球史に残る髪型

皆さんの記憶に残る野球選手の「髪型」と言えば誰の髪型だろうか。パンチ佐藤さんのパンチパーマだろうか。タフィ・ローズのコーンロウだろうか。元西武前田勝宏さんの金髪も思い出深いし、井川慶さんの「ただ自然に伸びすぎて異様に膨らんだヘア」も衝撃的だった。忘れてはならない三浦大輔さんのリーゼントは間違いなく球史に残る髪型だろう。プロ野球髪型殿堂入りも間違いない。(ここには挙げきれないが皆さんの心の中にもたくさんの髪型が浮かんでいると思う。プロ野球選手の髪型だけを語る「プロ野球髪型ナイト」を開きたいくらいである。)
そんな群雄割拠のプロ野球髪型界の中でも燦然と皆の心に残っている選手と言えば、長髪の暴れ馬元中日サムソン・リーではないだろうか。

衝撃的だったサムソン・リーのNPBデビュー

サムソン・リーこと李尙勳(イ・サンフン)氏が日本球界に移籍したのは1998年。当時の中日にはソン・ドンヨル、イ・ジョンボムなど韓国の強烈な選手がひしめき合っていた記憶が強い。ソン・ドンヨルの急激に落ちるスライダーに興奮し、イ・ジョンボムの、盗塁するたびヘルメットに貼る忍者シールにワクワクしたものである。そんな強烈な個性を持つ二人が霞んでしまうほどのインパクトを我々に与えたのがサムソン・リーであった。ダイナミックなフォームから放たれる威力抜群のストレート。そして何と言ってもトレードマークでもあるあの長髪。長さでいうと新日本プロレスの内藤哲也選手と全く同じ長さのロングヘアである。当時は「あんな髪型許されるのか!」「ただのヤンキーじゃないか!」など野球ファンをざわざわさせていた。しかし1年目こそ不調だったものの、2年目から勝利の方程式の一角として中継ぎで大活躍。バッターボックスに入った際強くバットを振りすぎて脱臼したのもいい思い出だ。その後夢であったメジャーへと移籍。しかし結果を出すことはできず韓国球界に戻るのであった。

突然の引退からのミュージシャンへの転向

韓国球界に戻り1年目はまずまずの結果をだしたサムソン・リー。しかし2年目のキャンプにてギターを持ち込んだことがきっかけで監督と揉めチームを放出。その年の6月にロック歌手になる!と野球界を引退をしてしまう。中日ファンのみなさまはご存じの方も多いだろう。その後「WHAT!」というバンドにて活動することになるのだが・・そんな波乱万丈すぎるサムソン・リー氏の詳細はFacebookで知ることができる。

サムソン・リーのFacebook

長い髪を振り乱し熱いプレイを魅せる、我々の心の中にあるサムソン・リーがそこにはいた。そしてこのFacebookで時を遡っていくとバンド時代のサムソン・リーに出会うことができた。それがこちらだ。

パーマこそかけてはいるが、そこには確かに髪型をバンドマン風へとチェンジしたサムソン・リーの姿が!なんと穏やかな顔だろう。そこには鬼神の如き表情でバッターに向かっていたサムソンリーの面影はない。もともと揉めるのが嫌で、多くを語らずチームを去った心優しいサムソン。そんな全ての重荷から解き放たれ、ただロックを純粋に愛する一人の男がそこにはいた。
そしてそんな伝説のピッチャーを韓国球界は放ってはおかなかった。引退から8年後、高陽ワンダーズへコーチとして招聘されたのだ。心機一転。過去の栄光を断ち切り新たな挑戦をするサムソンは、まさに過去の自分自身であるトレードマークを断ち切ったのであった。

見事なまでにスッキリした髪型のサムソン。ここでの働きを評価され、現在はLGツインズにてコーチをされているとのこと。まさに波乱万丈の人生。サムソン・リー氏のこれからのご活躍が楽しみである。

日本球界に長髪旋風を巻き起こしたサムソン・リー。今後日本野球髪型界に第2、第3のサムソンが生まれることを願ってやまない。


ザ・ギース尾関高文