2017ドラフトは「投手重視バランス型」
佳境に入る日本シリーズを尻目に、フェニックスリーグと甲子園秋季練習、そして安芸での秋季キャンプへ――。
来年こそはリーグ優勝して、日本シリーズに出てくれよ!そんな思いを強くする今日この頃です。選手たちもさまざまな思いを胸に練習に取り組んでいることでしょう。
さて前週はなんといっても運命のドラフト会議でしたね。
タイガースは、1巡目に清宮幸太郎(早実)を指名して7球団重複、ハズレで回った安田尚憲(履正社)も3球団重複してハズレという苦しい展開でした。これは、清宮をスーパースペシャル、安田をスペシャルの主役級と判断してのことでしょう。それぞれ、突出した力量があるのだから、「ハズレ上等」で勝負したと。残念ながらどちらも獲得なりませんでした。
さらに馬場皐輔投手(仙台大・右投げ)でもソフトバンクと競合しましたが、三度目の正直で引き当てました。というより、清宮、安田のクジは、すでに当たりを持って行かれていたので、金本監督は引き当てようがありませんでした。
振り返ると、金本監督はドラフトで4回クジを引いていますが、箱の中に当たりクジがあった2回は、高山、馬場と2回とも当たりを引いています。どちらも確率50%でしたけどね。
最終的には、育成1人を含む7人を指名。ポジション別では、投手5人(右3人・左2人)、野手
2人(右打ち内野手1人、左打ち外野手1人)。経歴別では、大学生が5人、社会人が1人、高校生が1人。
はじめ高校生野手を2度も獲りにいきましたが、結果としては大学・社会人出身の即戦力投手を充実させる、手堅い指名になりました。また投打の左右などを見てもバランスを重視しているのがうかがえます。
「残念組」の奮起により投手陣は戦国時代に
野手陣の激しい競争に比べて、先発投手のあたま数不足に直面した今季でしたので、ある意味では当たり前の指名だと言えるでしょう。
ただ、今年のその状況は、想定外のものだったことも忘れてはなりません。年間通じてローテーションを守ったのは秋山と能見のみ。アクシデントに見舞われたメッセンジャーはともかく、藤浪、岩貞は当然1年間働いて2ケタ勝利してくれなきゃいけませんでしたし、足りないところは、青柳、岩田、横山といった面々が高いレベルで枠を争うはずでした。ところが、なかなか思うようになりませんでした。
そんな状況を受けての2017年ドラフトだったのですが、来年の投手事情がどうなるのかはわかりません。
私は、先ほど列挙した「今年残念だった投手たち」の大反撃を想定しています。そりゃもう、このままでいられませんよ。さらに今年チャンスをもらった小野の飛躍は計算の内ですし、何より楽しみにしているのは、望月、才木といった若い投手たちの躍進です。彼らが着実に力を付け、「底辺」から押し上げてきているのは紛れもない事実。思い切ってチャンスを与えていけば、チームの活性化は間違いないでしょう。
今季、初登板のチャンスをもらった竹安、福永は二軍戦でローテーション投手として結果を出していますので、この秋からが勝負です。首脳陣の目にとまれば、そのまま春の注目株になるでしょう。
そう考えると、今年指名された投手たち、1位の馬場、2位の高橋遥人(亜大・左投げ)、5位の谷川昌希(九州三菱自・右投げ)、そして育成の石井将希(上武大・左投げ)にとっては、今年の小野よりはるかに厳しい競争にさらされることになり、チャンスは少なくなるかもしれません。
前述の望月、才木に濱地も加えて、才能豊かな高卒ルーキー投手たちは順調に伸びている様子です。
今回唯一、高校生の指名となった、6位の牧丈一郎(啓新)も、この流れに乗ってほしいところ。育成能力に定評のあった久保コーチが退団することになりましたが、高橋コーチ、福原コーチ、そして安藤コーチによって、しっかり育成メソッドが引き継がれていることでしょう。
「打てない」からスタートする楽しみ
「将来のミスタータイガース」を狙った清宮クジと安田クジを外した後は、現実路線に転換しましたね。
その結果ゲットした2人の野手は、俊足・堅守型、小粒な2人でした。でも、おそらく使われるケースが多いような気がします。
3位の熊谷敬宥(立大・右打ち)は、守備だけならプロですぐに通用すると言われているショート。万一、FAの大和が抜けてしまったらもちろんのこと、残ったとしてもショートをがっちり守れるリザーブは必要です。
というより、大和、上本が30代にさしかかり、森越、荒木もすぐその下。なので、次の世代によるセカンド、ショートのレギュラー争いを熱くさせていかないといけません。
現状では、糸原、北條、植田といった面々に期待が集まっていますが、熊谷はその競争をリードしていく可能性があります。
外野もまたしかり。アスリート型のタレントが揃っていますが、現在のところ守備と走塁のスペシャリストとして枠をキープしている存在はありません。
4位の島田海吏(上武大・左打ち)は、とっておきの代走→守備固めという地位から、一軍出場を狙えるでしょう。
今年は、ベテランの福留、糸井に守備固めを起用しようにも、彼らのほうが守備が上手いため、かえって「守備ユルめ」になってしまう状況でした。
もちろん、広い守備範囲を活かして、島田にはセンターのレギュラーを狙ってもらいたいのですが、まずは「足のスペシャリスト」で目立ちたいところです。
熊谷、島田に共通する「楽しみな理由」は、今は打てないというところ。
本人にその自覚があるのはいいことだと思うのです。
だって、「打てる」と思って入ってきた人は、必ずプロとの力の差に打ちひしがれるわけです。さらに守れない、走れないということを痛感して、「やらなきゃいけないことがたくさん」という状況に追い込まれます。
それでパニックになって、極端な回り道をしてしまう選手もいれば、迷ったきり戻って来られない選手もいます。
そこへいくと、走れる&守れるけれど「打てない」という選手に、焦りはありあません。まずはプロの球に対応できるようにバントの練習をし、ファウルで粘る練習、脚力を活かすためにゴロを転がす練習と、やれることを着実に拡げていけばいいのです。
もともと運動神経がいいタイプでしょうから、コツをつかめば、打撃もなんとかなるかもしれない。
今年話題のルーキーショート、京田(中日)と源田(西武)のように、守備を期待していたら意外と打てたということになるかもしれないのです。
クジ引きで主役クラスのゲットには失敗しましたが、現実路線に切り替えて獲得した2人の野手が、名脇役としてチームに貢献してくれることを願っています。もちろん投手たちもね!