2016-2017シーズンを締めくくる大会

 フットサルの全日本選手権は、サッカーの天皇杯に相当する大会だ。大会は47都道府県の予選から始まり、全国9地域の予選を勝ち抜いたチームが、Fリーグクラブの待つ全国大会の出場権を得る。Fリーグが創設されて10年が経ち、Fリーグクラブと地域代表クラブの力の差は大きくなってきた。しかし、今大会では地域代表クラブがFリーグクラブを破るジャイアントキリングが起こるかもしれない。

 今大会には、名古屋オーシャンズサテライト(東海1/愛知)、ペスカドーラ町田アスピランチ(関東1/東京)、府中アスレティックFCサテライト(関東2/東京)というFリーグクラブの下部組織3クラブが、地域代表クラブとして出場するからだ。

 Fリーグができるまでは、全日本選手権が若い才能が発掘される場所だった。地方代表のチームとして出場した選手が全日本選手権で活躍し、当時、日本代表選手が集まっていた関東リーグのクラブに加入していくという流れがあった。しかし、今は若い才能はセレクションを受けてFリーグクラブの下部組織に入っていくことが多い。言い返ると、未来のFリーガー、フットサル日本代表予備軍が、現在トップレベルで活躍している選手・チームに挑むのだ。

国内無冠の可能性がある名古屋オーシャンズ

第22回全日本フットサル選手権大会日程・結果©futsalx

 最もジャイアントキリングを起こしそうなのは、グループBの名古屋オーシャンズサテライト(東海/愛知)だ。東海リーグで史上初の全勝優勝を飾り、地域チャンピオンズリーグも圧倒的な強さで制したチームは、決勝トーナメント進出を目指している。名古屋のトップチームでも試合に出ているFP平田マサノリは負傷のため欠場となるが、130キロの弾丸シュートを放つFP大薗諒、U-20フットサル日本代表候補選手4人と、Fリーグの下位クラブ以上にタレントを擁している。実際に同グループのアグレミーナ浜松(静岡)とは、練習試合でも引き分けており、初戦の府中アスレティックFC(東京都)戦の結果次第では、Fリーグの2クラブと同居したグループステージを突破する可能性もある。

 また、今大会は5月に開催される第1回U-20AFCフットサル選手権に出場するU-20フットサル日本代表候補選手にとっては、最後のアピールの場になる。その点で言えば、注目は、グループDだ。U-20日本代表のキャプテンであるFP清水和也を擁するフウガドールすみだ(東京)、GK坂桂輔、FP小幡貴一を擁するエスポラーダ北海道(北海道)、FP伊藤圭汰、FP中村充を擁する町田アスピランチと、若き日の丸戦士たちの直接対決が見られる。

 さらにグループEでは、初めてFリーグのタイトルを逃し、グループステージから全日本選手権に出場することになった名古屋オーシャンズ(愛知)がいる。チーム史上初めて国内無冠でシーズンを終える可能性がある名古屋は、2大会ぶりのタイトルと自らの誇りをかけて、高いモチベーションで今大会に臨んでくるだろう。

 いくつかの注目点を挙げてきたが、今大会の一番の見どころは、日本フットサル界を支えてきた選手たちの現役最後の姿が見られることだ。カスカヴェウ(現ペスカドーラ町田)を創設し、左足から繰り出す華麗なパスで多くのファンを魅了してきたFP甲斐修侍。元Jリーガーで、フットサル日本代表の守りの要として活躍、口咽頭がんを患いながらも根治させて現役に復帰したデウソン神戸の闘将FP鈴村拓也。フットサルW杯に3度出場し、木暮賢一郎とともにキャプテンを務めた2012年大会で、最高成績のベスト16進出を果たしたFP小宮山友祐。2012年のW杯に出場し、シュライカー大阪の中心選手として多くのタイトルを獲得してきたFP村上哲哉。Fリーグでも指折りの身体能力を誇り、圧倒的なフィジカルの強さを生かし、重要な場面でゴールを量産するフウガドールすみだFP太見寿人。この5選手は今季限りでの現役引退を表明しており、選手としてプレーする姿を見られるのは、今大会が最後になる。

 芽吹きつつある新たな才能を目撃し、これまで日本フットサル界を支えて来たベテランの最後の雄姿を目に焼き付けよう。


河合拓

2002年からフットサル専門誌での仕事を始め、2006年のドイツワールドカップを前にサッカー専門誌に転職。その後、『ゲキサカ』編集部を経て、フリーランスとして活動を開始する。現在はサッカーとフットサルの取材を精力的に続ける。