三笘薫選手の後輩らが躍動

 第2回となる大会の目玉だったのが、MVP選手へのW杯北中米大会の観戦チケットの贈呈。日本代表のグループリーグ第1戦であるオランダ戦の観戦チケットが用意された。ハイセンスグループ(中国語名:海信集団)がW杯のトップスポンサーであることから実現した。

 朝から小雨が降る中で行われた大会だったが、子どもたちはピッチ上で熱く元気に駆け回った。まず12チームを3チームずつ4ブロックに分けて予選リーグを行い、その後は順位トーナメントが行われた。目を引いたのが、参加チームの個々の選手の見事な技術や組織的な動き。地域大会ではあるが、ハイレベルな見応えのある試合が多かった。

 優勝は川崎フロンターレU12チームだった。MVPには新小学5年生の福原暖太くん(横浜市青葉区)と山口堂真くん(川崎市宮前区)の2人が選ばれ、W杯の日本対オランダ戦のチケットをプレゼントされた。

 小柄ながら鋭いドリブルで魅せていた福原くんは「MVPが取れて嬉しい。チャンスを作れて勝利に貢献できて良かった。W杯は今まで現地で見たことがないのでめっちゃ楽しみですし、三笘選手のドリブルを見てみたい」と笑顔。そして、将来について聞くと「プロサッカー選手になって、今回見に行く舞台に立って得点王を獲りたい」と夢を語ってくれた。

 また、攻守で冷静なプレーを見せた山口くんも「MVPを最初は取れないと思っていたけど、自信を持ってプレーしたら、(MVPとして)名前が呼ばれて嬉しかった。現地ではしっかりプレーを見て、同じポジションの選手とか、周りの選手たちがどう動くのかを見てみたい。三笘薫選手がこの間(ハイセンスカップ前日に行われたイングランドとの親善試合)決めたすごいゴールを何度も見てみたい」と話した。

 2人の憧れの選手はやはり三笘選手。川崎フロンターレのアカデミーでプレーし、その後はトップチームでもプレーしてヨーロッパへと羽ばたいていった。そして、今や日本代表の攻撃の中心選手となっている。

 山口くんは10歳から川崎フロンターレのアカデミーに所属しているが、その前は三笘選手と同じく、さぎぬまSCでプレーしていた。当時、三笘選手に一度だけ会ったことがあるという。「優しかった」と当時を振り返った。

MVPに輝いた福原くん(左)と山口くん(右)

柿谷さん、ウンパルンパさんが子どもたちの前でテクニック対決

 大会後には、柿谷さんとウンパルンパさんによるイベントが行われ、子どもたちの前で2人が技術を披露して競い、子どもたちから大歓声が起こっていた。

 大会の決勝戦をピッチ脇から解説していた柿谷さんとウンパルンパさんは、子どもたちのレベルの高さに驚いていた。

「(今の)小学生がサッカーが上手いのはわかっていたけど、戦術的というか、ポジションを取り直したり、相手の動きを見てプレーをやめたり、日本代表が強くなるのも納得だと思いました」(柿谷さん)

「自分が小学生の頃からやっているサッカーとはまるで違う。後ろから蹴らずに繋いでいく」(ウンパルンパさん)

 そして、今大会の目玉の一つであるMVPに贈呈されるW杯観戦チケットについて、柿谷さんは「W杯の雰囲気だったり空気感というのは、生で見るという意味では、(プロ選手を目指す)彼らの今後にかなり活きるはず」と話した。

 2カ月後に迫るW杯は、柿谷さんもウンパルンパさんも現地観戦の予定だという。

 特にウンパルンパさんは大会期間の1カ月半をずっと現地滞在する予定という。その理由には前回のカタール大会での後悔がある。

「前回大会は自分の影響力を使って盛り上げられなかった。現地にも行けませんでしたし。今大会は生の声を届けて動画にして、今アメリカは(物価など)高いですし、飛行機代も高い。仕事で忙しくて現地観戦できない人は、僕の動画を見て(現地に)行った気分を味わってほしい」

地域に貢献するハイセンスジャパン

 それにしても驚かされるのが、川崎市での小規模な大会を世界的企業のハイセンスが主催して、サッカーW杯の観戦チケットも用意するという破格ぶりだ。なぜここまでするのだろうか。

 ハイセンスは1969年に中国の山東省青島市で、主にラジオの生産工場として創業した。その後、テレビの生産へと移行し、2000年代にはエアコン、冷蔵庫なども含めた白物家電を生産する中国を代表する家電メーカーへと成長していった。2010年代に入ると日本を含む海外市場への進出を積極的に推進していき、今ではグループ全体として世界中で約10万人以上の従業員が働き、30カ所の研究開発センター、36カ所の生産拠点、64カ国に支社を持つグローバル企業と変貌している。

 ハイセンスジャパンは2010年に設立され、本格的に日本市場へと入った。日本国内において大きな飛躍のきっかけとなったのが、2018年に東芝のグループ傘下で、テレビ事業を担った東芝映像ソリューションを買収したこと。人気テレビブランドだったREGZA(レグザ)を傘下に収め、それまでハイセンスのテレビは低価格帯から中価格帯が主力だったが、高級ブランドであったレグザをラインナップに加えたことで、日本市場への深耕が進んでいった。また、買収に伴い、ハイセンスジャパンは本社オフィスを東京から川崎市へと移した。この移転が結果的に、川崎市でのハイセンスカップ開催へとつながっていった。

 また、ハイセンスはグローバル展開していく過程で、スポーツ、特にサッカーでのスポンサードを積極的に行うようになっていった。ヨーロッパのクラブチームのスポンサーであったり、ヨーロッパ選手権(EURO)のスポンサー、そしてW杯はロシア大会から、中国の家電ブランドとしては初めてオフィシャルスポンサーになり、今大会で3大会連続となる。W杯は今大会から史上最多の48カ国に拡大している。スポンサー企業にとってその効果は絶大だろう(もちろん、そのアクティベーション次第ではあるが)。

 一方で、ハイセンスジャパンでは地域貢献を意識した活動も行っている。神奈川県を代表するプロ野球団であるDeNAベイスターズの公式スポンサーを2023年から務めているほか、今回のハイセンスカップといったスポーツ大会を主催したりとスポーツを通じた地域貢献を行っている。地道な活動ではあるが、外資系企業が地域に受け入れてもらう手段として最適だろう。

 ハイセンスはスポーツの持つ力をグローバルでもローカルでも活かしていき、ブランド力を高めていっている。


大塚淳史

著者プロフィール 大塚淳史

スポーツ報知、中国・上海移住後、日本人向け無料誌、中国メディア日本語版、繊維業界紙上海支局に勤務し、帰国後、日刊工業新聞を経てフリーに。スポーツ、芸能、経済など取材。