文=池田敏明

北中米カリブ海はメキシコ、コスタリカ、アメリカで順当か

 3月下旬に行われたロシア・ワールドカップ南米予選の結果、ブラジルが4試合を残して4位以内を確定させ、本大会出場権を獲得した。

7連勝で首位を独走していたブラジルは、7位のパラグアイをホームに迎えた。MFフィリペ・コウチーニョ(リヴァプール)とFWネイマール(バルセロナ)、DFマルセロ(レアル・マドリード)のゴールで3-0と完勝。勝ち点を「33」に伸ばした。 (中略)  そしてウルグアイは、敵地でペルーに1-2と敗戦。以上の結果、ブラジルの4位以上が確定し、W杯出場権獲得が決まった。
ブラジル代表、ロシアW杯出場決定! 4試合残して南米予選突破 | サッカーキング

 ブラジルは予選開始直後こそ不調だったが、2016年6月に監督がドゥンガからチッチに交代したのを機に状況が一変。W杯予選で8連勝を飾り、開催国ロシアに次ぐ2番目の本大会出場国となった。南米予選は残り4節。果たしてブラジルに続くのはどこの国になるのか。同じアメリカ大陸の北中米カリブ海予選と合わせて予測してみよう。

 まずは北中米カリブ海予選だが、メキシコの勝ち抜けは確実。コスタリカも高い確率で本大会出場を果たすだろう。メキシコに関しては、予選敗退する理由が見つからない。15年10月にコロンビア人のフアン・カルロス・オソリオ監督が就任して以降、国際Aマッチを20試合戦って喫した黒星はわずかに1つだけ。北中米カリブ海5次予選でも4試合を終えて3勝1分けで堂々の首位に立っている。残り6試合中、ホームゲームを4試合も残している点も有利に働くだろう。

 コスタリカもメキシコ同様、ホームゲームが4試合残っている。この国はホームになると異様と思えるほどの強さを発揮することが多く、16年11月にはアメリカを4-0で一蹴し、ユルゲン・クリンスマン監督を解任に追い込んでいる。快進撃を見せたブラジルW杯当時のメンバーが多く残っており、今後も順調に勝ち点を積み重ねていくはずだ。

 メキシコと並ぶ強豪のアメリカは上述のとおり指揮官の交代を経験したが、経験豊富で選手たちとの関係も深いブルース・アリーナ監督が登板したことで、一気に持ち直す可能性が高い。エースのクリント・デンプシーは3月の2試合で4得点と大爆発を見せており、彼を始めとするベテラン勢がチームを浮上させるだろう。

 4位争いだが、今まではホンジュラスがコスタリカと同等の実力を有していた。しかし、今予選では今一つ波に乗り切れていない。残り6節の中にメキシコ戦が2試合残っている点も不安材料だ。一方で、現在3位のパナマは侮れない。MLSやメキシコリーグ、南米各国のリーグでプレーする選手が増え、コロンビアやエクアドルをW杯本大会へと導いたコロンビア人のエルナン・ダリオ・ゴメス監督が指揮を執っている。今予選ではホンジュラスを押しのけて4位に滑り込む可能性が高い。ただ、4位はアジア代表とのプレーオフとなり、ここで経験豊富なオーストラリアや韓国と対戦するようだと、本大会出場は厳しい。

 北中米カリブ海地区では、今予選では波乱は起こらないだろう。ただ、どの国も30代半ばの選手がいまだに主力を務めており、ロシアW杯後には世代交代が行われるはず。次の22年カタールW杯予選は混戦模様になるのではないだろうか。

ブラジルと対照的な不調・アルゼンチンは予選敗退の危機

©Getty Images

 南米予選は、2位コロンビアから8位パラグアイまで勝ち点6差の大混戦。どのチームも敗戦数が多く、期待どおりの勝ち点を積み重ねられていない。

 2位コロンビアは3月の2試合で連勝を飾り、残り4試合にベネズエラ、パラグアイと与しやすい相手が残っているため、出場権獲得はほぼ間違いないだろう。一方、3位ウルグアイは昨年11月の試合から3連敗とやや不安な状況。8月下旬のアルゼンチン戦が一つのヤマ場となり、これに大敗するようだとオスカル・ワシントン・タバレス監督の更迭も考えられる状況だが、ラスト3試合がパラグアイ、ベネズエラ、ボリビアと対戦カードには恵まれているため、4位以内に入る可能性は高い。

 アルゼンチンは不調な上、リオネル・メッシが出場停止処分を受けて残り4試合中3試合に出られないのが痛手だ。前線に豪華なタレントを擁しながら、14試合で15得点は最下位ベネズエラの17より少なく、このゴール欠乏症が順位に直結している。得点力不足が解消されないようだと、まさかの予選敗退を喫する可能性もある。

 意外と粘りを見せそうなのが7位ペルーだ。キャプテンのホセ・パオロ・ゲレーロが3月に2試合連続ゴールと好調で、彼に導かれるように攻撃が抜群の機能性を見せており、出場権争いを演じるチームの中では状態がいい。近年は本大会出場から遠ざかっているが、5位に滑り込めば大陸間プレーオフはオセアニア代表との対決。気を抜かなければロシア行きの切符を手に入れられるだろう。

 総括すると、北中米カリブ海からはメキシコ、アメリカ、コスタリカの3カ国、南米からは決定済みのブラジルに加え、コロンビア、ウルグアイ、チリ、ペルーの5カ国が本大会に進むと予想する。アルゼンチンは出場権を逃すと見ているが、果たしてどうなるだろうか。


池田敏明

大学院でインカ帝国史を専攻していたが、”師匠” の敷いたレールに果てしない魅力を感じ転身。専門誌で編集を務めた後にフリーランスとなり、ライター、エディター、スベイ ン語の通訳&翻訳家、カメラマンと幅広くこなす。