プロ野球界で存在感を増すDeNA・牧の魅力とは

打撃面は全てにおいてハイレベル。特筆すべきは、その勝負強さだ。「4番はチャンスで回ってくることが多いので、得点圏に走者がいるときはしっかりと(走者を)かえせるように、という気持ちで(打席に)立っている」。開幕から得点圏打率は4割を超え、重要な局面で幾度も快音を残してチームの勝利に貢献してきた。三浦監督は、交流戦では「4番の牧のところにいかに走者をためて回すかを考えた」と、高い出塁率を残していた佐野を1番に据えるなど、2年目の選手としては破格の信頼を寄せている。

名門の中大で主将を務め、トップ選手が集まる大学日本代表では3年時から4番を任されるなど、牧は責任感の強さも傑出している。開幕から2カ月以上が経過した6月に入り、今季初めて2試合続けて無安打に終わった翌日、4日の楽天戦(横浜)で14号3ランを放ち「全く打てていなかったので、本当に情けないと思っていた」と口にした。報道陣も三浦監督も驚いた一言だったが、牧が常に持っている高い意識が垣間見えた出来事だった。

プロ入り後は相手投手の特長や配球などをノートに記すようにもなった。試合中はアナリストの隣に座り、自身の感覚とデータをうまく融合させている。誰から言われたわけではない。プロの世界で生き抜くために、自ら始めた習慣だ。

先輩にもかわいがられる存在

先輩からも愛される人柄。1年目のオフ、昨年12月の末になって初めてベテランの大和に合同自主トレーニングの実施を依頼した。シーズン中、もしくは終了後の秋には話をしていることが多い中、年末のギリギリになっての突然の申し出に大和も驚いたが快諾。大和は、チームの未来を担う牧に練習法や守備面でのアドバイスはもちろん、地元・鹿児島で移動や食事の面まで約1カ月面倒を見て、一緒の時間を過ごした。牧は「一日がとても充実していた。朝から晩まで練習する人だなと近くで見ていて感じた。自分自身の足りないところ、もっと伸ばしていかないといけないところを大和さんとやったことで発見できた」と感謝した。

2017年に首位打者に輝くなど球界を代表するバットマンの宮崎敏郎は、牧の打撃を「打席の中で修正する能力があって、1打席目に自分の形じゃないスイングをしても、2、3打席目に修正して自分の打撃ができるのはすごい。そこは僕も見習わないといけない」と絶賛する。牧の1年目から同じ組で打撃練習を行い、助言を求められればシンプルな言葉で伝えてきた。牧が2試合続けてチャンスで凡退し迎えた6月9日の日本ハム戦(札幌ドーム)では、試合前にメンタル面、バットの出し方などについてアドバイス。牧はその試合で10打席ぶりの安打となる決勝の適時打を放った。

サービス精神も旺盛

試合では大黒柱として、グラウンドを離れれば明るいムードメーカーとしても大活躍する。春季キャンプでは練習の合間に音楽に合わせて軽快にダンスを披露。昨年のファンフェスティバルでは、ファッション対決で人気バスケットボール漫画「スラムダンク」に登場する同姓の最強キャラクター、「神奈川の牧」こと海南大付属・牧紳一のコスプレ姿を披露し、故郷の長野県歌を生歌唱するサービス付きでファンを大いに喜ばせた。また、打席の登場曲には同作のアニメ版主題歌「君が好きだと叫びたい」(BAAD)を使用。こちらもファンに好評を博している。また、12月に長野へ帰省した際には束の間のオフにも関わらず地元のテレビ番組に生出演するなど殺到する取材や仕事の依頼に嫌な顔一つせず対応。そんな心の広さも多くの人から愛されるゆえんだ。

学生時代からゲームが趣味。チームでは同じ趣味を持つ佐野、桑原、山本、知野らと宿舎の自室や移動の新幹線、バスなどで「Nintendo Switch」の人気ゲーム「マリオカート」でオンライン対戦してリフレッシュしている。チームの通称「マリオカート軍団」の一員となり、同ゲームなどの実況配信を行うYouTubeチャンネル「SAWAYAN GAMES /サワヤンゲームズ」のポーズ「デスターシャ」を本塁打を打つたびに披露し、ホームランパフォーマンスとして定着している。

三浦監督も三冠王に太鼓判

持ち味の打撃はもちろん、二塁の守備も、一つでも先の塁を狙う走塁も常に全力。チームの勝利を最優先に考え、ベンチではたとえ自分が打てても、打てていなくても最前に立ってチームを鼓舞し、仲間が適時打を放てばベンチを飛び出して腕をグルグル回して喜びを表現する。2年目ながら中心選手として、グラウンド内外で大いにチームに貢献。そんな牧の三冠王獲得の可能性を報道陣に問われた三浦監督は「取るでしょ。それだけのものを持っていますし、マークされた中でのあれだけの活躍をしていますから大丈夫でしょう」と、打率、打点、本塁打の打撃3部門でリーグナンバーワンに輝く令和初の栄誉にも太鼓判を押す。

オールスターのファン投票でもヤクルト・山田、広島・菊池涼、巨人・吉川ら強者ぞろいのセ・リーグ二塁手部門でトップを走る。“ジンクス”とは無縁のプロ2年目。一気に日本を代表する強打者へと駆け上がろうとしている。


VictorySportsNews編集部