昨年は最後までもつれた3位争い
25年ぶりに優勝した広島と、最後までもつれた日本ハムとソフトバンクの覇権争い。一方で3位争いに目を移すと、早々と“3強3弱”状態になったパ・リーグに象徴されるように、球団初のCS進出を決めたDeNAも含め、両リーグともAクラス争いは早い段階で決着がついた。
参考までに昨年はというと、阪神と広島の3位争いは最終戦までもつれ、パ・リーグも西武が全日程を終了したあと、ロッテが逆転でのCS進出を決めた。未だに同システムへの不満、改善案が度々取りざたされるが、興行視点で見ると大成功である。
CSのメリットは、消化試合が減り逆に注目試合が増えたこと。“消化試合”の捉え方はさまざまだが、シンプルに言えば順位が確定したあとの残りゲームだろう。CS導入以前は個人記録、タイトルに絡む選手のモチベーションはあるにせよ、チームとしての目標はないに等しい。よって、若手の試用期間に充てられることが恒例だった。
ただし、消化試合にも消化試合なりの醍醐味があった。現在、各のチームの中心選手の顔ぶれを見えると、そう思わずにはいられないのだ。
“キクマル”も消化試合のなかで成長

球界を背負うスラッガーに成長した筒香嘉智は、消化試合のなかで4番としての帝王学を学んできた。飛躍のシーズンとなった2014年は、期待の若手として「5番・左翼」で開幕スタメン入り。当時のDeNAは春先、ブランコ(現オリックス)や中村紀洋を4番に据えていたが、チームはスタートダッシュに失敗。結局シーズンを通して一度も貯金を作れぬまま終戦を迎えた。
そんななかで当時の中畑清監督は、Bクラス濃厚となった9月以降、多くの試合で筒香を4番に据えた。期待の大砲はこのシーズンを打率.300、22本塁打、77打点の好成績で終え、翌年以降は不動の4番打者としてチームを支えることになる。
山田哲人も消化試合のなかで成長してきた選手だ。2015年にリーグ優勝したヤクルトだが、以前の2シーズンは2年連続の最下位。特に2013年は、7月終了時点で借金20と低迷し、早くも終戦モードが漂っていた。そんな状況で高卒3年目の若武者は二塁手のレギュラーを掴み獲り、94試合の出場で打率.283をマークした。
2014年もチームは借金21と低迷したが、山田自身は143試合に出場し、打率.324、29本塁打、89打点と覚醒。優勝に貢献しトリプルスリーを達成した2015年以降の活躍は、いまさら説明不要だろう。
今シーズン圧倒的な強さを見せた広島も、中心選手は消化試合のなかで育った。借金16で5位だった2011年にレギュラー定着を果たしたのが丸佳浩。この年は前年の14試合出場から、一気に131試合出場に伸ばした。翌2012年もチームは借金10の4位だったが、この年は大卒1年目だった菊池涼介が、東出輝裕(現打撃コーチ)のケガもあり後半戦から二塁手として出番を増やした。
CS常連の巨人、阪神は若手が伸び悩む……

一方で、2000年代に入りAクラスの常連だった巨人、阪神、中日の3チームは、ここへ来てチーム自体が過渡期を迎えている。巨人は坂本勇人以降、野手陣の柱となるべきスター選手が不在。4シーズンぶりのBクラスが確定した阪神は、金本知憲監督の下、強引に若手育成に舵を切った。
19年ぶりの最下位に沈んだ中日は4年連続のBクラス。過去3シーズンは多くの消化試合があったかと思いきや、2013年から4位、4位、5位と、中盤までは毎年のようにCSを狙える位置にいた。それにより目先の順位を追う現実的な戦いが続き、結局は中途半端なシーズンが続く結果になった。
それでも今年に関しては例年より早くAクラス入りの可能性が絶たれたことで、9月以降は若手を積極的に使っている。現在、多くの試合で中軸に座っている福田永将、高橋周平らが一皮むけることができれば、2016年は実りあるシーズンだったと言えるだろう。
“THE消化試合”の西武-オリックス戦 実は見どころ満載!?

パ・リーグでは、日本ハム、ソフトバンク、ロッテの“3強”と、西武、楽天、オリックスの“3弱”が早い段階で分別された。楽天は8月以降、生き残りをかけた外国人選手のアピール合戦が熱かった。その甲斐あってか、球団はウィーラー、アマダー、ペレス、ペゲーロと、助っ人野手全員と来季以降も契約を延長する方針を示した。
西武とオリックスの戦いは、互いに若手野手の活躍が目を引いた。西武は山川穂高が一発を量産し、金子侑司は俊足を活かし50盗塁越えを果たした。オリックスは故障で出遅れたドラフト1位外野手・吉田正尚が8月中旬以降大暴れ。豪快なフルスイングから多くのアーチを描き、優勝争いをかき回した。
勝敗の行方はもちろん、選手の成長過程を見守るのもプロ野球観戦の醍醐味だ。近年は優勝争い以外でも順位を争う機会が増えたため、実績に乏しいメンバーがスタメンに並ぶと、多方面から非難を浴びる傾向にある。だが今年は、8月以降、西武や楽天の勝率が意外にも高く、若手が伸び伸びと経験を積んでいるのも事実。今後も消化試合を有効に使うチームが増え、ひとりでも多くのスター選手が出現することを願う。