MLB CUPは、2016年にリトルリーグのマイナー部門(小学校3〜5年生)全国大会として創設された大会が前身。2025年からはカテゴリーが拡⼤し、新たに全5団体所属の小学校6年生以下の選手が出場できる” 新生MLB CUP”として生まれ変わった。従来の大会は「MLB CUP -マイナー部⾨-」へ名称変更し、引き続き開催されている。
かつては小学生硬式野球リーグの垣根を越える大会として「アンダーアーマーカップ」(2010年〜)が存在していたが、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止となり、以降開催されていない。そうした背景を踏まえると、今年のMLB CUPは 久々に実現した“リーグ横断の全国大会” という大きな意味を持つ。
各リーグは独自ルールがあるものの、MLB CUPではWBSC(世界野球ソフトボール連盟)のルールをベースに、各団体の代表者が協議して統一ルールを策定。出場チームにとっては、普段と異なる条件での試合となり難しさもあるが、それがまた選手たちの成長を促す舞台となっている。
大阪柴島ボーイズが記念すべき初代王者に
記念すべき第1回大会を制したのは、ボーイズリーグ代表の大阪柴島ボーイズ(柴島ボーイズ。準優勝は同じくボーイズリーグの勝呂ボーイズ、第3位には北関東リトルリーグと稲沢中央ボーイズが入った。結果として、ボーイズ勢の強さが際立つ大会となった。
優勝を果たした柴島ボーイズのキャプテン眞野怜くんは、ファイナルラウンドだけで2本塁打を放ち、優勝に大きく貢献。決勝戦では、9回2アウトまで3-4と1点ビハインドという土壇場の状況から同点に追いつき、延長7回のタイブレークの末8-4と逆転勝利。劇的な展開で初代王者に輝いた。
眞野くんは試合後、「タイブレークに⼊った瞬間も、負ける気はしなかったです。チームのメンバーと“やったる!”という気持ちで挑みました。優勝できて、本当にうれしい!のひと⾔です」と喜びを語った。
”現代の子どもに合わせた指導”を掲げる眞野監督の哲学
チームの指揮を取る眞野剛監督は、普段から「メンタルを崩さないこと」を最も大切にしているという。
「子どもの頃にメンタルが潰れてしまうと、将来の可能性を閉ざしかねない。まずは褒める。エラーをしても責めない。叱るべきときは叱ってあげることも大切だが、その日のうちに課題に変え、前向きな気持ちで終わらせることを意識している」
チームを優勝に導いた大阪柴島ボーイズの眞野剛監督 ™/© 2025 MLB かつての”根性論・厳しさ一辺倒”の指導が当たり前だった時代とは違い、今の子どもたちには寄り添い型のアプローチが欠かせない。理解はしていても、実際に体現できる指導者はまだ多くない印象だ。
その意味で、眞野監督のスタイルは、これからの少年野球における新しい指導のあり方を示していると言える。
ホームランダービー&PLAY BALL – MLB流“楽しさ”を詰め込んだ企画
開会式では、MLB CUP名物のホームランダービーが行われた。今回はMLB CUP -マイナー部門-の第1回大会に出場し、現在オークランド・アスレチックス傘下に所属する森井翔太郎選手がゲスト登場し、デモンストレーションを披露した。未来のMLB選手の姿に、子どもたちは目を輝かせていた。真剣な大会に中にも遊び心あるプログラムを盛り込んでいるのもMLB主催大会ならでは。
豪快なバッティングを披露した森井翔太郎選手(オークランド・アスレチックス傘下)™/© 2025 MLB さらに、MLB CUPと同時開催で、野球未経験〜経験の少ない小学生(1〜4年⽣)を対象にした野球体験イベント「PLAY BALL」も開催された。PLAY BALLは年間を通して各地で開催されており、メジャーリーグOBが講師を務める豪華な野球教室として人気のプログラムだ。
今回は、マック鈴木さん、五十嵐亮太さんに加えて、現役メジャーリーガーの小笠原慎之介選手(ワシントン・ナショナルズ)も参加。プロ選手から直接指導を受けられる機会はひと昔前ではほとんどなかった。こうした取り組みはMLB Japanの積極的な普及活動の成果と言える。
野球教室を行う小笠原慎之介投手(ワシントン・ナショナルズ)™/© 2025 MLB日本球界に訪れる追い風をどう生かすか
大谷翔平選手をはじめ、多くの日本選手がMLBの舞台で躍動する今、MLBへの注目度は過去にないほど高まっている。
MLB CUPやPLAY BALLといった取り組みは、単なるイベントにとどまらず、子どもたちが野球に触れ、楽しみ、続けていくための大切な入り口となっている。
この好機を、野球界全体がどこまで普及促進につなげていけるのか。新たな一歩を踏み出したMLB CUPは、その未来を占う存在となりそうだ。