“家庭の事情”を理由に帰国・退団した大物選手も……

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 「最速161キロ!」「メジャー通算122発!」――。そんなインパクトある触れ込みで異国の地へ降り立った新助っ人たちが、ことごとく苦しんでいる。近年はシーズンの早い段階で“成否”を下す球団も多くなり、4つしかない外国人枠に対し5、6選手を抱えるのが当たり前の時代だ。

 今季ここまでの打撃、投手成績を見るとちょっとした異変に気づかされる。広島のエルドレッドや西武のメヒアなど、日本で複数年プレーする外国人選手たちが抜群の対応力を発揮する一方で、来日1年目で成績上位に君臨するのは両リーグを見渡しても中日のビシエドくらいしかいない。

 昨年は広島のジョンソン、巨人のマイコラス、ソフトバンクのバンデンハークなど、先発投手の活躍が目立ったが、今年はメジャー通算43勝の実績を持つヤクルトのデイビーズ、韓国球界で4年連続2桁勝利を挙げた西武のバンヘッケンらがまるで不発。来日1年目の新外国投手は、誰ひとりとして規定投球回にすら達していないというお粗末ぶりだ。

 野手を見ても同様で、中軸を期待された巨人のギャレットやDeNAのロマックなど、ほとんどの新助っ人がすでに二軍での再調整を経験済み。楽天のゴームズに至っては、不振で二軍落ちしたあと“家庭の事情”を理由に帰国し、そのままチームを去ることになった。 (図1参照)

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救援陣ではスアレスやジャクソンらが好投

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 先発陣や打線の主軸候補は軒並み期待外れに終わっているが、救援陣にはチームにフィットしている選手が何人かいる。その代表格がソフトバンクのスアレスだ。昨年はメキシカンリーグでプレーし、プロリーグ経験期間はわずか1年という変り種。一昨年前までは母国・ベネズエラの工事現場などで働きながら、アマチュアチームに所属していたというから驚きだ。

 その球歴から秘密兵器扱いされていたが、4月10日のオリックス戦でデビューを果たすと、さっそく1回2三振無失点の完璧救援。その後も150キロ超えの直球を軸に快投乱麻の好リリーフを続け、瞬く間に3連覇を狙うチームのセットアッパーに定着した。

 広島のジャクソンとヘーゲンズも好調なチームを支えている。ジャクソンンは昨シーズン不在だった“8回の男”として防御率1点台をキープ。ヘーゲンズは故障離脱のルナと入れ替わる形で一軍昇格を果たし、こちらも不安定なブルペンを支えている。ルナは既に戦列復帰を果たしているが、打高投低のチームはヘーゲンズを優先。広島には同じく新加入外野手のプライディもいるが、こちらも外国人枠の関係でいまだ一軍デビューを果たせずにいる。

 その他、チーム2位の26試合に登板しているヤクルトのルーキ。先発として3勝0敗、防御率2.42の成績を残している中日のジョーダンも、ここまでは額面通りの活躍。一方で、「最速100マイル(161キロ)」との触れ込みで入団したオリックスのコーディエ、「Wストッパー」と騒がれた阪神のマテオとドリスは、それぞれ制球難を露呈し二軍落ちを経験している。 (図2参照)

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我慢が実ったレアードの覚醒――求められる適応力

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 新外国人たちが苦しむなかで、来日2シーズン目となる日本ハムのレアードが本塁打を量産中だ。交流戦前の楽天3連戦で計4発。その数を17本に伸ばし、メヒアを抜きパ・リーグの本塁打ランキングトップに立っている。

 こちらも昨年の今頃は、完全にダメ助っ人扱いされていた選手だった。入団当初は変化球攻めに苦しみ、昨年5月終了時点の成績は打率.190、8本塁打、26打点。よく見るとこの数字、今年のギャレットとほぼ変わらないレベルだ。しかしその後、レアードの本塁打ペースが急激にアップし、最終的に打率.231、34本塁打、97打点をマーク。打率こそ低かったが、持ち前の長打力を発揮しコーナー内野手としての責任を果たした。

 さらに見逃せないのが、全143試合に出場したというその事実である。6月には.176にまで打率が落ち込んだが、それでも栗山英樹監督は我慢してレアードを使い続けた。その成果が、今年の飛躍につながっていると言ってもいいだろう。

 レアードは、自身が不振でも前向きな姿勢を失わずいつも明るさを持ち続けていた。既に代名詞でもある、“寿司ポーズ”でファンの心を掴んだことは説明不要だろう。日本の野球にまったく合わないというケースもあるにせよ、なにより大事なのは異国の地での成功意欲と適応力。そして、そんな選手たちを見守るチーム関係者たちの思いである。

 ここまで数字を残せていない選手でも、力を持ったプレーヤーたちであることは間違いない。序盤戦で躓いた選手は、これまでの失敗を糧にどう巻き返していくのだろうか。
※数字は2016年5月30日終了時点


BBCrix編集部