日本プロ野球選手会は再三にわたり不参加を示唆

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は2006年に第1回大会が開かれ、今年の大会が第4回大会となる。主催はアメリカ大リーグ機構(MLB)と大リーグ選手会が共同で設立したワールド・ベースボール・クラシック・インク(WBCI)が行っている。

 今でこそ世界一決定戦として国内の注目を集める本大会だが、第1回大会が行われる前年の05年には、日本野球機構(NPB)がMLB側中心の利益配分などを理由に参加を保留し、日本プロ野球選手会は開催時期などをめぐって参加に反対した経緯がある。

 紆余曲折ありながらも、日本は第1回大会と09年の第2回大会に優勝して連覇を果たした。しかし、収益の分配をめぐって納得のいかない日本プロ野球選手会が、条件交渉の結果次第では第3回大会に出場しないことを全会一致で決議する。11年7月22日の選手会臨時大会での出来事だ。当時の新井貴浩選手会長は、「今の不公平な条件のままでは、日本プロ野球の発展のためにも次回は出られないということで一致した。選手全員の意志です」と語っている。この「不公平な条件」というのは、日本企業から支払われる日本代表チームへのスポンサー料、ライセンス料をWBCIがすべて吸い上げることを指していた。

09年の第2回大会は総収益から日本の分配金は13%の約2億円。大リーグ機構(MLB)と大リーグ選手会が66%の約10億5000万円とほぼ独占した。今回、選手会が求めるのは分配率の変更ではない。代表チームにつくスポンサーの収入と、代表グッズのライセンシング料がそのまま参加国に入るようスポンサー権、ライセンシング権の譲渡を求めている。前回大会で日本代表を応援した日本企業2社のスポンサー収入は約9億円とされるが全てWBCIに譲渡された。日本野球機構(NPB)は選手の出場給や傷害保険料、合宿費用などの支出が大きく採算が取れない状況で、選手会の松原徹事務局長は「現状では優勝してもリーグや球団に利益はなく、選手派遣のリスクを負うだけだ」と説明した。
WBC不参加も辞さず!選手会 条件改善求める― スポニチ Sponichi Annex 野球

 この後、NPBとWBCIが交渉し、結果として約1年後の12年9月に日本プロ野球選手会は第3回WBCへの不参加決議を撤回し、大会への参加を決めた。これは交渉の末に、WBCの大会名称や大会ロゴを使わなければ、日本代表「侍ジャパン」に限定したスポンサーやグッズ販売の権利は、大会期間中も含めて日本側にあることを確認したことによる。こうして第4回大会に至ったわけだが、壮行試合・強化試合などの“興行”で利益を確保する代わりに、大会自体の利益配分には目をつぶったにすぎない。

ベストメンバーを組まない“世界王者”アメリカ

©共同通信

 こうした利益配分以上に深刻と言えるのが、WBCの権威の問題だ。MLBとMLB選手会が設立したWBCIが主催しながら、メジャーリーガーの多くは積極的に大会に参加しているわけではない。その結果、海外においては「世界一決定制」の認識に大幅なズレが生じている。特にアメリカ国内では顕著で、大会期間中、自国の試合であっても一部の野球ファンしか関心を寄せないという残念な事実がある。

 一方で、日本、韓国、台湾、キューバといった従来の積極派に加えて、プエルトリコ、ドミニカ共和国、ベネズエラ、メキシコ、それにオランダ領キュラソー(チームとしてはオランダ代表)といった中南米の国々が本気で勝つためのチーム編成を行い、メジャーリーガーを代表に呼び集めたのは明るい兆しと言えるだろう。メジャーリーグで戦っている各国の一線級の選手たちが本気で戦う姿を見せることで、アメリカ国内にも関心を寄せる人々が増えてくるはずだ。

 今大会前の時点で、WBCは第4回が最後になるのではないかという噂が流れた。しかし大会期間中の3月7日に、大リーグ機構のコミッショナーが第5回大会の存続を明言している。

米大リーグ機構のロブ・マンフレッドコミッショナーが7日、WBC東京ラウンド初戦の日本-キューバ戦を前に東京ドームで記者会見し、21年の第5回大会以降について「100%、WBCを存続させようと思っている」と発言した。  さらに3月という開催時期に関して「この時期が完璧だとは思っていない。何が一番いいのかを考えたい」とし、大リーガーの参加に関しても「21年は各国のベストプレーヤーが参加できるように、ルールを変える必要もあるかもしれない」と話した。
MLBコミッショナー、21年WBC存続を明言 ルール変更も示唆/野球/デイリースポーツ online

 このコミッショナーの発言にもあるように、WBCが4年に一度の世界一決定戦ならば、そこに出場することが何よりの名誉であり、全プレーヤーが憧れる大会でなければならない。より良いコンディションの各国ベストメンバーによる真剣勝負の舞台でなければ、「世界一」の称号も虚しく響くだけだ。逆に、アメリカ代表が真の“ドリームチーム”を組めば、アメリカ国内はもちろん、世界的にも大会の位置づけは一変するだろう。

 それは日本においても同様である。日本戦は軒並み高視聴率を記録し、テレビを中心に大々的に取り上げられたが、侍なき「世界一決定戦」の結果がどれほど話題に上るだろうか。サッカーのW杯やチャンピオンズリーグ、ゴルフのマスターズ、テニスの四大大会など最高峰の競技大会は日本人選手の有無とは関係なく高い関心が向けられるものだが、WBCがそうなる可能性は、現状を見る限り決して高くない。

 五輪から野球・ソフトボール競技が失われた時、そして復活した時、多くの野球ファンはこの愛すべきスポーツの世界的普及の必要性を感じたはずだ。野球が真のグローバルスポーツとして発展していくためにも、日本戦を“消費”して終わるだけでなく、「世界一決定戦」のあるべき姿を問い続けることが重要だろう。

BBCrix編集部

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