本拠地特性に負けずに打った日本ハム、投げたソフトバンク

デッドヒートを演じた日本ハムとソフトバンクは、得点、失点どちらでもリーグ平均を大きく引き離しており、突出したチーム同士のマッチレースであったのが一目瞭然だ。ただ、得点と失点は共に同程度ではあったが、本拠地はホームランの出やすいヤフオクドームに対し、比較的出にくい札幌ドームと異なるタイプだったので、実際に選手が発揮していた能力は違いがあったと見るべきだろう。
表向きの数字よりも高い攻撃力(得点力)を備えていたのが日本ハムで、ソフトバンクは数字より高いディフェンス力(投手力と守備力)を備えていたと見られる。ヤフオクドームは本塁打がかなり出やすい球場だったが、にもかかわらずここまで失点を抑えたソフトバンク投手陣の力はかなり絶大だったというべきだ。本塁打が出にくい札幌ドームで行われるファイナルステージに出場することになれば、失点はこの数字よりもさらに低めに出るだろう。

9月以降だと、ソフトバンクが高い攻撃力を発揮している。これは、育成段階の選手を起用してきた下位チームとの対戦が多かったのも影響しているとみられる。ただ柳田悠岐がケガで抜けるなどして攻撃力に陰りが出ていた印象が強いかもしれないが、各打者はそれなりに打っていたと見るべきなのかもしれない。ただ失点も少しペースが上がっており、シーズンも終盤になり登板数が増えたことで、盤石だった救援投手などにダメージが出ていたことの影響がうかがえる。
長打力のソフトバンクがリード 得点をうまく生み出した日本ハム

得点を生み出す上で重要なのが走者を溜める出塁力と、その走者を押し出して返す長打力だが、双方を示す出塁率とISO(Isolated Power=長打率-打率)を見ると、出塁率はほぼ同じ、長打力ではソフトバンクがやや上回る。本塁打は日本ハム121本に対してソフトバンクが114本と少なかったが、二塁打(179本に対し188本)、三塁打(13本に対し30本)とその他の長打がソフトバンクに多かった。それでも平均得点を日本ハムのほうが多く記録しているのは、8割近い高い成功率を誇った盗塁を132個記録し、ソフトバンクの107個を大きく上回ったことなどが影響していると考えてよい。

失点と関わりの深い投手の奪三振力、四球抑止力は対戦打者に占める奪三振の割合(K%)、与四球の割合(BB%)で見る。それから、失点数に影響しやすい9イニングあたりの被本塁打数(HR/9)も見ておきたい。
数字を見ると、ソフトバンクの投手陣の地力がよく表れている。奪三振でも四球抑止でも他球団に対して力の差を発揮。結果的な平均失点で他球団に差がつけられていないのは、被本塁打の増えやすい環境が影響していると見られ、HR/9は0.88とリーグ平均を大きく上回っている。日本ハムはリーグ平均に対しマイナスの数字が出ており、球場に助けられていた側面が大きい。
ロッテはソフトバンクにも負けない四球抑止力が生命線となる。その数字を支えている石川歩のような絶対的な制球力を持った投手は打線の分断が図りやすい。日本ハム、ソフトバンクの爆発的な攻撃力を受け流す、“粘りの投球”を見せられるか。
投手復帰後、制球力高め異次元へ突入する大谷

短期決戦の鍵を握る先発投手のシーズン終盤(9月以降)の成績を確認すると、大谷の図抜けた数字に目を奪われる。38.2%というK%は同僚のクローザー、クリス・マーティンやソフトバンクのデニス・サファテなどクローザーを務めた選手と同じレベルの奪三振力を示している。それでいてBB%も平均を大きく下回る数字に収めており、球速を上げながら制御にも成功している。球は速いがコントロールはまずまず、という大谷の印象は既に過去のものとなっているのだ。
また、先発への転向を図りシーズン終盤に勢いにのった増井浩俊は序盤よりもK%、BB%が共に下がっている。三振を積極的に獲りにいく抑えとしての投球から、失点リスクをうまくコントロールする投球へのシフトを図り、それに成功した。その結果が、8月から9月にかけての7連勝につながったのだろう。
また、中田賢一の荒れ球は持ち味だとして、千賀滉大のBB%の高さは気になる部分。有原航平、武田翔太という両チームの若手の柱が、終盤共に三振が獲れていなかったのもやや気がかりだ。

得点力を取り戻しつつあるソフトバンクに、柳田悠岐が戻ってくるのは非常に大きなインパクトになるだろう。ソフトバンクは8月以降の日本ハム戦は、勝った試合であっても全て3点以内に抑え込まれており、ソフトバンクが日本ハムに打ち勝つ試合というイメージは消えかけていた。だが、これでその懸念も回避できそう。大谷が打線からはずれる試合などは、攻撃力で相手を上回って戦える試合もありそうだ。
ただ「大谷が打線からはずれる試合」というものが、CSにおいては、もはや発生しない可能性もある。仮にはずれたとしても、ソフトバンクが対峙するのは投手・大谷ということになると攻撃面のアドバンテージは消える。大谷はファイナルステージの初戦に投げると予想されているが、挑戦するチームは一気に押し切らなければ、最終戦でもう一度大谷が立ちはだかる可能性も否定できない。中4日での起用は昨シーズンも検討されていたからだ。
もちろん、抑えて当然、打って当然という状況で結果を出すことはこの上なく難しいことだ。かつてないプレッシャーのなかで戦わなければならない大谷が、自ら崩れることも十分考えられる。しかしいずれにしても、1試合でも大谷が実力を発揮した好投を許した時点で、日本ハムを倒すことはかなり難しくなるだろう。