変えられなかったオーナーへの依存体質

福岡は昨季B2(2部)で優勝し、B1に初昇格。3億5000円だった予算を5億4000万円まで増やして臨んだものの、広告料や入場料などによる収入は2億8000万円にとどまった。元々不足分は昨年7月にクラブの株式を取得してオーナーとなった「餃子計画」(本社・大阪)が広告費として補塡(ほてん)するつもりだったが、最近になって同社の資金調達が難しくなり、クラブに入金されなくなったという。このためBリーグが施設や財務などを基準に資格審査して交付する来季のクラブライセンスについて、B1のライセンスは不交付と判定。B2ライセンスも停止条件付きの交付で、29日までに1億8000万円を確保するめどが立たなければB3降格やリーグ自体から退会させられる可能性がある。

かつてサッカー元日本代表・本田圭佑のマネージャーを務めた福岡の神田康範社長は9日の会見で「広告料収入も伸びず、オーナーへの依存体質を変えられなかった。私の責任」と謝罪した。神田社長はオーナーからの支援をセーフティーネットにしつつ、広告料や入場料などを伸ばすことで依存体質からの脱却を目指していた。昇格効果もあって入場料収入は4000万円だった昨季の2倍以上となる9000万円に増加し、目標値(7500万円)を突破。一方で1億8000万円と見込んでいた広告料収入は5500万円も下回り、グッズ販売やスクール事業の増収分でも穴埋めできなかった。

得られなかった地元からの支援

福岡県出身で知名度が高い「ホリエモン」こと堀江貴文氏が昨年6月に社外取締役に就き、全国的には営業先の反応は上々だったという。しかし地元財界からの視線は厳しく「スポンサー数は増えても金額は伸びなかった」と神田社長。次第に資金繰りに時間を取られるようになり、マネージャー時代に築いた人脈を駆使するトップセールスも行えなくなった。バスケ王国にも関わらず地元が冷たかった背景には、14年前から積み重なる「負の遺産」がある。2005年、当時国内最高峰のスーパーリーグに参戦したばかりの「福岡レッドファルコンズ」が開幕からわずか1カ月で経営破綻し、シーズン途中でリーグを脱退。使途不明金も発覚し、スポンサーになった多くの地元企業は裏切られた。プロの灯を残したいという一部有志が07年に結成し、bjリーグに参戦した「ライジング福岡」(16年からライジングゼファー福岡)も慢性的に資金繰りが苦しく、頻繁に経営陣が交代。歴代の経営者は金策に走るので手いっぱいで、行政や福岡県協会、財界などとの連携をおろそかにした。14年には当時の社長が業務上横領の容疑で逮捕され、地元の不信感は頂点に達した。

NBL(旧ナショナルリーグ)とbjリーグの統合が決まった15年。福岡は福岡県協会からの支援を得られずに新リーグへの参入を1度諦めている。再協議の末に何とか支援の約束を取り付けたが、経営基盤の弱さを指摘されてB3からのスタートとなった。ここで足場を固め、地元の信頼を回復させる道を選んでいたら今回の悲劇は生まれなかったかもしれない。だが「バスケ王国」のプライドが許さず、Bリーグ参入直前に株式を取得した当時のオーナーが全面的な支援を約束したため最短でのB1昇格を選択した。NBLで実績のある山下泰弘や小林大祐ら地元出身の選手を中心に複数年契約を締結。通常は総予算の3~4割が妥当と言われるチーム人件費が5割近くまで膨らんだ。2人を中心に1シーズンでB2昇格を果たした一方で約3億円の大赤字を出し、オーナーが補塡(ほてん)。昨季もチームの快進撃とは裏腹に収入不足で約2億円の債務超過が発生し、支援を申し出た「餃子計画」と当時のオーナーが広告費として補塡した上で「餃子計画」が新オーナーになった。しかし今季も給与の遅配が何度も起き、破たんは時間の問題だったという。地元のために帰ってきた選手たちは裏切られ、小林は「バスケットボール以外の面で敵がいた」と恨んだ。

原因はチームだけでなくリーグにも

実情を甘く見ていたのはBリーグも同じだ。福岡がB2やB1に昇格する際、資格審査で財務面での改善を求めながら、福岡が出したオーナー依存の解決策を承認している。九州・沖縄に琉球しかB1チームがなく、地域性のバランスを考えても競技が盛んな福岡の昇格は願ってもない状況だったからだろう。Bリーグが手本にしているJリーグでは2009年、J1の大分に約12億円の債務超過が発覚。チームの強化を優先してリーグカップ戦を制し「地方の星」と称賛された裏で、収入に見合わない補強を繰り返すずさんな経営が浮き彫りになった。その後導入した「クラブライセンス制度」でリーグが財務面もチェックするようになり、各クラブの経営は徐々に安定した。この教訓をBリーグは生かせなかった。

大分はサポーターの募金活動や大分県による本拠地の使用料減免、地元の企業再生ファンドによる出資など、市民、財界、行政が三位一体となって支援してクラブを再生。J1復帰を後押しした。しかし過去に何度も地元を裏切ってきたB1福岡に対し、福岡県協会はスポンサー獲得やチケット販売への協力に消極的。福岡市もホームアリーナの使用料減免は考えていない。神田社長は主要株主の了解を得て、全体の51%にあたるクラブの株式を2億円で売却し、資金ショートを回避したい考え。「4、5社から問い合わせがきており、双方の思いが合致すれば合意できそうな感触のところもある」と希望的観測を口にした。新オーナーには当面の資金援助だけでなく、地元からの信頼を取り戻す努力も求められる。

求められるのは継続的な経営努力だ

B1は上位チームの拡大路線が進んでいる。営業収入が10億円を超えたクラブは16-17年シーズンが2つ(大阪、栃木)だったのに対し、17-18年シーズンは6つ(千葉、三河、大阪、栃木、A東京、川崎)に増えた。リーグ自体の人気上昇に伴う収入増もあるが、大企業のバックアップを受けるA東京や川崎といった旧実業団勢が引き上げている側面もある。一方でBリーグは今回の資格審査で財務や施設基準をより厳しい目で見るようになっており、B2中地区で優勝を決めた信州が昨期末時点で債務超過があったとしてB1ライセンスを交付できなかった。今後は福岡のように大企業の後ろ盾がなく体力も弱い市民クラブの身の丈に合わない挑戦は難しく、B1定着はより困難になる。

求められるのは、Jリーグで経営危機を乗り越えてJ1で戦う大分や湘南のように、確固たる中長期的な計画を持ち、昇降格を繰り返しながらもファンやスポンサーを増やしていく継続的な経営努力だ。B1の壁にはね返されながらも地道に力をつけ、真の「地方の星」になるクラブが誕生したとき、Bリーグは一歩成熟したと言えるだろう。そのモデルケースに福岡がなることを願いたい。

末継智章

著者プロフィール 末継智章

西日本新聞社 運動部記者。 九州のスポーツ界を広く取材をしている。