文=福嶌弘

今も残るプロ野球ワースト記録! 18連敗を記録した1998年

 開幕から球史に残るほどの低迷を続けている千葉ロッテマリーンズ。3月31日の開幕戦をエースの涌井秀章で落とすと、いきなり4連敗。シーズン5戦目で初勝利を飾ったかと思えばまたも連敗街道に入り、結局、4月は7勝15敗1分で最下位。5月に入っても上向かず、20日の時点で3勝14敗、連敗は最大で8まで伸びてしまった。

 翌21日にようやく今季10勝目をマークしたが、首位をひた走る東北楽天ゴールデンイーグルスはおろか、5位の北海道日本ハムファイターズにさえ7ゲーム差をつけられている状態。5月16日の敗戦で、早くも自力優勝の可能性が消滅してしまった。

 勝てない理由は主力の故障に打線の貧打、さらに投手陣の乱調という具合にさまざまな要素が重なっているが、約20年前の98年にもロッテはこうした惨状を経験している。

 この年のロッテは4月こそ好調だったものの、5月ごろから負けが込みはじめて6月12日のオリックス戦を最後に勝てなくなり、次に勝利したのは7月9日。その間なんと18連敗(引分1を含む)という記録を打ち立てた。

 なかでもファンの心に強く残っているのは、従来の記録である16連敗を更新した7月7日のオリックス戦かもしれない。この試合は、黒木知宏の熱投もあり、あと2アウトで勝利というところまで漕ぎ着けたところでまさかの同点本塁打を被弾。延長戦で敗れたこの試合はのちに「七夕の悲劇」とまで称された。

 しかし、このときのロッテは7月9日に連敗ストップの勝ち星を挙げた後、チーム成績が上向き、9月には13勝9敗2分、10月は6勝2敗という好成績を残した。大型連敗が尾を引いて結果的には最下位に終わったが、翌99年には4位に上昇。その後、地味ながらも好選手が続々と現れ、05年の日本一につながった。

 そこで、98年当時と現在とでチームの状態を比べ、ロッテ復権の打開策を見出していこうと思う。

長打不足はチームの伝統? 主力の故障も響く

 現在、ロッテのチーム打率は.193、防御率は4.52。どちらも断トツのリーグワーストで、得失点差は-98。打てないだけでなく抑えられないという状態なのがこのデータからひと目でわかる。

 なかでも象徴的だったのは、13日の対日本ハム戦。この試合は3回までに5点を取られて劣勢だったが、4回表に打線が爆発して同点に。しかし、投手陣が踏ん張り切れず、結果的に勝ち越しを許して6-11で敗れた。にもかかわらずファンの歓声はまるで勝ったかのようで、その異様な光景こそ現在のロッテの不振ぶりを強調する。

 約20年前のロッテのチーム成績を見ると打率.271はなんとリーグ1位で、防御率3.69はリーグ1位の西武とわずか0.03しか違わないという好成績。得失点差は+18と、3位~5位のチームがマイナスだったことを考えると、これでどうして勝てなかったのかがわからない。

 理由があるとすれば長打不足だろう。この年のロッテのチーム本塁打102本はリーグ5位。チーム最多本塁打を放った初芝清の25本を除けば、2桁本塁打を放った選手はフリオ・フランコ(18本)と堀幸一(10本)の2名のみ。他球団に目を向けると4~5人いたことを考えれば迫力不足は否めない。

 現在のロッテもチーム本塁打はわずか19本で断トツのリーグワースト。年間ペースでも60本代半ばにとどまりそうで、長打不足はさらに深刻になっていることがわかる。

 もともとロッテは中距離打者のサブローを「つなぐ4番」として起用したのをはじめ、長距離砲を揃えるよりも連打で押していくスタイルを好む。本拠地ZOZOマリンスタジアムは本塁打が出にくいことを考えると理に適っているとも言えるが、やはり長打不足はチーム低迷に拍車をかけていると言わざるを得ないだろう。

 さらに、故障者が続出しているのも98年との共通点として挙げられる。今季のロッテは前年の首位打者である角中勝也が4月半ばに右内腹斜筋損傷で離脱したことで負けが込み出したように、当時のロッテも成本年秀と河本育之のダブルストッパーが揃って離脱し、その後にクローザーを務めていたスコット・デービソンも故障が発覚して解雇とブルペンが火の車になった。結果的に打っても逆転負けを喫する試合が多くなり、18連敗中も逆転サヨナラ負けが7試合を数えている。

救世主となった、シーズン途中の外国人選手補強

©Getty Images

 長距離打者の不在と、故障者の続出が共通する点だが、打開策として98年のロッテが行ったのは外国人補強。その決め手となったのが、20年ぶりに10連敗を記録した6月24日の西武戦だった。

 河本の離脱後に抑えを務めていたデービソンの故障で、先発の柱である黒木をクローザーにするという思い切った起用をしたが、救援失敗が続いたことで見切りをつけ、新守護神候補として韓国球界からブライアン・ウォーレンを急遽、獲得。

 ウォーレンは連敗がストップした翌10日に初登板を2回無失点で飾ると、その後はブルペンの柱となり、翌年以降もクローザーとして活躍。99年に最優秀救援投手に輝いた。素行が問題視される選手ではあったが、実質2年半の在籍期間で109試合に登板、6勝5敗49セーブという好成績を残し、05年優勝の立役者となった小林雅英らの成長を促す形となった。

 今月18日には、WBCキューバ代表にも選出されたロエル・サントスと契約合意したことを発表。近日中にチームに合流することが決まっている。

 打撃不振に陥っているチームだけに打者を獲得するのは間違っていないが、「走り打ち」と呼ばれるフォームで打つサントスは、どちらかというとリードオフタイプの打者。少なくとも昨年オフに流失したデスパイネの穴を埋められるようなスラッガーではないことは明らかで、指揮官の伊東勤監督でさえ「いま絶対に欲しい選手ではない」とコメントするほど。フロントと現場の目線が一定でないことが伺える。

 だが、投打ともに低調な現在のロッテに最も必要なのは起爆剤になり得る存在だ。ウォーレンは晩年こそ不正投球疑惑や挑発行為などの問題行動を起こしたが、捕手やチームメイトと激しくハイタッチする姿は印象に強く残り、それがチームのムードを変えたとも言える。他球団よりも熱心に応援するファンが多いロッテの気風に、キューバ出身のサントスがマッチすれば、チームの雰囲気も大きく変わることだろう。

 果たして、サントスは低迷するチームの起爆剤となるのか、それとも新たな補強が行われるのか。ロッテの今後を見守っていきたい。

※数字は2017年5月21日終了時点


福嶌弘

1986年、神奈川県生まれ。バイク・クルマの雑誌の編集部を経て2015年からフリーライターに。父が歌う「闘魂込めて」を聴いて育ったため、横浜出身ながら生来の巨人ファン。個人的に今季のロッテの低迷打開策として現在、高知ファイティングドッグスでプレーしているマニー・ラミレスの獲得を提案したい。『甲子園名門野球部の練習法』(宝島社)『プロ野球2017 シーズン大展望』(洋泉社)などに執筆。