大阪で23日に来日会見、24日に公開練習を実施
パリのスター軍団が、大阪のファンをさっそく熱狂させている。フランスから7月23日にまず大阪入りすると、府内のホテルで記者会見を行い、ルイス・エンリケ新監督、ブラジル代表DFのマルキーニョス、新加入したスペイン代表FWアセンシオ、フランス代表DFリュカ・エルナンデスが登場した。
昨年に続いて来日したマルキーニョスが「去年に引き続き日本に来られて嬉しい。昨年は日本で良い準備が出来た。今年もそうしたい。日本の文化を楽しみたい」と来日の喜びを伝えれば、東京オリンピックの準決勝で日本代表を相手に決勝ゴールを決めたアセンシオは「個人的には4回目の来日。準決勝は私のキャリアの中で忘れられない試合。日本に勝ったことで銀メダルを獲得できたので素晴らしい思い出」と日本への帰還を楽しむコメントを残した。
また、リュカ・エルナンデスはドイツ王者バイエルン・ミュンヘンからの移籍で、ドイツ・ブンデスリーガに数多く在籍する日本人選手たちの印象を問われ「確かに、これまで色んな日本人選手たちとたくさん対戦しました。とても力強く、いつも全力を尽くして真面目にプレーします。いつも向上心に溢れている」と長めのコメントで持ち上げてくれた。一方で、エムバペ不在について問われたマルキーニョスは「エムバペは非常に優れた選手。このことは経営者が決めること。もちろん我々は優れた選手とプレーしたい。できるなら、今シーズン一緒にプレーしたい」と言葉を選びながら答えていた。
やっぱりネイマールの活躍に期待
リュカ・エルナンデスは2018年ワールドカップロシア大会の優勝メンバー、アセンシオもレアル・マドリーでレギュラーではなかったものの数々のタイトル獲得に貢献してきている。そして、さらには韓国期待の星イ・ガンインもPSGに移籍してさっそく来日している。イタリア代表の守護神ジャンルイジ・ドンナルンマ、昨年のワールドカップカタール大会でベスト4入りに貢献したモロッコ代表DFアクラフ・ハキミ、他にも強豪国の代表選手たちが在籍するPSGだが、それでもどうしても昨年のツアーと比べるとやや見劣りしてしまう。
メッシが昨シーズン終了後に退団し、キリアン・エムバペは契約問題でツアー直前に日本行きから強制離脱。エムバペを中央に配置した、ツアーのポスターに刻まれている「全員、超人。-再び」が、どうしてもむなしく見えていた。
それでも、PSGにはまだあのスーパースターが残っている。ブラジルの至宝ネイマール。
怪我がちなところや私生活の乱れなどから、PSGのサポーターから愛想を尽かされて、ブーイングを浴びせられてしまっていた。そして、このシーズンオフの間にチームからの放出の噂も出たが、最終的にネイマール本人が残留宣言したことで一旦は移籍騒動は収束した。来日記者会見で映されたツアーポスター画像もネイマールが真ん中に配置されていた(※エムバペ問題とは別に元々用意されていた)。
そのネイマールも、当初は怪我の影響で日本に来ないのでは、とも言われていた。しかし、なんとか無事に来日。ファンをひとまずホッとさせてくれている。
公開練習での声援の9割はネイマール
24日に行われた公開練習では、18時半過ぎに選手たちがフィールドに登場すると大歓声が挙がった。全員で行うボール回し、サイドからクロスボールに合わせるシュート練習など、プレーの一つ一つに沸いた。そして、集まった観客の中には多くの子供たちがいた。子供たちから選手たちの名前を叫ぶ声が、練習中ずっと響き渡った。中でも圧倒的に叫ばれていたのがネイマールだった。声援の9割がネイマールといっていいくらい、ずっとネイマールを呼ぶ子供たちの声が響いていた。残りの1割は、ハキミ、マルキーニョス、ドンナルンマがやや目立ち、他の選手もたまに呼ばれていた。
公開練習に姿を現したネイマール 子供たちの熱狂する声に気を良くしたのか、ネイマールは客席に何度か振り返っては手を振った。ただ、怪我明けで本当に試合に出場するのか。練習前には一部の報道陣たちから懐疑的な声が聞こえていた。
しかし、ネイマールは公開練習では軽快に動いて、サイドから綺麗なクロスを上げれば、ゴール前でセンタリングに合わせてシュートを放つなど怪我の影響を感じさせなかった。全体練習が終わった後に、選手6、7人たちがフリーキックの練習を行った。そこでもネイマールは何度も蹴って、ボールの感触を確かめているようだった。
本日対戦するアル・ナスル所属のクリスティアーノ・ロナウドとは、ネイマールがFCバルセロナ時代にクラシコで何度も対戦しており、ロナウドがサウジアラビアに移籍した直後の今年1月にあったPSGとサウジアラビアオールスターチームとの親善試合以来、半年ぶりの対戦となる。昨シーズン不完全燃焼だったネイマールにとっては、新シーズンに向けて意気込みを見せられる格好の相手。エムバペ不在を吹き飛ばす様なブラジルのエースたるプレーに期待したいところ。
ところで、来日直前に自宅侵入の強盗被害に合ってしまったドンナルンマも、精神的なショックはまだあるだろうが、ひとまずはキーパー練習では軽快に動き、ファンの声援にも応えていた。
ファンたちの声「ネイマール見られて良かった」「エムバペいなくて残念」
公開練習を見に来たファンたちの声をざっと紹介する。
「一番好きなのはエムバペだったので、来なくて悲しかったです。だから今日はネイマールに声援を送りました。明日の試合のチケットは取れませんでしたが、練習姿が見られて楽しかった」(姉2人、母親と一緒に見に来ていた寝屋川市在住の男子中学生)
「PSGのファンです。好きな選手は(4人とも声をそろえて)ネイマール!今日の練習が当たって見に来ました。試合は当たらなかったので見に行けないです。エムバペが見たかったので悲しい。(他に好きなのは)マルキーニョス、アセンシオ。PSGが大阪に来てくれてめっちゃ嬉しい。また来て欲しい」(兵庫県三田市在住の男子小学生3兄弟、宝塚市在住の男子小学生の計4人組)
「(PSGで応援しているのは)イ・ガンイン!アジア人の代表としてがんばってほしい。(PSGが好きな理由の一つは)ゲームで選んでいるので」(大阪市在住の男子中学生)
「海外サッカーを見るのが好きで、子供たちと来ました。公開練習のチケットは買ったんですが、試合のチケットは取れなかったので見に行けないです」(上記男子中学生の父親)
「海外サッカー全般が好きで今回来ました。エムバペが来ていないのは残念ですが、ネイマールやアセンシオを見たくて来ました。エムバペがいないから不満ってことは無いですね。ただ、試合は残念ながら都合が付かずに行けないです」(堺市在住で夫婦で見に来ていた男性)
「バルセロナの頃からのネイマールのファンで、今回公開練習に来ました。エムバペも期待していたので、残念です。試合はチケットが値上がりしたので諦めました。昨年も高かったですけど、もう来ないかなと思って買って見に行ったんですが、今回は遊ばれてると思って、買うのをやめました。もう少し安かったら、全然行ったんですが。それにネイマールが怪我で来ないかもとの話もあったので、その状況で高額なチケットを買うのはどうかなと思って控えました」(友人と一緒に来ていた東大阪市在住の女性)
外国人ファンも集結
また、公開練習の観客には外国人も多く見られた。奥さんが大阪出身というアメリカ人男性は大阪への一時帰国のタイミングで家族と練習を見に来た。「日本でもアメリカでもサッカー観戦していて、子供もサッカーをやっているので、PSGの練習を見に来ました。ただ、25日の試合は見に行かずに阪神タイガースの試合観戦に行きます(笑)」
他にも、中国人留学生の男女7人組が、帰りのバスの中で、お互いに撮影した写真や動画を確認しあっていた。
選手たちが滞在するホテルにもファンが集結していて、ここでも多くの外国人ファンたちを見かけた。
大阪在住のブラジル人女性は、ブラジルから旅行で来日している親族も引き連れ、総勢7人で出待ち。同胞の英雄、ネイマールやマルキーニョスが登場した時は、親族一同でポルトガル語でチャントを歌って声援を送った。スマホでもしっかり映像を収めていた。また、大阪に昨年11月から留学しているという中国人男性は、デビッド・ベッカムが在籍して以来のPSGファンで、ホテルの前で計6時間近く出待ちし、ネイマールからユニフィームへサインを書いてもらった。
ジャパンツアーが終了するまで、当分ファンたちの狂想曲は続きそうだ。
写真:大塚淳史 撮影