2016年の新人王は、日本ハム・高梨と阪神・高山

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 11月28日、プロ野球の年間表彰式「NPB AWARDS 2016」が行われ、高梨裕稔(日本ハム)と高山俊(阪神)が最優秀新人に選ばれた。

 大卒3年目の高梨は、先発、救援の両ポジションでフル回転し、37試合の登板で10勝2敗、防御率2.38をマーク。先発定着後は無傷の8連勝をマークするなど抜群の安定感を誇り、チームのリーグ制覇と日本一に貢献した。

 大卒1年目の高山は「1番・中堅」で開幕スタメンを飾り、金本知憲新監督が掲げた“超変革”の象徴となった。スタメンを外れる時期もあったが、134試合の出場で打率.275、8本塁打、65打点をマーク。得点圏打率.377を記録するなど勝負強さも光り、阪神では2007年の上園啓史以来となる新人王に輝いた。

 また高山は、野手としても2010年の長野久義(巨人)以来となる受賞だった。パ・リーグに目を向けると、野手の新人王は2000年以降ひとりもおらず、1998年に高卒4年目で獲得した小関竜也(西武)まで遡らなければならない。

高卒・大卒も同条件の現規則。侍Jの野手陣にも新人王は存在しない

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 改めて新人王資格を確認すると、大まかには下記の3つとなる。

◆初めて支配下登録されてから5年以内の選手
◆前年までの出場が30イニング以内の投手、前年までの出場が60打席以内の野手
◆海外のプロ野球リーグに参加した経験がない選手(外国人枠の選手であるかは問わない)

 真っ先に引っかかるのは、高卒、大卒、社会人出身も同条件という点である。シンプルに考えて、高卒と大卒・社会人出身の1年目では基礎体力に大きな差がある。現在のルールでは大卒、社会人出身選手が有利なため、高卒選手の成長度合いも考慮できるようなルール緩和を望みたい。

 各球団の主力選手が揃う侍ジャパンのメンバーを見ても、野手で新人王を獲得した選手はひとりも存在しない。高卒ながら早期デビューを果たし、順調に主力選手へ成長した坂本勇人(巨人)、中田翔(日本ハム)、筒香嘉智(DeNA)、山田哲人(ヤクルト)、鈴木誠也(広島)も新人王を逃し、規格外の活躍を続ける二刀流・大谷翔平(日本ハム)も1年目終了時点で資格を失った。

 未知数な高卒選手に関しては、同世代の大卒選手が入団するまでの4年間は、規定を完全撤廃してもいいと思う。たとえば、高卒野手が3年目に100試合出場で350打席を消化し、打率.230、5本塁打、30打点の成績を残したとする。現行ルールではこの時点で翌年の新人王資格は消滅するが、仮に“高卒4年目までは上限なし”のルールならば、4年目に打率.300、20本塁打、80打点の成績だった場合は新人王の有力候補となる。上記のような成長過程は、実際に中田や山田、鈴木らが辿ってきたことで証明されている。

編集部が提案する資格改定案で見る新人王は……

 前述した“高卒4年目までは上限なし”のルールが採用されていれば、2015年のパ・リーグは高卒2年目に打率.287、17本塁打、68打点をマークした森友哉(西武)と、同じく2年目に63試合に登板し、3勝2敗33セーブ、防御率0.87をマークした松井裕樹(楽天)などが加わり、よりハイレベルな争いになったはず。

 森、松井もそうだが、素材重視で高評価を受けた高卒選手は、いきなり即戦力として春先から起用される機会自体が少ない。ファームで経験を積み、慣れてきたシーズン後半でのデビュープランが確立しているチームもあり、対応力に優れた選手ほど“お試し期間”で新人王資格を失効してしまうケースが多い。

 では最後に、提案したルールに則って最近5年の新人王をチョイスしてみた。従来の記者投票と同じく編集部の偏見もあるが、こんな感じはどうだろうか。

 2014年の山田は、入団4年目ながら打率.324、29本塁打、89打点の好成績を残し、翌年以降の2年連続トリプルスリーの足掛かりを作った。

 大谷の名前がふたつあるが、“高卒4年目までは上限なし”のルールなら、このケースもあり。2年目の2014年は、11勝4敗、防御率2.61だった投手としての働き、4年目だった今年は二刀流としての圧倒的な総合力を評価した。リーグMVPや沢村賞と同様、複数回選出される可能性があることで価値も高まるはずだ。

 また、リーグMVPは優勝チームから選出されるケースが多いが、こちらの新人王は若手の育成能力に長けた球団が必然的に多くなる。それだけ優秀な若手を育て上げたという証でもあり、より時代を反映したものになるだろう。

 大前提として、新人王は球界の顔になるようなスター候補生であってほしいと思うからこその新提案。そのためには現行のような狭き門ではなく、もっと間口を広げた選び方で、その世代を象徴する若手が球史に名を刻むべきではないだろうか。


BBCrix編集部