CSファイナルで驚異的な活躍を見せた田中広輔

CSファイナルステージで驚異的な活躍を見せたのが、広島のリードオフマン田中広輔だ。12打数10安打5四球、打率.833。17打席中15打席で出塁し、4試合で6得点とこれ以上ない成績を残した。プレーオフ、CSの同一ステージで10安打以上は2015年ファイナルステージの阿部慎之助(巨人・11安打)、2005年セカンドステージの川崎宗則(ソフトバンク・10安打)に次いで史上3人目である。

 今季の田中は、リーグ戦最終戦の試合を除く142試合で1番打者としてスタメン出場。2番・菊池涼介、3番・丸佳浩とともに、143試合中140試合で1~3番を組み、広島打線の核弾頭として機能した。

 その田中が102得点、菊池が92得点、丸が98得点と上位打線を組んだ3人の合計得点は292得点にものぼる。チームの総得点684の実に42.7%は3人が記録したものだ。優勝候補の一角にあげられながら4位に終わった昨季も、田中、菊池、丸の並びで1~3番を組んだことがあったが、その数は42試合と今季の3分の1にも満たなかった。

 昨季、3人の得点は田中が61得点、菊池が62得点、丸が81得点で合計204得点。チームの総得点に占める割合は40.3%で今季と大きな差がないが、合計得点は88得点も開きがある。

3人が合計4得点以上あげた試合は28勝1敗

昨季、田中、菊池、丸が1~3番を組んだ試合で合計得点が最も多かったのは5月5日、巨人戦の6得点。合計4得点以上の試合は7試合あり5勝2敗だった。それが今季、1試合での3人の合計得点が4得点以上だった試合は29試合もあり、28勝1敗という脅威の成績を残した。先発の横山弘樹が2回途中7失点でノックアウトされ、9対12で敗れた4月22日の阪神戦だけが3人の合計4得点以上で唯一の敗戦にあたる。

 3得点以上で40勝6敗、勝率.870。2得点以上でも64勝18敗、勝率.780。逆に1得点以下では23勝34敗2分、勝率.404と大きく下がることから、この日本シリーズでも3人が2得点以上あげるか否かが勝敗を左右するだろう。

 ちなみに今季、田中、菊池、丸が1~3番を組んだ試合で3人の合計得点が最も多かったのは4月30日の中日戦で、田中と丸が3得点ずつ、菊池が2得点の計8得点。田中が4安打、丸が3安打、菊池が2安打を放ち、丸は6打点も記録した。今季、1~3番が最も機能した試合だった。

3人が一度も出塁しなかった試合はたったの1試合

得点するためには、まず出塁しなければならないのは言うまでもない。その辺りを深堀すると、今季、田中、菊池、丸が1~3番を組んだ試合で3人の出塁数が最も多かった試合は、最多得点も記録した4月30日の中日戦。3人で計15打席に立ち11打席で出塁している(失策による出塁は含まない)。

 田中、菊池、丸の並びで計7出塁以上した試合が昨季は5試合しかなかったが、今季は34試合もあり28勝6敗、勝率.824。出塁数が5以上でも59勝21敗で勝率は.738と高い。3人の合計出塁数が4以下だったら勝率は5割を切るが、驚くべきことに3人が一度も出塁しなかった試合は4月20日のDeNA戦たった1試合しかない。12球団トップのチーム防御率3.06を誇る日本ハムの投手陣でも、田中、菊池、丸の3人を揃って抑えることは非常に難しいと言えそうだ。

 これらの数字を総括すると、広島が日本一を勝ち取るためには田中、菊池、丸の3人が1試合で合計5回以上出塁し、2得点以上あげることがポイントになるだろう。

 ちなみに今季、交流戦での対戦は広島が日本ハムで2勝1敗と勝ち越しているが、2勝した試合はいずれも田中、菊池、丸の3人が合計5回以上出塁し、2得点をあげている。敗れた6月8日の試合は3人とも1出塁ずつに抑えられ、得点も菊池があげた1得点のみだった。

札幌ドームで右投手と対戦するときの田中に注目

では、広島日本一のキーマンである、田中、菊池、丸の3人に得意不得意はあるのだろうか。左右投手別、ホーム・ビジター別の打率を見ると、菊池はいずれも3割以上を残している。丸も左右投手別で大きな差はないものの、ビジターでも打率は下がる。3人のなかで最も差が激しいのが田中だ。

 田中は左投手に対し打率.283だが、右投手には.250。ホームでは打率.297だが、ビジターでは.234まで下がる。幸いにも、今回の日本シリーズはセ・リーグの本拠地からはじまるため、田中が苦手としているビジターでの試合は少なくなる。本拠地マツダスタジアムで弾みをつけ、苦手なビジターの試合に臨みたいところだ。

前回、広島が日本一に輝いた1984年の日本シリーズでは、高橋慶彦が1番ショートでフル出場。30打数15安打8得点、打率.500。7試合すべてで出塁し、優秀選手賞に選ばれた。打順もポジションも同じ田中が高橋のような活躍を見せることができるだろうか。そして、田中、菊池、丸でどれだけ試合をかき回せるか。32年ぶりの日本一のカギは間違いなくタナキクマルの3人が握っている。

(プロフィール)
京都純典(みやこ・すみのり)
1977年、愛知県出身。出版社を経て独立。主に野球のデータに関する取材・執筆を進めている。『アマチュア野球』(日刊スポーツ出版社)、『野球太郎』(廣済堂)などに寄稿。


京都純典(みやこすみのり)