新潟で起きた「選手が殴るフリをされた」という『事件』を機に、リーグの雰囲気を育む意義を考える
新潟vs大阪で「Bリーグの魅力を損ないかねない」事件 2月26日、アオーレ長岡で行われた新潟アルビレックスBBと大阪エヴェッサの第2戦は、大阪が終盤の猛攻で逆転勝ちを収めた。この試合後、新潟のファンから「殴るフリをされた」というツィートを発信したのが大阪のポイントガード、木下博之だ。 木下はこの試合、先発ポイントガードとして出場し、9得点2アシストで勝利に貢献。年末から2月上旬にかけてケガで満足にプレーできなかったものの、復帰後はチーム一の経験を誇る司令塔として存在感を見せている。 大阪と新潟は、bjリーグ初年度の2005-06シーズンにファイナルで戦った因縁がある。bjリーグの立ち上げから3連覇を果たした大阪、その最初のタイトルは新潟を破って手に入れたものだ。当時はブースター同士で一触即発の雰囲気になることもあった。その因縁が今回の出来事に関係しているのかどうかは分からないが、いずれにしても起きてほしくない『事件』が起きたと言える。 新潟は当該ファンに対する『無期限入場禁止処分』を発表 新潟アルビレックスBBは昨日、当該行為を行ったファンを特定し、面談を実施。本人の謝罪を受け、リーグとも協議した結果、『無期限入場禁止』を決めたことを発表している。ホーム、アウェーに限らず新潟の公式戦、プレシーズンゲーム、チームや選手の参加するすべてのイベントへの入場が禁じられる、厳しい内容だ。 今回の対処はこれで終わりだが、リーグとして、新潟に限らず各クラブとして、今後の再発防止策を考える必要はある。再発防止に一番手っ取り早いのは規制を強めること、つまりは「選手とファンを遠ざけること」だが、それは始まったばかりのBリーグの魅力の一つを大きく損なうことを意味する。 バスケットボールの興行では、他のスポーツでは考えられないほどに選手とファンの距離が近い。Bリーグをきっかけにバスケ会場に足を運ぶようになった人は、試合後に選手がコートを一周してファンとハイタッチする光景に驚いたはず。野球やサッカーにはない『バスケットボールの財産』が損なれることがないことを願いたい。 リーグやクラブには慎重な判断を求めたい。そしてファンにはあらためて「戦争ではなく健全なエンタテインメント」としてのBリーグの雰囲気を育む意義について考えてもらえれば幸いだ。
文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE