[CLOSE UP]永吉佑也(川崎ブレイブサンダース)『横綱パワー』のイメチェン効果でチャンス到来!?
オーゼキ? サムライ? カッケーなあ! 永吉佑也はイメージチェンジをした。クラブ公式Twitterでのファンの反響は上々のようである。サイドとバックを刈り上げ、これまでは流していたトップを結んだ。『チョンマゲ・スタイル』の永吉に対し、日本代表テクニカルアドバイザーのルカ・パヴィチェヴィッチは「サムライ」と声をかけ、力士の友人がいるニック・ファジーカスは「オーゼキ」と呼ぶ。 愛されるキャラクターの永吉に、その意図について聞いてみよう。「これは、稀勢の里の横綱昇進を見た時に『カッケーなあ!』と思ったんです。その後の試合前、コンビニに行ったらヘアゴムがあったのでとりあえず買い、部屋に戻って結んでみたら『あっ、行ける』(結べる)と」 男たるものカッコいいものにあこがれを抱き、真似してしまう。「稀勢の里パワーをもらえるんじゃないか」という理由でヘアスタイルを変えた。その効果かどうかは分からないが、タイミング良く様々なチャンスが転がり込んでいる。 チームにとっては不幸なことだが、ライアン・スパングラーのケガにより永吉が試合に出る機会は増加。さらには2月10日と11日に北海きたえーるで開催されるイラン代表との国際強化試合メンバーにも選出された。 「本当にいろんなタイミングが重なったと思います。ライアンは1カ月後には戻ってきますが、それまでは治療に集中してもらいたいですし、安心して任せられるように自分が頑張らないといけない。なんなら彼が帰ってきても、『永吉の方が良いんじゃないか』とヘッドコーチに思わせたい気持ちもある。今が本当に大事な時です」 チーム内の激しいライバル争いが川崎の強さ 川崎で3シーズン目を迎えている永吉だが、まだまだ北卓也ヘッドコーチの信頼を勝ち取ったとは言えない。同じポジションにはファジーカス、スパングラーの不動のインサイド陣に加え、帰化選手のジュフ磨々道がいる。さらには鎌田裕也と野本建吾がライバルとなる。 「僕の方が負けないくらい相手チームのビデオを見たり、練習もしていると言いたいところですが、2人もすごく練習しています」と話すように、ポジション争いのライバルたちは、お互いに切磋琢磨している。 鎌田や野本と比較して永吉が秀でている点は、「チームの雰囲気を良くすることができる。鎌ちゃん(鎌田)よりも機動力はあると思うし、野本よりも身体を張れる」ことを挙げた。だが、プラスアルファしていかなければならない点も多い。「アウトサイドシュートやミスを減らすこととか、ディフェンスでもそうですが、いろんなことを含めてその2人に勝たないといけないです。もっと言えば、磨々道よりもプレータイムが欲しいと思っています」と貪欲だ。 川崎はオンザコート「2」の先発メンバーと、オンザコート「1」のセカンドユニットがタイムシェアするツープラトン体制を敷く。練習中は、その両チームでゲームをする機会は多い。 「みんなガメツイので、やっぱり勝ちに行きますし、たまに僕らが勝つこともあります。そうやって先発メンバーに危機感を与えることは、川崎に実力ある選手が多くいるという証拠です。誰が先発で出ても変わらないんだぞ、という気持ちを持って練習中から戦っているからこそ、みんなの良いプレーにつながっているのだと思います」。この話を聞くだけでも、川崎の強さの秘密が垣間見られる。 インサイドで誰よりも強い『バスケ界の横綱』を目指せ スパングラーの代役としてコートに立つ永吉には、自ずと外国人選手とマッチアップする機会が増えている。琉球ゴールデンキングス戦でのオフェンスはサッパリだったが、ディフェンスでは大関のように身体をぶつけて簡単に仕事をさせてはいない。 「外国人選手はパワーがあり、アウトサイドが得意な場合があったりするので、それぞれの強みや特徴を消すようにディフェンスしています」と言う。そのための情報をスタッフが綿密に準備し、コートに出る前にしっかり伝えられているそうだ。そこまでお膳立てがあるわけだから、求められるプレーを実行できなければすぐさまベンチに下げられてしまう。 インサイドでの仕事に対しては、シーズン中に行われる日本代表合宿で学んだことが「メッチャ生かされている」と実感している。 「ルカに教えてもらうことは世界クラスのハードさであり、それを今まさにコートの中で生かせています。教えてもらったことを試し、経験を積むことができるチャンスがあって、それが自分の成長につながると思うと、今がすごく頑張らなければならない時期だと思っています」 Bリーグ1年目に、今後のバスケ人生を上向かせるためのターニングポイントがやって来た。来日すれば当たり前のようにプレータイムが約束される外国人選手から、ポジションを取ることは容易ではない。だが、その争いに勝つことが、日本が本当に強くなるための第一歩でもある。 ペイントエリア内での争いに対し、「全員、『押し出し』したいですね」と笑う永吉は、稀勢の里パワーでBリーグ界の横綱を目指してもらいたい。それがどんなものかは全く分からないが、永吉がきっとその答えを見せてくれることだろう。
文=泉誠一 写真=B.LEAGUE