記念すべき90周年

 甲子園に次いで日本で2番目に古い野球場であり、大学野球のメッカとして、そして東京ヤクルトスワローズの本拠地としておなじみの明治神宮野球場。1926年に開場した同球場は、昨年90周年を迎えました。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、昨年11月に90周年を記念した“奉納試合”として、東京六大学選抜vs東京ヤクルトスワローズの試合まで行われたんです。10年前の80周年の際にも実現していましたが、なかなか見ることができないこの試合の結果は、スワローズがプロの面子を保ち大勝しました。

 この年の1月、私は神宮球場さんから、この90周年にあたってのお仕事をいただいていて、記念ロゴなどの制作をさせていただくことになりました。いわゆる“スタジアムロゴ”というものは、球場の外観や建物の象徴的な部分をイラストにしたものが主流で、この明治神宮球場90周年ロゴもそれに沿ったものにすることになり、いくつか“象徴的な部分”をイラスト化した結果、外観正面の物に決定しました。

 このロゴは一年間いろんな所に掲示されましたが、中でも球場内で販売されるビールなどのドリンクカップにもプリントされたことで、多くの方にも見ていただけたかと思います。

©︎大岩Larry正志

※通い慣れた球場の90年の歴史を形にできて嬉しかったです。

プロではないからこその難しさ

 ロゴと合わせてご依頼いただいたのが、奉納試合のポスターなどにも使われるイベントそのもののベースデザインです。プロ球団のグラフィックでは選手を撮影したりするのですが、このときは大学生も対象となりますので、選手は使わずに“六大学”と“スワローズ”を表現しなくてはなりませんでした。
 コンセプトはやはり“歴史”、という部分を表現すること。ロゴを使うか、帽子を使うかなどいくつかアイデアラフを出し、最終的にはユニフォームを大きく露出させるデザインに決定したんです。日本の野球界を長く支えてきた大学野球のユニフォームは、イコール、“日本の野球の歴史の顔”と言っても過言ではないと思います。

©︎大岩Larry正志

※歴史ある六大学のユニフォームはシンプルなデザインですが、重みがあります。

 決定したグラフィックはポスターに限らず、パンフレットやチケット、タオルやクリアファイルなどのグッズまでいろいろと展開されていき、先にデザインした90周年ロゴも球場内のあちこち活躍しますが、実は使用されたボールにもそのロゴがプリントされていたり、バックスクリーンビジョンに表示される試合前イベントの告知画面のような、一瞬しか露出しないところや、関係者用パスなども全て同じテイストでデザインさせていただきました。

©︎大岩Larry正志

※試合前の一瞬だけの表示だったので、ここであらためて。関係者用パスもこの日だけのオリジナル。


 今回は一試合だけの短時間な企画のものですが、逆にそういう限られた時間の事だからこそ、そんなところまで!? というような細部まで統一したイメージやテイスト、デザインを施すことで、その世界観をより印象つけられるのではないかと思います。
 ちなみに、90周年ロゴは、記念の部分を除いて再デザインし、現在は通常のスタジアムロゴとして使用されていますので、引き続き皆様よろしくおねがいします。

編集協力:ベースボール・タイムズ

■プロフィール
大岩Larry正志(おおいわ・らりー・まさし)
1975年生まれ。滋賀県出身。デザインオフィスONE MAN SHOW代表。
『野球とデザイン』をテーマに制作活動を続け、2008年には西武ライオンズ(当時)の交流戦用、09年に福岡ソフトバンクホークス『鷹の祭典』のユニフォームとグラフィックを。2012年からは楽天イーグルス夏季用ユニフォームや優勝ロゴ、同時に2015年からは、東京ヤクルトスワローズのユニフォームやグラフィック、ロゴのデザインを毎年手掛けている。

また、アニメ『The World of GOLDEN EGGS』のボイスアクターなどとしても活躍をしている。http://www.oneman-show.com


大岩 Larry 正志