文=浅田真樹

今年こそ年間総合優勝を狙う室屋義秀

 レッドブルエアレース・ワールドチャンピオンシップ2017年シーズンの開幕戦日程が発表され、2月10、11日にUAEのアブダビで行われることが決まった。アブダビで新たなシーズンが幕を開けるのは、もはやエアレースの恒例イベントとなっている。

レッドブルエアレース・ワールドチャンピオンシップ2017の開幕戦の日程が決定。第2戦以降の全日程は2017年1月中に発表される予定となっている
2017 Red Bull Air Race World Championshipはアブダビで開幕!

 エアレースパイロットとして6年目のシーズンを迎える日本人パイロット、室屋義秀にとって2017年はいよいよ勝負の年となりそうだ。勝負とはつまり世界チャンピオンを狙いにいくということである。昨年のシーズンはチャンピオンシップポイントランキング(年間総合順位)こそ、一昨年と同じ6位に終わったものの、千葉で開催された第3戦では初優勝。大きな一歩を踏み出す年となった。となれば、次に目指すは年間総合での優勝。すなわち、世界チャンピオンである。

 室屋は昨年の全日程を終了した時点から、「2017年の目標は、もうシンプルです。(年間総合での)優勝を狙います」と公言している。

 とはいえ、室屋が「優勝宣言」をするのは、実はこれが初めてではない。昨年のシーズン前も、当初は総合優勝を狙うと口にしていた。ところが、シーズン開幕前に“秘密兵器”として準備を進めていたウイングレット(主翼先端につける小翼。旋回スピードを高める)の装着が、エアレースの主催者側から安全性を理由に許可されず、戦略変更を余儀なくされてしまった。室屋にとっては、大きな誤算だった。結局、室屋は「年間総合で表彰台(3位以内)」へと目標を下方修正して、昨年のシーズンに臨まざるをえなくなったのである。そんな過去の経緯を踏まえて言えば、同じ優勝宣言でも昨年と今年とでは、その中身の濃度は大きく異なる。自信の裏づけの違い、とでも言おうか。

©Getty Images

「優勝するためのピースはそろってきた」

 一昨年、室屋は前年から飛躍的に成績を伸ばした。自身初となる年間2度の表彰台に立ち、後半戦に限れば4戦中3戦でファイナル4に進出した。そんな高揚感が、さらにはウイングレットの準備が進んでいたことも手伝い、室屋の口をなめらかにした。
「昨年はウイングレットという“ウルトラC”があって、(他機より)常に1秒くらい前にいる感じでレースを進められると考えていました。だから勝てるかなという感じでした」
だが、今年の室屋が優勝を狙うと口にできるのは、秘密兵器の助けを借りずとも優勝を狙えるだけの要素がそろったからだ。
「優勝するためのピースはそろってきた。あとは、それをちゃんと組み合わせれば勝てるんじゃないかな」
そう語る室屋の表情に浮ついた様子はなく、現状を冷静に分析したうえで言葉を口にしていることがうかがえる。

 優勝を狙うとはいっても、もちろん室屋が優勝候補筆頭というわけではない。昨年、初の世界チャンピオンの座に就いた、室屋とは同期デビューのマティアス・ドルダラーをはじめ、倒さなければならないライバルは数多い。室屋は決して圧倒的な強さを手にしているわけではないのだ。

 室屋自身、「チームとしての“体力”が十分ではない。まだまだ全体に苦しい状況にはあるので、スポンサーの獲得など課題は多い。そこを脱しないと、伸び悩む可能性がないわけではない」と認める。それでも、室屋が自信を持って優勝を狙うと言えるのは、機体の改造・調整が進み、確実に速くなっているという手応えがあるから。そして、パイロットである自分自身が心身ともにいいコンディションにあるからだ。

 来る2017年シーズンは昨年同様、全8戦程度のレースが開催される見込み。各開催地での情報によると、すでに7月のハンガリー・ブダペスト、10月のアメリカ・インディアナポリスでの開催が発表されているが、正式に全日程が発表されるのは、1月下旬の予定だ。そのなかに千葉でのレースが含まれることは、まず間違いない。

 室屋が世界チャンピオンを狙うシーズンは、まもなくその幕が切って落とされる。


浅田真樹

1967年生まれ。大学卒業後、一般企業勤務を経て、フリーライターとしての活動を開始。サッカーを中心にスポーツを幅広く取材する。ワールドカップ以外にも、最近10年間でU-20ワールドカップは4大会、U-17ワールドカップは3大会の取材実績がある。