最下位脱出に闘志を燃やす仙台89ERS、鋭い出足で栃木ブレックスに挑むも、試合中盤から地力の差が出て33点差の大敗
闘志満点の仙台、迷わず攻める積極性で栃木に食らい付く 仙台89ERSがブレックスアリーナに乗り込み、栃木ブレックスと対戦した。仙台は12勝33敗で東地区最下位、36勝9敗で地区トップを走る栃木を相手に不利は否めないが、立ち上がりからスピードと積極性を前面に押し出し、リーグ屈指のスター軍団に挑みかかった。 田臥勇太を中心とする栃木の素早いパスワークに揺さぶられる仙台だが、それでも最後まで寄せてイージーシュートを許さない。パスは回るが気持ち良くシュートが打てない栃木が『崩し切る』ことにこだわったのとは対照的に、仙台はピック&ロールでズレができたらシュートを打つにしろドライブで切り込むにしろ迷わず前に進み、タフショットを沈めて栃木に食らい付く。 望みどおりのロースコアの展開に持ち込み、志村雄彦のスティールから菊池真人の速攻が決まって8-7と逆転。片岡大晴もピック&ロールから一気に仕掛けて反転しながら難しいジャンプシュートで続き10-7とリードする。 しかし栃木は簡単な相手ではなかった。軽快なパスワークで完全にフリーとなった熊谷尚也の3ポイントシュートで追い付くと、タフショットすら打たせないハードディフェンスで24秒バイオレーションを誘い、仙台がディフェンスをゾーンに切り替えた途端に対応して須田侑太郎が3ポイントシュートを決める。これで一気に勢い付いた栃木が、クォーターをまたぎ約5分半で20-0のランと仙台を圧倒する。 足を使う仙台のディフェンスを栃木のパスワークが上回る 立ち上がりこそ仙台の猛プレスを明らかに嫌がった栃木だが、ドリブルやパス、目線のフェイントで先に仙台のディフェンスを動かして逆を突くことで攻略。守備でも相手の一番の得点源であるチリジ・ネパウエに対しボールを入れさせない。 それでも仙台はスピードある攻めを継続し、ゾーンディフェンスも3ポイントシュートを高確率で決められたのが誤算ではあったが、外国籍選手オン・ザ・コート「2」の第2クォーターにライアン・ロシターとジェフ・ギブスをそれぞれ2得点と沈黙させ、28-37とビハインドを1桁に詰めて前半を折り返す。 だが、再びオン・ザ・コート「1」となった第3クォーターで地力の差が出た。栃木はプレーセレクションがさらに良くなり、激しく足を使う仙台のディフェンスが高速パスワークで引きはがされる。前半は許さなかったインサイドでのイージーシュートの機会を次々と作られ、このクォーターで29失点。 第3クォーター残り2分10秒、グレッグ・マンガーノのダンクが熊谷にブロックされ、カウンターから渡邉裕規に3ポイントシュートを決められ43-60。次のポゼッションでも楯昌宗のレイアップを熊谷に叩き落され、これでチームは意気消沈してしまった。 残り1分を切って今度は柳川龍之介のシュートが竹内公輔のブロックで止められ、渡邊からギブスを経由する流れるようなパスワークから熊谷のワンハンドダンクを許し43-63と20点差。最後はギブスに滅多に決めない3ポイントシュートを決められ、45-66で第3クォーターを終える。 ホワイトを欠く仙台のインサイドを襲ったギブスが19得点 第4クォーター、仙台の選手たちはなおも足を動かし続けるも、それまでのような集中力を保つことはできず。栃木はメンバーを入れ替えながらもテンポを落とすことなく堂々のパフォーマンスを披露し、最終スコア86-53と大差で勝利した。 栃木はロシターのシュートタッチが良くなく、フィールドゴール7本中2本の6得点と不発だったが、そのロシターもディフェンスとパスの繋ぎ役として勝利に貢献。得点源のロシターの代わりに、ギブスが19得点、須田が17得点、竹内と渡邉がそれぞれ13得点と、セカンドユニットが結果を出した。 栃木は川崎ブレイブサンダースに続いてチャンピオンシップ出場が確定。ただしアルバルク東京に1ゲーム差で追われる状況に変わりはなく、激戦の東地区を首位で終えるためには気の抜けない戦いが続く。 一方の仙台はシーズン最初の栃木戦で喫した52点差(56-108)に次ぐ大敗を喫した。どの選手も激しく果敢に戦い上々のスタートを切りながら、栃木に素早くアジャストされると打つ手がなくなり、そのままズルズルと後退。ウェンデル・ホワイトを欠く状況で、インサイドの不利を何とか出さない戦い方を実行したが、栃木が一手も二手も上回った。 仙台にとっては明日の第2戦でどれだけ修正できるか。5位と先行する秋田ノーザンハピネッツはアルバルク東京に敗れ、1ゲーム差は変わらず。『3強3弱』の構図となった東地区において仙台が浮上するには栃木とA東京、千葉ジェッツの『3強』との対戦で勝ち星をもぎ取るのが一番の近道。一つの負けに落ち込むのではなく、修正してチーム力を高めてアップセットを果たすことが必要。そのためには明日の第2戦でどのような戦いを演じるかは非常に重要だ。
文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE