プロ野球60周年を記念して
1950年、1リーグだった日本のプロ野球はセ・リーグとパ・リーグの2リーグ制になりました。8年前の2009年には2リーグになって60周年という節目を迎え、それを記念したNPBオフィシャルイベントとして、野球のヒストリーとアートをテーマにした「DIAMOND DREAMS」という企画展が開催されたんです。私はアートディレクターとして、企画の段階からこの企画展に参加させていただきました。
王貞治のバット、イチローのスパイク、この年優勝したWBC日本代表のユニフォーム…などなど、野球史を彩ってきた数々の選手の逸品を60周年にちなんで60点、それと“未来の野球に繋げたい”という思いを形にしたアート作品を、同じく60点展示されました。
野球体育博物館のご協力、そして、ミュージシャンやファッションデザイナー、グラフィックデザイナーなど野球好きの蒼々たるメンバー60組の方々に参加いただき、東京は六本木ミッドタウン、その他大阪や名古屋、広島で開催し、多くのファンの方にご来場いただきました。
参加いただいた60組はコチラ。
もともと、『いろいろなカルチャーの力を用いて、今までにないようなアプローチで野球をもっとオシャレにしたい』という考えをもっていた私の思いがそのまま企画にできたような内容で、本当に夢のような展示でした。
ちなみに企画名となっている「DIAMOND DREAMS」という名前は、その四角い形から“ダイヤモンド”と呼ばれる野球の内野の部分が由来で、そこにはたくさんの夢が詰まっている、という意味がこもっています。

※大きなホールには文字通り、夢のようなものがたくさん展示されました。
多くのコンセプトに合わせて
開催にあたって用意しなければいけない物も高いレベルが求められました。まずはメインのロゴです。どうすればこの企画内容を表し、“顔”になるものができるのか。いろいろ悩み、作ってみるものの、なかなか回りの賛同を得られるような物ができませんでした。大変苦労しましたが、最終的にできた物は、“6”が4つの各ベースを、“0”がマウンドを表し、ダイヤモンドをどこから見ても“60”になっているというデザイン。「今までと違った視点で野球と接する」というこのイベントの内容と合致したものができました。
それができたら次は告知ポスターです。このイベントは「野球の歴史」「野球をオシャレに」「子供達に託す野球界の夢」などいろいろなテーマを持っていたため、1つのデザインに絞らず、それらを表現したものを4種類制作することにしました。
女性モデルを起用した撮影や、少年野球チームに協力いただいた撮影、完成したばかりの広島・マツダZOOMZOOMスタジアムでの撮影など、短時間で一気に進めていきました。

※4種類全てにいろいろなテーマを表現しています
そして、60組のクリエイター側の1人として、私も参加させていただき、架空の日本代表“サンライズジャパン”のユニフォームを制作しました。開催準備中に日本代表がWBCで優勝した事に触発されてデザインしたもので、上着の裾をパンツに入れると、背中側の腰の部分に日の出が現れる、というデザインです。

※いつか本物の日本代表ユニフォームをデザインしてみたいです。
開催から8年経ちますが、今や野球ファンの心を掴むには“デザイン”というワードは切り離せないものになっていて、グッズやユニフォームなどに関する会話には「かっこいい」「かわいい」「オシャレ」という言葉が交わされているように思います。
この企画がきっかけということではありませんが、必ずそういう時代が来ると考えていたいろいろな方々のご協力で実現できたことにあらためてお礼を申し上げたいと思います。
編集協力:ベースボール・タイムズ
■プロフィール
大岩Larry正志(おおいわ・らりー・まさし)
1975年生まれ。滋賀県出身。デザインオフィスONE MAN SHOW代表。
『野球とデザイン』をテーマに制作活動を続け、2008年には西武ライオンズ(当時)の交流戦用、09年に福岡ソフトバンクホークス『鷹の祭典』のユニフォームとグラフィックを。2012年からは楽天イーグルス夏季用ユニフォームや優勝ロゴ、同時に2015年からは、東京ヤクルトスワローズのユニフォームやグラフィック、ロゴのデザインを毎年手掛けている。
また、アニメ『The World of GOLDEN EGGS』のボイスアクターなどとしても活躍をしている。http://www.oneman-show.com