3クォーター、鼻の治療を終えた小原がコートに戻り、オン・ザ・コート「1」のインサイドを支える。動きはまだぎこちない小原だが、シンプルかつ全力のプレーで役割を果たし、周囲のサポートもよく効いてチームの力になっている。 宇都も第2クォーターは全休だったが、コートに戻って来ると持ち前の負けん気全開でSR渋谷に挑みかかった。その宇都は8得点、水戸健史も果敢なアタックで相手ディフェンスを苦しめ、さらにはエースの城宝匡史が10得点の固め打ち。 第3クォーターの最後には、城宝が大塚裕土との1on1でしっかりとシューティングファウルを獲得。このフリースロー2本を沈めた後は、残り7秒でのベンドラメ礼生へのアタックにもしっかりと身体を寄せて守り切り、71-60と2桁のリードを保って勝負の第4クォーターへ。 勝負どころで進めないSR渋谷、ひたむきに走った富山 城宝が先ほどのプレーで左手を痛めベンチに退き、相手のブレイクの際にボールのないところでブラウンを止めたヴァイニーがアンスポーツマンライクファウルを取られる。そのヴァイニーは直後のプレーでもリバウンドのポジション取りでファウルをコールされ、第4クォーターの立ち上がりは危なっかしい展開ではあった。 ただ、この日のSR渋谷はシュートタッチが悪く、決めれば富山にプレッシャーをかけられる場面でシュートが決まらない。さらにはリングに向かう積極性でも富山に劣り、せっかくのチャンスに差を詰められない。65-55でSR渋谷がタイムアウトを取った残り6分20秒、城宝が治療を終えてコートに戻る。結果論ではあるが、エースが戻ったことを機に富山は立ち直っただけに、ここまでの時間帯で追撃できなかったのが実はSR渋谷にとっては決定打だったのかもしれない。 富山は勝利へのひたむきさを前面に押し出す。宇都が身体を投げ出してルーズボールを残すと、ピットマンからヴァイニーへと回して得点につなぎ、67-57と再び10点差に。その後は守備を引き締め、SR渋谷の武器である3ポイントシュートをフリーで打つ機会を作らせず、24秒バイオレーションも誘発。 その後も無難に時計を進ませ、残り27秒ではアールティ・グインが強引に狙う3ポイントシュートをサム・ウィラードが叩き落す。ブレイクで走った宇都はあえてシュートを打たずに時間を使い、わざと24秒オーバータイムに持ち込み、79-70で試合終了となった。 攻守に会心の勝利、指揮官は「チームの勝利」を強調 富山にとってはSR渋谷と6度目の対戦で初勝利。2月末の栃木ブレックス戦から一度も連敗を喫しておらず、チーム状態は上向いている。リーグ全体で勝率が最下位だったところから浮上し、気づけば中地区の5位につける横浜ビー・コルセアーズにゲーム差1と肉薄。チーム全員で戦えていることに加え、それぞれの個性もしっかり生きており、プレー内容が向上している。 勝った富山のヘッドコーチ、ボブ・ナッシュは「相手のアウトサイドの選手への守備を改善し、連続3ポイントシュートでリズムをつかませないディフェンスを徹底できた」と勝因を語る。さらにはオフェンスでも「リーグ3位のディフェンス力を誇る渋谷を相手に79点を取れたのはオフェンス力の証明」と語る。 ヴァイニー、ピットマン、宇都そして城宝と『活躍すべき選手』の活躍が光ったが、ヘッドコーチはチームでの勝利を強調する。「第2クォーター、セカンドユニットの選手が頑張ったことが力になった。スタートで出た選手を休ませることができたこともあり、本当に第2クォーターが大きかった」 一方のSR渋谷を率いるBTテーブスは「ウチ以上に富山が良いプレーをした」と負けを認めた。「城宝選手が上手く外で、良い形で引きつけていましたし、宇都選手は中に対して積極的に切り込んでいたところで、自分たちは抜かれたり、ファウルを取られたりでスクランブルな状況となり、それが負けにつながったと思います」 両者の対戦は4月29日と30日の大田区総合体育館での開催が最後となる。富山は残留争いが、そしてSR渋谷はプレーオフ進出の最後の枠を巡る争いが、そこまで続いているだろう。今回は1勝1敗だった両者の『再戦』が、シーズンを左右する可能性は高い。
文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE