カーリング娘たちの活躍の陰にベテランの存在あり
平昌五輪は、カーリングが面白い! 男子・両角友佑の「ラインはいいよー」も耳に残るけれど、やっぱり女子の「うん、うん、そダね~」がいい(笑)。コミュニケーションをとって、アイディアを出し合って、雰囲気をよくしていく。リラックスしたなかで、いいパフォーマンスを出やすくしている。それに、失敗しても励まし合って、すぐに次のプレーに集中できている。「間」があって、コミュニケーションをとりながら進めていくところは、野球に似ている。野球選手にも参考になるところは多いだろう。
今回の「カーリング娘」では、マリリンことベテランの本橋麻里がリザーブに回っている。これが大きい。自分の経験を若い選手たちにアドバイスする。大会中は深夜の試投で氷の状態を調べ上げ、生きたデータを供給する。もちろんプレーしたいという強い気持ちはあるだろうが、チームを強くするためにと、ぐっとこらえている。マネージャーであり、スカウティング担当の裏方さんであり、控え選手であり……ひとりで何役もこなしながら、将来性ある若い選手たちをサポートするベテラン。その存在が好成績の源になっている。
目立たないがありがたかった昨季の能見
と、マクラが長くなったが、現在の阪神タイガースにとってもベテランと若手の理想的な融合は大きなテーマ。打者では福留孝介、鳥谷敬、糸井嘉男。投手では能見篤史、藤川球児、メッセンジャー。彼らは主力ではあるが、それぞれに衰えと戦っている。
ただ、その度合いには個人差がある。糸井、メッセンジャーはいまのところ衰えを感じさせない。鳥谷、藤川はベテラン選手としてやっていくためのコツを掴んだように見える。
福留、能見はベテランとしてのあり方、やり方がすっかりわかっている。疲労が抜けにくいのを自覚し、無理をしないで「やれること」でチームに貢献する。金本知憲監督自身、大ベテランとして長くプレーした経験から、そのあたりの事情や心理はよくわかっている。
ことに、能見の昨シーズンの働きは目立たないながらも大きなものがあった。先発として23試合。これは秋山拓巳の25試合に続くチーム2位。WHIP 1.22はメッセンジャーの1.24をしのいでいる。投球回は128.1なので、1試合あたり平均すれば5回2/3といったところ。それをだいたい自責点2点程度で抑えると、防御率3.72という数字になる。
早く降ろしてしまうのでQS率も低いし、勝ち負け関係ない試合も増える(6勝6敗)。それでも1シーズン、中6日、中7日でずっとローテーション守って、5回ちょっとを2失点程度で投げてくれるベテラン。これはありがたい。とくに阪神のようにリリーフ陣が整備されているチームならなおさらのことだ。
前に打たせない才木は一軍で投げさせて伸ばせ
おそらく今季も同じような使い方が想定されていると思う。キャンプ中継の様子を見ている限り、能見はあいかわらず見た目もシュッとしているし、ワインドアップのフォームはキレイだし、ボールも若々しい。
しかし、今年5月で39歳という年齢を考えると、私はあえて「能見よマリリンになってくれ」と提案したい。たとえば、伸長著しい才木浩人との「先発枠併用」だ。
才木は実戦に入っても期待感を高める投球が続いている。何がいいって、マウンドでの堂々とした振る舞いだ。「甲子園のスターだった」というわけでもない高卒2年目で、あの投げっぷりは並の心臓じゃない。ここのところの実戦では150キロをゆうに越える速球を連発し、打球をフェアゾーンに飛ばさせない投球を見せたりしている。とにかくこれを使わない手はない。
とはいえまだ19歳。チーム事情で下手に使いつぶしてしまうのが最悪の愚策だ。とくに三振がとれるからとリリーフに回して、毎日のように投げさせるなんていうことだけはやってほしくない。まあ、今の阪神ならその心配はなさそうだが、逆に「大事にしすぎて使わない」のは大いにあり得る。伸びるときには使ってやって、きちんと伸ばさなきゃもったいないのだ。
能見才木併用策は、虎の「幼老複合施設」やー!
そこで能見と才木の2人で先発1枠だ。能見が先発して5回2失点の好投で阪神勝利、即抹消。空いた枠に若手の野手やリリーフ投手を上げて使ってみる。ローテーションを見ながら谷間がきたら才木を登録して即先発。そのとき抹消するのは能見に代えて上げた選手、またはその代わりの誰か。で、才木が好投して勝利投手になっても即抹消。「せっかく好投したのになんでや!?」とファンが騒ぐけれど、監督は涼しい顔で「次もチャンスあるよ」とコメント(ここ大事)。以後、同じように中10日で能見登録即先発して即抹消、中10日で才木登録即先発して即抹消。
能見は中10日にして、よりコンディショニングしやすくする。しっかり疲れを抜いて、たまの登板に集中する。それと同時に二軍の鳴尾浜での調整を多くしてもらって、二軍選手にもベテランが努力する姿を見せる。これもチームの底上げに役立つはずだ。
才木はもはや二軍戦でローテーションを回して自信を得るより、一軍で投げて、打たれたり、抑えたりすることのほうが得るものが大きいはずだ。その一方で、走り込みや筋トレなどでしっかり追い込みながら体力をつけていくことも必要。中10日の登板間隔なら、トレーニングを組み込んだり、フォーム調整をしたりしつつ、高いレベルの実戦経験を積んでいける。
40歳が間近に迫るベテランと、まだ20歳にもならない若手の併用。それに加えて、一・二軍のボーダーラインにいる野手やリリーフ投手たちを上げたり下げたりして試していく。チームを活性化させる意味でも、新戦力を作っていく上でもきわめて有効。これは、保育所と老人ホームを隣接(併設)させる「幼老複合施設(宅幼老所)」のように、実際的で役に立つ戦略だと、私は思うのだ。