文=斉藤健仁

15年W杯で活躍した3人の海外組が代表選出

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 ルーマニア代表、アイルランド代表と戦う6月の「リポビタンDチャレンジマッチ2017」に向けたラグビー日本代表メンバー33名が5月29日に発表された。

 そのうちの24名は「基本的には日本代表はサンウルブズから選ぶ」というジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)の方針どおり、スーパーラグビー参入2年目のサンウルブズからの選出となった。

 なかでも耳目が集まったのは2015年ワールドカップ(W杯)でも活躍した3人の“海外組”の存在だろう。ニュージーランドのチーフスでプレーするFL/No.8リーチマイケル(東芝)、オーストラリアのレッズに在籍するFLツイヘンドリック(サントリー)、同じくオーストラリアのレベルズ所属のNo.8アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズ)が招集された。

 特に日本代表の前キャプテンであるFLリーチが日本代表入りするのは、W杯以来初めてとなる。「そのポジションで世界のベストの選手の一人」とジョセフHCから高く評価されての日本代表復帰となった。

 実はリーチは、右手親指の負傷の影響で昨年6月の日本代表戦の最終的なメンバーには残らず、昨年11月の欧州遠征の際も休養をとっていた。ただ、「19年のW杯に出たい」「ジェイミーとじっくり話したい」と、17年以降の代表復帰に含みを残していた。

 一方、ジョセフHCも「どこかの時点で、日本代表全員がサンウルブズとしてスーパーラグビーで戦う形にもっていきたい」と語っていた。そのうえで、「FB五郎丸(歩/フランス・トゥーロン)も含めて、海外でプレーする選手たちはケースバイケース。他のチームで、非常にいいパフォーマンスや成長を見せている選手もいる」と、6月の日本代表戦で海外組招集する際の基準について示唆していた。

 つまり、リーチを筆頭に、ツイ、マフィはスーパーラグビーで高いパフォーマンスを見せていたことが評価されたが、一方で、今年になってフランス「TOP14」での出場が1試合にとどまっている五郎丸は選考外となったというわけだ。

 また4選手が嬉しい日本代表初招集となった。サンウルブズで素晴らしいプレーを見せていたHO庭井祐輔(キヤノン)、WTB江見翔太(サントリー)のふたり文句なしの代表入。海外出身のCTBデレック・カーペンター(サントリー)、CTBウィリアム・トゥポウ(コカ・コーラ)のふたりは、サンウルブズでのパフォーマンスはもちろんのこと、3年居住という条件をクリアしたため、日本代表に初めて呼ばれた。

アイルランド戦、ルーマニア戦はまさにW杯の前哨戦

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 ここで、改めてラグビーにおける代表選手の独特な条件について触れておきたい。オリンピックのような「パスポート主義」ではなく、ラグビーはグローバルなスポーツとして「協会主義」で代表チームが編成される。その国のパスポートを持っていなくても、条件を満たしていれば代表選手となれる。

①当該国に3年以上、継続して住んでいる(※2020年12月31日から5年に変更)

②当該国で生まれた

③祖父母または両親のいずれかが当該国出身者

 つまり、トヨタ自動車とサントリーで計3年プレーしたカーペンター、日野自動車とコカ・コーラで計3年プレーしたトゥポウの2人はニュージーランド出身だが、①の条件をクリアして日本代表入りを果たした(一度日本代表になると、可能性はゼロではないが、他の代表になるのは難しい。世界を見ても現在のルールになってから代表チームを変えたのはひとりだけ)。

 他の外国出身選手を見ても、リーチは高校から、ツイ、マフィ、LOヘル ウヴェ、CTBティモシー・ラファエレは大学から日本でのプレーを続け、日本という土地や食事が好きになり、仲間を愛し、日本代表というチームに誇りを持ってプレーし続けている。なお、リーチ、ツイ、ウヴェはすでに日本国籍も取得している。

 また、若手中心のメンバー編成で4月から5月にかけて香港、韓国とアジア・ラグビー・チャンピオンシップを戦った日本代表からは、キャプテンを務めたSH流大(サントリー)を筆頭に、PR石原慎太郎(サントリー)、PR知念雄(東芝)、SO松田力也(パナソニック)、今回のメンバーで唯一の大学生であるFB野口竜司(東海大)ら6人が選出された。

 こうした選考は、「ルーマニア代表戦では若手を起用したい」という以前の発言と一致したものであり、サンウルブズに所属していない若手選手の選考理由についてジョセフHCは「私たちのラグビーに必要な、適切なスキルを持ち合わせた選手」と述べた。

 アイルランド代表とは日本で開催される19年ラグビーW杯で同じプールAに入っており、ルーマニアとも同組になる可能性が高い。6月の3連戦は、まさしくW杯の“前哨戦”という位置づけともなろう。

 スーパーラグビーの戦いを「マラソン」、6月の3連戦を「スプリント」とたとえたジョセフHCは、短期決戦に向けて「いい選手を選ぶことができた」と自信を覗かせた。19年W杯の抽選会も終わり、いよいよ本番まで2年あまり。ジェイミー・ジャパンは、ホームで世界の強豪を打倒して、大きな弾みを付けることができるだろうか。

「リポビタンDチャレンジカップ2017」日本代表メンバー33名

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FW:18 名
ポジション 名前 (所属チーム/出身校 /キャップ数)
PR1 石原慎太郎(サントリー/明治大出身/4キャップ)
PR1 稲垣啓太(パナソニック/関東学院大出身/13キャップ)
PR1 山本幸輝(ヤマハ発動機/近畿大学出身/3キャップ)
HO 庭井祐輔(キヤノン/立命館大出身/0キャップ)
HO 日野剛志(ヤマハ発動機/同志社大出身/4キャップ)
HO 堀江翔太(パナソニック/帝京大出身/49キャップ)◎主将
PR3 浅原拓真(東芝/法政大出身/5キャップ)
PR3 伊藤平一郎(ヤマハ発動機/早稲田大出身/4キャップ)
PR3 知念雄(東芝/順天堂大学院出身/6キャップ)
LO 梶川喬介(東芝/福岡工大出身/4キャップ)
LO ヘルウヴェ(ヤマハ発動機/拓殖大出身/3キャップ)
LO 真壁伸弥(サントリー/中央大出身/34キャップ)
LO 谷田部洸太郎(パナソニック/国士舘大出身/12キャップ)
FL ツイヘンドリック(サントリー/帝京大出身/38キャップ)
FL 徳永祥尭(東芝/関西学院大出身/4キャップ)
FL 松橋周平(リコー/明治大出身/6キャップ)
No.8 リーチマイケル(東芝/東海大出身/47キャップ)
No.8 アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズ/花園大出身/13キャップ)

BK:15 名
ポジション 名前 (所属チーム/出身校 /キャップ数)
SH 内田啓介(パナソニック/筑波大出身/21キャップ)
SH 田中史朗(パナソニック/京都産業大出身/58キャップ)
SH 流大(サントリー/帝京大出身/4キャップ)
SO 小倉順平(NTTコミュニケーションズ/2キャップ)
SO 田村優(キヤノン/明治大出身/42キャップ)
SO 松田力也(パナソニック/帝京大出身/7キャップ)
WTB 江見翔太(サントリー/学習院大出身/0キャップ)
WTB 福岡堅樹 (パナソニック/筑波大出身/17キャップ)
WTB 山田章仁(パナソニック/慶應義塾大出身/21キャップ)
CTB デレック・カーペンター(サントリー/オークランド大出身/0キャップ)
CTB 立川理道(クボタ/天理大出身/51キャップ) ◎主将
CTB ウィリアム・トゥポウ(コカ・コーラ/ブリスベンステート高出身/0キャップ)
CTB ティモシー・ラファエレ(コカ・コーラ/山梨学院大出身/4キャップ)
FB 野口竜司(東海大4年/東海大仰星高出身/8キャップ)
FB 松島幸太朗(サントリー/桐蔭学園高出身/22キャップ)

斉藤健仁

著者プロフィール 斉藤健仁

1975年生まれ。千葉県柏市育ちのスポーツライター。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパンの全57試合を現地で取材した。ラグビー専門WEBマガジン『Rugby Japan 365 』『高校生スポーツ』で記者を務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。『エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡』(ベースボール・マガジン社)『ラグビー日本代表1301日間の回顧録』(カンゼン)など著書多数。Twitterのアカウントは@saitoh_k