文/VictorySportsNews編集部

「奮投した国内投手陣「改めて日本人投手の質の高さを示した」

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連覇を成し遂げた第1回、第2回大会以来の優勝を目指した侍ジャパン。直前の強化試合では2勝3敗と負け越し。下馬評が低いなかでの船出だったが、いざ大会が幕を開けると、過去3大会を凌ぐペースで白星を重ねた。

「一次ラウンドから苦戦すると予想されていたが、(一次、二次ラウンドを)6戦全勝で突破したのは立派。メジャー投手陣が全員不参加だったが、それでも国内の投手陣が好投し、改めて日本人投手の質の高さを示してくれた」

 先発陣の柱と期待されていた田中将大(ヤンキース)や前田健太(ドジャース)、抑え候補だった上原浩治(カブス)らの招集は見送られたが、“オールNPB”で臨んだ投手陣は、アメリカ打線とも堂々渡り合った。

「特に印象的だったのが、アメリカとの準決勝でも好投した千賀(滉大)と菅野(智之)。千賀はフォークを軸にインパクトを残したし、菅野は東京ラウンドこそ振るわなかったが、一発勝負の準決勝で6回1失点(自責点0)は素晴らしい。大一番で好投するあたりはさすがだなと思った。
 平野(佳寿)以降の小刻みな継投もよかった。投手陣は2点しか取られていないわけだし、失点に絡んだエラーも、野球では起こり得ること。大会を通して見れば、投手陣を中心としてディフェンス面は素晴らしい結果を残したと思う」

「日本らしくコツコツつなぐ。次回大会では思い切った対策に期待」

攻撃陣も東京ラウンドでは効率よく得点を重ねたが、アメリカとの準決勝ではメジャー屈指の投手陣の前に沈黙。菊池涼介にソロ本塁打が飛び出したものの、打線全体で4安打に封じられ、1-2で敗れた。

「日本が連覇した第1回、第2回よりも、メジャー選手の参加率が上がり、参加国全体のレベルも高くなっている。アメリカ戦では戦前の予想通り、ボールを動かす変則投手の対応に苦しんだ。
 この手の投手は、外から見た印象と打席に立った際のイメージが異なるため、対策が立てづらい。前回(第3回大会の準決勝、プエルトリコ戦)の舞台・AT&Tパーク(サンフランシスコ)と、今回の準決勝の舞台・ドジャースタジアム(ロサンゼルス)では、いずれも1得点止まり。アメリカの球場で点が取れない課題が、改めて浮き彫りになった。
 やり慣れている東京ドームとは違い、アメリカの球場ではホームランも出にくい。そうなると、動くボールを見極めることができて、ミート力に長けた中村晃(ソフトバンク)、秋山翔吾(西武)みたいなタイプを並べるという手もありかなと思う。そのうえで、足が使える選手ならなおさらいい」

 根本的な課題は変わっていないと指摘する立浪氏。“ボールが動く”という特徴はわかっていても、結局最後は“個の対応力”。そこに一発勝負の難しさがある。

「長打が期待できる選手は、必然的に空振りも多い。ならば、予選ラウンドと準決勝の打順をガラリと替えて、相手投手に合わせた打線にシフトしてもいいと思う。予測が難しく、レベルの高い投手だからこそ、シンプルに打率や出塁率を優先し、日本らしくコツコツつなぎながら嫌らしく攻める。2大会連続で準決勝敗退なのだから、次回大会では思い切った対策に期待したい」

「小久保監督はよくやった、選手とともに監督も若返りを」

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優勝したアメリカ代表は、ワールドシリーズ制覇の実績を持つ72歳のジム・リーランド監督を招聘し、名将はスター軍団をまとめ上げた手腕も評価された。侍ジャパンの小久保裕紀監督はまだ45歳を若いが、すでに任期満了による監督退任の意思を表明。後任候補として、原辰徳氏や中畑清氏の名が挙がっている。

「優勝こそ逃したが、小久保監督はよくやったと思う。開幕前は監督経験がない部分を不安視されていたが、サポートしたコーチ陣も含め、いいチームに仕上げたと思うし、雰囲気もよかった。スター選手を束ねるためには監督のネームバリューも大事だと言われているが、日本代表はメンバー自体が若返っているし、代表監督もその流れでいいと思う。今回の代表メンバーには、現役時代の小久保監督と同じチームだったり、対戦経験のある選手が多かった。打席内やグラウンドで各選手の特徴を見てきた点も、指揮官の判断材料になったはず。大会ベストナインに選出された千賀の活躍は、その好例だ」

 順当なら第5回WBCは2021年に開催される予定で、その前年の2020年には、野球が正式種目として復活した東京五輪も控えている。優勝こそ逃したが、国際大会の魅力を改めて示してくれた今回のWBC、代表チームを束ねる監督選考の行方も気になるところだ。

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VictorySportsNews編集部


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