キャンプも終盤となり、開幕までもう少しとなりました。連載「野球のデザインのおはなし」は、ちょうど20回目となる今回で終わりとなります。読んでくださった皆様、ありがとうございました。

 おかげさまで、今年もいろいろな形で野球に携わることになりました。最後に、今年のデザインさせていただいたユニフォームについてお伝えしようと思います。

王道パターンの“燕”ユニ2018

 まずは東京ヤクルトスワローズのCREWユニフォームと燕(えん)パワーユニフォームです。ここ数年、グリーンを使用する方針で要望をいただきデザインしています。ご存知の方も多いかと思いますが、スワローズが日本野球機構に登録している球団カラーは、白以外に「赤・青・緑」。つまり「緑」は公式の球団色なので、決して縁は“突然出てきた色”ではないんですよ。(詳しくは連載vol.2参照)

 使用しているのは、“燕パワーグリーン”と名付けられた明るめのグリーンです。この色を、今年も2種類のユニフォームに使用しています。CREWユニフォームと燕パワーユニフォームは、“兄弟”というか“対(つい)”になるようなイメージでデザインしていて、今年はボックス型のボディに色が異なった袖が付いているデザインにしています。

©︎大岩Larry正志

 CREWユニフォームは「白と緑」、燕パワーユニフォームは「緑」というイメージになるよう心掛けているので、このユニフォームのタイプはうまくそれに当てハマったと思います。

 私はデザイン的に「野球のユニフォーム」から大きく逸れることはしない主義で、このように配色するスタイルは、昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でもアメリカ代表など各国が使用していたり、野球ユニフォームとしては王道ともいえるパターンで、好きなスタイルの一つです。

 帽子は毎年違うデザインにすることに頭を悩ませていますが、今回も“ベースボールキャップ”の範囲からはみ出ないようにしました。

好評モデルをブラッシュアップした楽天2018企画ユニ

 続いては、東北楽天ゴールデンイーグルスのユニフォーム。担当させていただくようになって7年目になりますが、今年もFANS’ユニフォームと企画ユニフォームをデザインさせていただきました。

 大きなコンセプトは「初優勝から5年、再び日本一を目指す」ということで、2種類ともに日本一になった2013シーズンに着用したTOHOKU GREENの胸ロゴやフォントの要素を取り入れました。そして、昨年好評だったブラックイーグルスを継承し、FANS’ユニフォームはクリムゾンレッドと黒で、企画ユニフォームの方はその黒をメインにリデザインしました。

 両方の袖に付くロゴのコピーは「TOHOKU PRIDE」。こちらも2013シーズンのTOHOKU GREENロゴの進化版と言えるでしょうか。東北6県を表す6本の鷲の羽根を施し、東北とイーグルスがひとつになり勝利を目指すことを表しています。

©︎大岩Larry正志

 そんなテーマで2018年を迎えた中、1月に2013シーズンの日本一監督だった星野仙一氏が亡くなられました。TOHOKU GREENユニフォームのお姿や日本一の瞬間を目の前で見た光景は、私としても忘れることのできないものです。

 今回のコンセプトは、その2013シーズンを強くイメージしたもの。チームや選手、ファンの皆様の一体感がさらに強まるものになってくれると幸いです。

 そして、今年はホーム・ビジターのユニフォームもリニューアルされました。イエローをゴールドにすることや袖や襟元のラインの入れ方、ビジターユニフォームのデザインは既に球団で決まっていたので、私はホームユニフォームのA~Zのネームフォント、0~9の番号フォントをデザインさせていただきました。

 番号フォントには切り込みを入れ、“鷲の飛翔のスピード”が感じられるデザインにしています。私は「野球のユニフォームというのは、胸のチームロゴ、名前と番号の書体の完成度がしっかりしていればあとは何もいらない」というくらいのシンプルを目指しているので、こういう書体デザインというのはけっこう難しいのですが、それらの背中についている物の要素次第で選手の後ろ姿が変わってくるので、ここにもしっかり時間をかけさせていただきました。

©︎大岩Larry正志

 今回ご紹介したユニフォーム以外にも、いろいろなグラフィックやイベントロゴなどのデザインが今年も進行中ですので、楽しみにしていただけると嬉しいです。

最後に、いち野球に携わるデザイナーとして

 ここでの連載では野球デザインの裏側の一部をおはなししてきましたが、試合やプレー以外のこういう部分を楽しみにしているファンの方々も多くなってきた雰囲気も感じていて、とてもいい事だと思うと同時に、私としてもそのご期待に添えるようがんばらないといけないと思っています。

 本連載は今回で終了させていただきますが、デザインで野球を盛り上げ、ファンの方々に楽しんでいただきたいというコンセプトはこれからも持ち続け、私自身もさらなる夢に向かい活動していきますので、皆様よろしくおねがいします。

 ご愛読ありがとうございました。

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