大きなもののデザイン

 東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地・koboパークは、昨年からバックスクリーン回りのビジョン設備が充実しました。それに伴い、ビジョンに表示される情報やレイアウトも変更されるという事で、その画面デザインも担当させていただきました。
 一般的に、ビジョンには打順や得点などの情報が表示されますが、koboパークの場合、選手個人の詳細情報が表示されるサブビジョンもあるので、2つの画面でそれらのデータをレイアウトすることになります。どこに、どのような情報をおくのがベストなのか…。考える事がとても多かったんです。

©︎大岩Larry正志

※実際のkoboパークのビジョン。これを機に他球場のビジョンデザインも気になるようになりました。

 情報の配置だけではなく、場内の人からはちゃんと見えるのか、またどんなデザインを施すのか、などなどが、大きく考えなければいけない部分です。
 例えば、まずはレイアウト。スターティングオーダーや得点経過、アウトカウント、ピッチャーの球数、ランナーの有無、担当審判、ヒットやエラーの表示などをいかに自然に配置するか。これだけでもいくつもパターンを作り、ベストを探ります。
 それが決まると、今度は文字のサイズや書体、スタメンの選手名と選手名の間隔など、あらゆる検証を行いますが、いかんせんビジョンのサイズがサイズだけに、確認するために私も実際に球場に足を運び、現場で担当スタッフと話し合って進めていきました。
 ちなみに、使われている日本語の書体は既存のものですが、英語と数字の書体はちょうど良い物がなく、このビジョン用にオリジナルでデザインしています。

“現場”目線からの確認も

 この作業はシーズンオフに行なっていますが、3月に入ってから実際にプレーする嶋選手らキャッチャー陣にも守備位置についてもらって、プレーする立場からの意見を聞くといくつか希望点もあり、ここでも修正していきます。他チームのロゴの置き方・見え方も問題ないかなども、それぞれの球団に確認をとる必要もあります。

 これらの作業と同時に、スタジアムに合わせた“かっこよく”見せるためのフレームのデザインなども考えていくのですが、いくつかデザインを考えた結果、これはこの年に楽天球団が発行したトレーディングカードのフレームデザインと雰囲気を合わせ、そこからビジョンとして適した形に再デザインしています。

©︎大岩Larry正志

※ここにいきつくまでにいくつもレイアウトパターンを作り、見やすい書体や色なども探していきました。(画像はサンプル段階のものです)

 ちなみにテレビ中継の画面もこの時にリニューアルしましたが、ここも同じテイストでデザインした素材を使っていて、球団として発信するイメージを統一しています。テレビでしか観る事ができない時でも、少しでも球場の雰囲気を感じてもらえると嬉しいです。

©︎大岩Larry正志

※同じデザインで統一しています。(画像はサンプル段階のものです)

 こうして2016年の開幕からこの仕様で表示されていますが、実際に1シーズン過ごしてみてからわかったこと、こうした方がもっとよくなるという点が出たため、このシーズン終了後にも更新・改善作業を行い、結局2シーズンかかってようやく今年完成したという感じです。
 球場に着くと、好きな選手は出てるかな?どっちが勝ってるかな?など、情報を得るために全ての人が目を向けるビジョン。球場を訪れた人がその時間をよりスムーズに楽しく過ごせるようにデザインするのもなかなか大変です。


大岩 Larry 正志