[CLOSE UP]ライアン・スパングラー(川崎ブレイブサンダース)川崎を初代王者に導くラストピース、ついに戦線復帰!
戦線離脱が長引くも、ギリギリのタイミングで復帰が実現 4月22日、23日と川崎ブレイブサンダースは敵地に乗り込みサンロッカーズ渋谷と対戦した。22日は第1クォーターで大量リードを奪いそのまま逃げ切り勝ちを収めたが、23日は逆に序盤で主導権を握られ、競り負けての1勝1敗で終わった。 惜しくも連勝を逃した川崎だが、この連戦チームにとって大きなプラス材料があった。それは1月28日の試合を最後に戦線離脱していたが、ライアン・スパングラーが遂に復帰を果たしたことだ。 今シーズン開幕前、川崎にとって唯一の新戦力として加入したスパングラーは、序盤から持ち味であるスピードとコンタクトの強さを生かしたプレーで躍動。リバウンドの強さに加え、ゴール下への切れ味鋭いアタックで得点を重ね、ニック・ファジーカス、辻直人の2枚看板に匹敵するインパクトをチームにもたらし、シーズン序盤における川崎の快進撃を支えた。 しかし、1月28日の試合で左ひざを負傷し、当初は約1カ月の離脱と見られていたのが、回復まで時間がかかり復帰まで約3カ月かかることになった。これ以上、復帰が遅れると、ぶっつけ本番でのチャンピオンシップとなってしまう。スパングラーは、今季がチーム1年目で他の選手との『阿吽の呼吸』が出来上がっているわけではなく、実戦を経験してコンビネーションの再構築を行うことは欠かせない。川崎にとって、まさにギリギリのタイミングでスパングラーの復帰が実現したというところだ。 「ケガをした後、すぐアメリカに帰国し、先週の木曜日に帰ってきました。金土と試合を見て、今週からチーム練習に復帰しました。正直、これほど長くかかるとは思っていなかったので大変でした。最初の1か月は本当にキツかったです。ソファーに座っているだけで、他に何もできない時期はフラストレーションが溜まりました。その後にフィジカルセラピーを始め、ボールを使った練習ができてきたことで、ようやく気持ちが落ち着きました」 長期欠場でチームは苦しんだが、選手層は厚みを増した チーム再合流までの道のりは険しいものだったが、それでもようやく戻って来ることができた。こうして迎えた22日の復帰戦については「足の調子は問題なく、緊張や不安もなかったですが、コートに入る時に『チームのリズムに乗れるか』、『どういうプレーができるか』は気になっていました。しかし、実際にプレーを始めたら気にならなかったです。また、今週ずっと『ダンクをしたい』と言っていた中で、ニックからのパスを受けてアリウープを決めることができました。思っていたより身体が動いて良かったです」と振り返る。 22日に続き、約20分のプレータイムだった23日の試合を終えてコンティションについて聞くと、「まだベストの状態ではなく、今は90%くらい。昨日よりも今日の方が感覚は良かった。プレーオフまでにどんどんコンディションを上げていきたい」と好感触を得ている模様だ。 また、自身が離れている間のチームの変化について聞くと、「永吉(佑也)や鎌田(裕也)などベンチメンバーがステップアップした。よりチームの層が厚くなってチャンピオンシップに行けると思います」と続ける。 いよいよ間近に迫っているチャンピオンシップは決勝が一発勝負、そして準々決勝、準決勝も2戦先勝だが、1勝1敗の場合は2試合目の後、前後半5分の第3戦と、こちらも短期決戦であることに変わりはない。 そして短期決戦といえば、スパングラーは去年、オクラホマ大学の不動の先発メンバーとして全米大学選手権でファイナル4(準決勝)進出と経験豊富である。彼に一発勝負、短期決戦で鍵となるポイントを聞くと、「試合の出だしでリードを許し、相手に自信を与えてはいけない。そこから追いついて勝つのは難しくなる。今日の試合で、そのことを学んだ」と語る。 「ハッスルして、チームにエナジーを与えること」 ちなみに北卓也ヘッドコーチはスパングラーの出来について「動き自体は良いと思います。スタミナを心配していましたが、後半ちょっとバテてしまい、その影響かオフェンスリバウンドを取られたところもありました。ゲーム感もまだ戻っていないですし、一つひとつステップアップしていくしかない」と23日の試合後に評している。 「僕の仕事は、ハッスルしてチームにエナジーを与えること。どんな試合でもハッスルは自分でコントロールできることだからね」と自身の役割について語るスパングラー。そしてピック&ロールなど周囲とのコンビプレーについては、「タイミングの問題で、練習と試合を重ねていくことで精度を上げていきたい」と意気込む。 今週末の試合は等々力アリーナでの開催。スパングラーにとっては1月18日以来のホームゲームであり、等々力での試合は実に昨年の12月24日以来となる。 「等々力でのゲームをとても楽しみにしている。ホームであり、多くの人が応援してくれる。ファンの皆さんに早く自分のプレーを見せたい」。そう語るスパングラーが、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか。本人だけでなく、川崎ファンも楽しみにしているはずだ。
文・写真=鈴木栄一