申し分なかったレギュラーシーズン最終戦
今回もまずは前週の振り返りから。
10日の火曜日には、順延になっていた今季最終戦、安藤優也投手の引退試合が行われました。
骨折から復帰のメッセンジャーが完璧な投球で4イニング、規定投球回数をクリアします。想像以上の順調な仕上がりでした。
打っては安藤と同い年の大ベテラン福留孝介が先制タイムリー。すると、新時代を切り開くルーキー大山悠輔が満塁の走者を一掃する3点タイムリー三塁打で加点します。
負けじと福留がソロホームランを打てば、続く大山も連続ホームランで応じる、まさに「新旧主砲の競演」で6-0とリードを拡げます。
投げても、石崎、岩崎、藤川がゼロで繋ぎ、主役に花道をつくります。
8回に登場した安藤、1軍のマウンドは今季初でした。
ところが、中日の新鋭・石川駿にプロ1号ホームランを献上してしまいます。続く野本圭にも痛打されましたが、ここはサード新井良太が横っ飛びのファインプレーでアウトにします。
1イニングという話もありましたが、このアウトで安藤投手は交代。大学、社会人を経て16年という虎一筋の現役生活にピリオドが打たれました。
安藤に代わって登板したのは高卒ルーキー、これが2試合目の登板となった才木浩人。150キロオーバーの直球が冴えて、残りの8、9回を抑えました。
新井良太もこの試合で引退と報じられていました。「あわや」という大ファウルもありました。最後の打席は、一瞬「行ったか?」と思わせる良太らしいレフトフライでしたね。
この試合の勝利投手は石崎で、これがうれしいプロ初勝利。
試合途中には鳥谷の1000四球達成という大記録もあり、見どころ満載のナイスゲーム。
2度の優勝に貢献した安藤。安藤のやさしさで、胴上げと場内一周をともにした良太。一緒に戦った仲間が去っていくのは寂しいものですが、若い選手が活躍を見せて、「後は任せてください!」と言わんばかりの最高の試合内容でした。
前代未聞の雨天強行には、球団の意向も……?
そして4日後、土曜日に行われたDeNAとのCSファーストステージ第1戦。先発マウンドには、なんと中3日でメッセンジャー。またもや完璧な投球でした。
2014年の再現のように、6回福留がホームラン。この2ランによる2点を、マテオ、桑原、ドリスが守って阪神らしい2-0のスコアで先勝。
ところが翌日の日曜日。雨が降り続ける中、試合が強行されます。
追いつ追われつの試合展開の末、6-13で敗れ、対戦成績は1勝1敗に。ファイナルステージ進出は第3戦へともつれ込むことになりました。
と、サラッと書きましたが、この試合は本当にひどいもんでした。降り続く雨で黒土の上に水が浮き、まるで鏡のよう。照明の光、スコアボードがくっきりと映っていました。選手たちは必死でプレーしていましたが、「クライマックス」とは名ばかりの「泥んこ野球」。
何度も何度も砂を入れますので、試合がなかなか進みません。冷たい雨にさらされた観客たちもしんどそうでした。
ここからは多分に憶測含みで書きます。CSの中止判断はリーグが行うのだそうですが、おそらく阪神球団の意向も加味されていたことでしょう。
「絶対にできない」というコンディションなのか、「無理すればなんとかできる」のか、ギリギリの判断だったのかもしれません。でも、少なくともレギュラーシーズンであれば、早々に中止のアナウンスをする状態でしたし、どんなに引っ張っても、5回試合成立で終わらせるべきコンディションでした。
どんないきさつがあったにせよ、強行という判断は間違いだったと思います。
それについては、総合的な問題ですので、きっとNPB全体の問題として今後考えていくことになるでしょう。今日はもうそれはいいです。
第3戦、両チームいいコンディションの中で思いっきり、いい試合をしてくれたら、それが一番。反省は後から、しっかりやってください。
オレたちの誇り「園芸さん」
語りたいのは阪神園芸さん(愛情を込めて「園芸さん」)ですよ。
あの状態じゃ、普通、投げたり打ったりなんてとてもできないでしょう。それを無理やりにでもやらせちゃう技術、職人魂。
もうアンビリーバブルとしか言いようがありません。
そもそも、いくら球団やリーグが「なんとかやりたい」と思ったって、園芸さんが「さすがにこれは無理です」って言っていればおしまいだったことでしょう。
実際、なんと言われて、なんと答えたのかは知りませんが、「とにかくベストを尽くしましょう(キリッ)」てなもんだったのではないでしょうか。
それで試合終了までやらせちゃったんですから、もう恐れ入ります。
球団は事後処理の煩雑さや「欲」もあって、なんとかやりたかったのでしょう。
翌日の予報がもっと悪いのはわかっていたでしょうから、リーグとしてもなんとかもう1試合、やってしまいたかったのだと思います。
現場の選手たちは、心を切らせたら戦えなくなるので、やるつもりでいたでしょうね。
そんな中で、冷静に「こんなの無理ですよ」と判断できたのは、もしかしたら園芸さんだけだったのかもしれません。
でも、園芸さんは、決してそんな出過ぎたマネはしません。
「なんとかやってほしい」と言われれば、どんなに苦しい状況でも、不可能を可能にするために全力を出し切る、そんなプロ集団なのです。
安藤もそうでしたが、引退試合をやってもらう選手は、スピーチで必ず阪神園芸さんへの感謝の気持ちを述べます。
球団のため、選手のため、縁の下の力持ちとなって支えてくれる園芸さんに、阪神ファンもみな敬意を持ってます。オレたちの誇りなのです。
でもね……。
できない時はできないって言っていいんですよ。っていうか、言ってくださいね。
球団は、ホント、ムチャ言うんですから。園芸さん、お願いしますね。