文=松原孝臣

歯止めがきかないスキー・スノボ人口の激減傾向

 スノースポーツの危機が言われるようになって久しい。

「レジャー白書」の2014年版の調査では、スキー・スノーボードを合わせた人口は、ピークであった1998年には約1800万人いたが、2013年には約770万人と、半分以下に大幅な減少が見られる。

 利用者が減少したことは、各方面に影響を及ぼした。スノースポーツにかかわる企業の業績に響いたし、それはスノー競技にも影響した。スポンサードの力が弱まることで、選手の強化・活動費に響いたのである。

利用者が減ったから、各地のスキー場も経営が苦しくなった。2000年以降、休業や廃業が目立つようになり、2005年からは毎シーズン、二桁を数えるようになっていった。

 その中にあって、スキー場運営を専門に手がける会社も誕生し、一定の成果を収めてはいるが、全体の流れを変えるには至っていない。

 やはり、多くのスキー場が成り立ってこそ、スノースポーツの低下傾向を食い止めることができる。

 では、どのような方策が考えられるか。 

 一つは、スキーやスノーボードができなくても楽しめる環境作りだ。すでに各所で実施されているものもあるが、スノーシューを履いてのトレッキングや、スノーモト・スノースクートという自転車に似た乗り物での遊び、ソリやタイヤチューブでの滑りなどがあげられる。スキーやスノーボードができなくてもできる遊びをさらに充実させることは、スキー場に人を呼び込むための工夫になる。

世界一の雪質を売りに海外から客を呼び込んだニセコ

©共同通信

 海外から客を呼び込むのも考えられるだろう。

 一概にそのまま参考にはできないが、その点で最も進んでいるのは北海道のニセコである。ニセコのスキー場は、「外国人の方が圧倒的に多い」と言われるほど、スキーシーズンには海外から訪れる。飲食店やショップなどで働く海外の人も多い。

海外での評価はきわめて高く、「ワールド・スキー・アワード」のリゾート部門でニセコは1位に選ばれ、ホテル部門で1位となったホテルもあるほどだ。

それだけ海外でも人気となったのは、世界一とも評される雪質があるからだ。だからそのまま参考とするわけにはいかない。

ただ、ニセコでは、もともとはオーストラリアそして欧米で火がついたが、近年はアジア諸国から来る人も目立っている。

北海道ツアーがアジアの人々に人気である理由に、「雪」がある。雪の降らない地域の人にとっては、雪そのものが魅力となる。だから、ニセコのような雪質ではなくても、開拓の余地はある。
 
オールシーズン、人が呼び込めるようなサービスも意味がある。雪がなくなれば、緑の多い環境のスキー場は多い。春夏秋、それぞれに人を集めるアクティビティや観光が考えられる。それを実践しているところは少なくない。
 
また、子供向けのサービスも大切だ。子供向けの遊び、スキー教室、さらに時間を楽しく過ごせる娯楽があれば、また来たいと思う。その中から、スキーやスノーボードに取り組む子供たちも出てくる。

 裾野からもう一度盛り上げることで、全体の活性化も図れる。そのためには、スキー場に未来があることも、重要となる。


松原孝臣

1967年、東京都生まれ。大学を卒業後、出版社勤務を経て『Sports Graphic Number』の編集に10年携わりフリーに。スポーツでは五輪競技を中心に取材活動を続け、夏季は2004年アテネ、2008年北京、2012年ロンドン、2016年リオ、冬季は2002年ソルトレイクシティ、2006年トリノ、 2010年バンクーバー、2014年ソチと現地で取材にあたる。