ラテンアメリカからは6つの国や地域が参加

 3月6日に開幕したワールド・ベースボール・クラシック2017(以下WBC)。侍ジャパンはメジャーリーグ(以下MLB)でプレーする選手が青木宣親を除いて不参加となり、大会直前には大谷翔平がケガの影響で出場を回避するなど、当初は不安要素が多かったものの、第1ラウンドではキューバ、オーストラリア、中国に3連勝していち早く第2ラウンド進出を決めると、第2ラウンドでもオランダ、キューバ、イスラエルに3連勝を飾り、準決勝進出を果たした。

世界一奪還を目指す侍ジャパンは15日、第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)2次ラウンドE組第3戦に臨み、東京ドームでイスラエルと対戦。6回に打者11人を送り込む猛攻で一挙5点を奪い、日本代表としてWBC3度目の先発全員安打を放ち8―3で快勝。1次ラウンドから無傷の6連勝で、同組を首位で突破し、4大会連続となる準決勝進出を決めた。
侍ジャパン無傷6連勝で4大会連続準決勝へ 筒香先制弾で点火、6回一気5点― スポニチ Sponichi Annex 野球

 今大会には前回王者ドミニカ共和国を始め、プエルトリコ、メキシコ、キューバ、ベネズエラ、コロンビアと、いわゆるラテンアメリカ地域から6つの国と地域が参加している。中にはメキシコやコロンビアのように、野球よりサッカーのほうが高い人気を誇る国も含まれているが、これらの国々で「野球の世界一決定戦」WBCはどの程度、詳しく報道されているのだろうか。

詳細に報じるドミニカ、キューバと対照的なメキシコ、コロンビア

Clásico Mundial de béisbol

 野球人気が高く、現役メジャーリーガーが何人もWBCに参加しているドミニカ共和国は、『Diario Libre』や『EL NACIONAL』、『Listin Diario』といった一般紙の電子版で他国の結果も含め多くの記事が掲載されており、野球人気の高さがうかがえる。

 やはりドミニカ共和国代表関連の記事が多く、『Diario Libre』では「4人のドミニカンが他国でプレー」といった特集記事も。韓国ラウンドや日本ラウンドの情報は少なめだが、最新の情報である日本の準決勝進出も、大きな扱いではないものの、タイムラグなしに伝えられている。

La seleccion de Japon, con racimo de cinco carreras anotadas en la parte baja de la sexta entrada, vencio hoy a Israel por 8-3 en el ultimo partido de la segunda ronda dentro del Grupo E del Clasico Mundial de Beisbol y paso invicto a las semifinales, que va a disputar por cuarta vez consecutiva. WBCのE組、第2ステージで、日本代表は6回裏に一挙5点を奪う攻撃を見せ、8-3でイスラエルに勝利。無敗で4大会連続となる準決勝進出を果たした。
Japón elimina a Israel y pasa invicto a semifinales junto a Holanda

 キューバは社会主義国という事情も反映してか、報道されるのは自国の代表に関連するものが中心で、情報自体もそれほど多くはなく、更新も遅め。キューバ共産党の機関紙である『Granma』の電子版にはWBCの特集ページはあるものの、更新はかなり遅く、第2ステージの最終節が終了した後でも、同ステージで日本がキューバを下した試合のレポートが2番目に掲載されていた。

 キューバ労働者総同盟の機関紙である『TRABAJADORES』の電子版も、記事の量や内容は『Granma』と同程度だった。野球強豪国の一つではあるが、政体が違うだけで報道の内容が大きく違うという特異な例と言える。

EL UNIVERSAL

 では、野球よりサッカーのほうが盛んな国の報道はどうだろうか。

 メキシコはグループDの開催国だが、こちらもメキシコ代表関連の報道が中心で、大会関連の記事自体が少ない。一般紙『EL UNIVERSAL』電子版にはスポーツの情報を伝える『UNIVERSO DEPORTIVO』というページがあり、そこには大会特集ページもあるが、情報自体がそれほど多くはなく、サッカー関連のニュースが間違えて掲載されている状況。スポーツ情報サイト『mediotiempo』も、WBC関連情報はメキシコ代表関連の情報が中心だ。メキシコが失点率で急転直下の第1ラウンド敗退となったこともあり、それに関連する記事は多かったが、もはや大会への関心が失われつつある感じがする。

 メキシコはサッカー以外にもルチャ・リブレやボクシングなども人気があり、アメリカのスポーツもよく見られているため、野球の情報が埋もれがちになるのはある程度、理解できる。サッカー人気がさらに高いコロンビアになると、WBC情報はさらに少なくなる。

 国内最高発行部数を誇る『EL TIEMPO』電子版では、MLB関連ニュースはコロンビア代表の試合結果のみ。同代表は3月12日に行われた2戦目でカナダを4-1と破り、記念すべき初勝利を挙げた。普通ならトップ記事扱いになりそうなものだが、同日の電子版トップページにその記事は見られず、「スポーツ」→「その他の競技」と進んで、ようやく記事を発見できる状況だった。サッカーが「国外」と「国内」に分けられ、国内1部リーグの各クラブのページまであるのとは対照的だ。

 人気が高いスポーツの情報が詳しく報じられるのは、どこの国でもほぼ一緒。日本でWBCの情報がきめ細かく報じられているように、野球人気が高い国では、WBCは需要が高いコンテンツと言える。


池田敏明

大学院でインカ帝国史を専攻していたが、”師匠” の敷いたレールに果てしない魅力を感じ転身。専門誌で編集を務めた後にフリーランスとなり、ライター、エディター、スベイ ン語の通訳&翻訳家、カメラマンと幅広くこなす。