滋賀レイクスターズの司令塔、並里成が残留のカギとなる栃木ブレックス戦に向け「一番尊敬している先輩」田臥勇太を語る
「田臥さんを見に来るお客さんが僕のすごさを見れる」 2月の7試合を4勝3敗と勝ち越し、リーグ最下位を脱した滋賀レイクスターズ。3月は千葉ジェッツ、栃木ブレックス、名古屋ダイヤモンドドルフィンズと強敵との対戦が続くが、ここで勝ち越せば残留プレーオフ回避の可能性も見えてくる。3月に予定されている6試合のうち、カギとなるのがホームゲームの栃木戦だ。 田臥勇太を擁する栃木は東地区の首位を走り、今のB1で最も勢いのあるチーム。アウェーゲームでも多くの観客を集める人気クラブでもある。レイクスの司令塔である並里成は、プロ最初の2シーズンをこの栃木で過ごしている。『古巣』や田臥に対する思いを聞いた。 「いつもより多く(お客さんが)来るということは、田臥さんを見に来るお客さんが僕のすごさを見れるということ。うれしく思います。もっと僕を知ってもらえるのはうれしいです。僕を知らない方もいると思うので、こういう選手もいるんだよ、というのを知ってもらえるのはすごくうれしい」 並里が栃木に入団した2009年は、田臥にとっては栃木での2年目。ともにアメリカ志向の強い2人であり、並里は田臥を尊敬してやまない。 「昔から知っていて、僕が初めてプロ選手になった時のチームメートで、一番尊敬している先輩です。彼のバスケに対する姿勢とか、バスケ以外のことでも学んだし、チームにどういう影響を自分の背中でやったらいいのかを、自分も観察もしていましたし、見ていたので。本当にプロフェッショナル中のプロフェッショナルな人です」 「そういう先輩と8年ぶりにコートで一緒にバスケができるのはすごく楽しみです。ウィスマンHCも僕がいた時のコーチなので、彼らに成長している姿を見せられるのは本当に、バスケって素晴らしいと思う機会です。相手をリスペクトしつつ、自分の持っているものを出していって、全然違うんだぞ、というのをいろんな人に見せたい」 「田臥さんがいるし栃木は1位なので、そういう相手に僕らがどれだけできるか。ワンステップ上に行くための戦いだと思います」 「本当に栃木に行って良かったと思える2年間でした」 すぐ近くで日々を過ごした者にしか分からない田臥の素顔を、並里はこう語る。 「僕はすごく観察が好きなんですけど、まず1時間半前には体育館に来る。本人からしたらストレッチしてもらって準備をしないとケガもするから来るのが当たり前、それを毎日毎日同じことができる。本当に隙がないと言うか、カバンとかも自分の脱いだものをすぐにたたんでカバンに置いて、何が弱点かなと思うぐらい」 「でも本人の性格なんだろうなあと。別に意識もしていないし。みんなに良い顔をしようとしていないし、本人のナチュラルな感じなんだろうなあと思いながら2年間やって、僕も自然に自分のものをたたんでいましたし、真似したがりなんで」 田臥を語る並里の口調はリスペクトに満ちている。NBAを経験した9歳年上の先輩は並里に大きな影響を与えていた。 「僕も1時間半前に来て、田臥さんより前に来たいから1時間半以上前に来たりもしていて。彼はご飯、キムチ、納豆、たまごかけごはんが好きなので、それも真似しながら」 「一言一言がすごい伝わるというか、説得力があるというか。練習で僕がコーチに怒られてチッと思っていると、田臥さんから僕にコソッと『これはアメリカでも一緒だぞ』と言われて、自分が切り替えられたりとか。言うことにすごく説得力がある、入ってくるという感じです」 「アメリカの大学に行くか栃木に行くかの選択で、本当に栃木に行って良かったと思える2年間、プロ最初の生活でした。田臥さん以外にもいろんな選手がいたので、その人たちからも学べたことが自分のプロ生活のベースになっています。バスケにしろオフコートにしろ。最初にあのメンバーとバスケができてよかったと思います」 栃木と田臥へのリスペクトは持ちながらも、今回は倒さなければいけない相手として対峙する。「チームをすごく引っ張ってくると思うので、僕もそれに負けずに滋賀レイクスターズを引っ張っていきたいと思います」 古巣相手に、尊敬する田臥を相手に並里がどんなプレーを見せ、その並里に引っ張られたレイクスがどのような戦いぶりを見せるか。絶対に負けられない戦いとなる。
構成=鈴木健一郎 協力=滋賀レイクスターズ 写真=野口岳彦、B.LEAGUE