しかし、eスポーツが流行語にもなった2018年に入ってからは、IPホルダー以外の企業がスポンサーになることも増え始め、ゲームのプロモーションから、純然たる広告効果が見込めるイベントとしての認識が高まってきた。その結果、非ゲーム系の企業からの協賛が増えてきているわけだ。そもそもリアルスポーツイベントやライブなどのスポンサーは、イベントとの親和性だけでなく、多くの人に伝える効果を見込んでいることも多く、まったく関係性のない企業による協賛がしばしば見られる。

昨年1月に開催された対戦格闘ゲームのeスポーツイベント「EVO Japan」では、日清食品のカップヌードル、エナジードリンクのRed bullが協賛。10月から12月にかけて行われた『モンスターストライク』のプロツアーである「モンスターストライクプロフェッショナルズ 2018」では、大正製薬のリポビタンD、カルビーのじゃがりこ、日本マクドナルドが協賛し、年末に行われた優勝賞金1億円で話題を集めた「Shadowverse World Grand Prix 2018」では、大塚製薬のポカリスエット、シャープのAQUOS ZEROなども協賛した。

会場では、『モンスト』とコラボしたじゃがりこが配布。

さらに驚いたのが、今年1月に開催された「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2018-2019」の決勝戦であるe日本シリーズに、実際にプロ野球にスポンサードしているSMBC(三井住友銀行)が協賛したことだ。
カップヌードルやエナジードリンク系は、ゲームプレイヤーと親和性がないわけでもないが、さすがに銀行とeスポーツを直接結びつけるのは難しく、eスポーツが単純に多くの人に注目され、そこで社名を出すことによりブランド力の向上効果があると言う考えがあったと推測できる。

さらに2回目の開催となった「EVO Japan」はNTTドコモや日産自動車、久光製薬、ベスト電器など、非ゲーム系の企業が激増。高校生が活躍するeスポーツイベント、全国高校生eスポーツ選手権やSTAGE:0でも、非ゲーム系の企業が多く参加しており、もはやeスポーツイベントはゲームのプロモーションの場であるとは言い難い状況にある。

優勝チーム埼玉西武ライオンズのメンバーと一緒に記念撮影に加わる三井住友銀行のマスコットのミドすけ。

さらにここに来てビッグニュースが飛び込んできた。『モンスターストライク』のオープン大会である「モンストグランプリ2019 アジアチャンピオンシップ」に世界を代表する企業、GoogleとTOYOTAの協賛が発表されたのだ。

Googleは「モンストグランプリ」の公式スマホ端末提供を行うとのこと。TOYOTAは昨年の「モンストグランプリ」でも、優勝チームへの副賞としてカローラスポーツを提供していたが、コラボカーの展示を行うなど今年から本格的な協賛を行う。
さらに驚きなのが、スポーツグラフィック誌のSports Graphic Number(文藝春秋)も協賛が決定した。Numberと言えば、言わずと知れたスポーツ誌のオーソリティ。これはeスポーツに広告価値があると判断したと同時に、Numberがeスポーツを取り上げるに値する競技だと言う判断をしたことではないだろうか。

各企業がeスポーツイベントに協賛する理由は、広告効果が見込めるだけでなく、参加する選手や応援する層が若いというところがある。若者の○○離れと揶揄される言葉があるように、多くのメディアやイベント、エンターテインメントなどは、若者が興味を示さなくなっており、若者向けの商品を扱っている企業や新規層の獲得が急務となっている企業にとっては、若者が集まる文化に興味があると言うわけだ。

協賛ではないが、日本プロ野球機構やJリーグはファンの年齢層が上がってきている。そこで、日本プロ野球機構やJリーグは、eスポーツリーグの開催をすることで、eスポーツを通じて野球やサッカーの認知を広げ、プレイヤー人口の拡大を狙っているようだ。

日本プロ野球機構が開催する『スプラトゥーン2』のeスポーツリーグ、「NPB eSPORTS SERIES SPLATOON2」のドラフト会議の様子。指名されたチームは、球団の選手としてリーグで競い合う。

eスポーツは、既存のスポーツファンからスポーツの定義を問われたり、ゲームをプレイすることで賞金や生計を立てる人へ嫌悪感を覚える人がいる現状がある。そういった層の多くは、中高年層であるわけで、eスポーツを楽しんでいる人たちの多くは若者が中心であり、中高年の理解が得られない分、余計なノイズの入らない純粋な若者文化であると言える。したがって、購入層やファン層などの若返りをはかりたいと感じている企業にとってeスポーツは、格好のアピール場として魅力のあるものに映っているのかも知れない。

今後ますます非ゲーム企業がeスポーツに協賛してくると考えられる。ただ、これらのスポンサーはeスポーツと親和性がそれほど高くないだけに、広告効果や若者の興味が得られないと判断したら、早々に撤退してしまう可能性もあります。そうなると一過性のブームで終わってしまうのが唯一の懸念ではないだろうか。
現状では複数のゲームタイトル、複数の企業がeスポーツイベントを開催しており、個々にeスポーツを発展すべく努力を重ねているので、簡単に撤退するようなことにはなりにくいだろうが、そこは今後の展開次第だ。

多くのスポンサーが集まり、協賛金が増えてきている今こそ、eスポーツイベントに参加する選手やそれを視聴するオーディエンスに対する待遇を向上し、よりクオリティの高いイベントを行うかが、継続して協賛してもらえる鍵となるのではないか。

岡安 学

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