故障者続出の巨人は“ポスト阿部問題”が再燃

 高橋由伸新監督率いる巨人は、70試合を消化して勝率5割付近をウロウロとしている。開幕ダッシュにこそ成功したが、昨季からの課題である得点力不足が露呈。先発の柱である菅野智之は快投乱麻の投球を続けているものの、昨季の再現VTRを見ているかのように援護を得られない登板が続く。

 そのエースは、5月27日の阪神で7回1失点と好投しながら、打線が1点も奪えず完封負け。これが響きチームは10年ぶりの7連敗を喫した。この間はとにかく打線が機能せず、新外国人のギャレットは二軍落ち。同じく新加入のクルーズに4番の荷は重く、こちらはその後、左足首痛を悪化させ現在も戦列復帰のメドさえ立っていない。

 さらに追い打ちをかけたのが小林誠司の左肩骨折だ。正妻は一時チームを離れることになり、同い年のパートナーを失った菅野は6月24日のDeNA戦で3回途中自己ワーストの9失点でノックアウトされた。その後は相川亮二、実松一成らベテラン捕手が日替わりで先発マスクを被っているが、原辰徳監督体制時からの課題だった“ポスト阿部慎之助問題”が再燃。その阿部も右肩痛で一軍登場が大幅に遅れるなど、打線を固定できない日々が続いた。

交流戦ではパ上位の惨敗 そもそも惹き付ける選手が……


 多少ケガ人が出ても、憎たらしいほどの強かったのがかつての巨人である。だが、現チームにその面影はなく、スター候補の台頭もない。阿部、坂本勇人、長野久義。菅野と、各ポジションに“格”となる選手は存在するが、他球団と比較しても若手に活気が感じられないのは事実だろう。

 春季キャンプでは将来の大砲候補・岡本和真が注目を浴びたが、村田修一との正三塁手争いに敗れた。5月に一軍昇格を果たし即スタメン起用されたが、3試合で計10打数1安打と、結果を残すことができず再び二軍降格を言い渡されている。大田泰示は相変わらず安定感がなく、昨年ブレークした立岡宗一郎は不調が長引き現在二軍調整中。投手陣では田口麗斗、今村信貴らが殻を破れずにいる。

 交流戦ではソフトバンクに3戦全敗、ロッテと日本ハムにはそれぞれ1勝2敗と、パ・リーグ上位チームに力の差を見せつけられた。いまの巨人は、強いわけでもなければファンを惹き付ける選手も少ない。もはや“アンチ巨人”という言葉すら聞こえなくなってきた。

春先の勢いはどこへ? 早くも息切れ気味の阪神

 金本知憲新監督の下、“超変革”をスローガンに掲げる阪神は、春季キャンプから話題を集め、オープン戦を12球団トップの成績で終えた。その象徴だったのが高山俊、横田慎太郎のフレッシュコンビで、スピード溢れる1、2番は新生タイガースを荒々しくけん引した。

 さらに主砲のゴメスが盗塁を決めるなど、積極的な走塁も光った。東京ドームで行われた4月5日の巨人戦では、昨季5敗と苦手にしていたポレダを完全攻略。同7日の第3戦も10対1で圧勝し、ライバルにも前年との違いを見せつけた。

 しかし、こちらも勢いは長続きしなかった。新指揮官は若手をどんどん登用する一方、見切りも早い。原口文仁、北條史也らの台頭は明るい材料だが、主軸は結局、鳥谷敬、福留孝介、西岡剛、ゴメスと同じ顔ぶれが並ぶ。そのなかで、鳥谷、ゴメスの調子がなかなか上がらず、指揮官はあの手この手を駆使しながら主力の復調を待ち望んでいる。

 投手陣では新守護神のマテオが不安定な状態。現在は、マテオの“保険扱い”だったドリスが抑えを務めており、勝ちパターン確立への試行錯誤が続いている。藤川球児、高橋聡文も安定感を欠くなど、阪神は投打ともに不安材料を抱えている状況だ。

ブランド崩壊の危機か!? このままでは終われない両チーム

 7月3日には阪神が単独最下位に転落し、巨人は4カード連続の負け越しで4年ぶりの借金5を記録した。補強にも積極的で近年は常にリーグをけん引してきた2チームだが、ここまま低調な状態が続くようなら、今秋の伝統の一戦は“優勝”ではなく“CS”争い。ともすれば“最下位”争いに発展する可能性もある。

 昨年の王者・ヤクルトも苦しんでいるが、こちらは山田哲人が打ちまくるなど打線の破壊力は相変わらず抜群だ。問題は投手陣で、ここにベテランの石川雅規や館山昌平、さらに支配下復帰を果たした由規らが調子を上げ戻ってくれば、混沌としている2位争いを一気に抜け出す可能性を秘める。

 そのほかDeNAが投手力、中日は新外国人選手を軸に我慢の戦いを継続中。独走する広島以外は今年も混戦状態だが、DeNAと中日の頑張り次第では、昨季のAクラスとBクラスがまるごと入れ替わる可能性もある。

 そのなかで、現在の巨人と阪神には決定的な強みがない。だからと言って、このまま引き下がることを過去の伝統は許してくれないだろう。なんだかんだ言いながらも、ここ数年はキッチリと優勝争いに絡んでいた“セ界の両盟主”。やはり巨人と阪神が強くなければ野球界は盛り上がらない。


BBCrix編集部

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