熾烈な2位争いが続く西地区、大阪エヴェッサは根来新之助の奮闘で先行するも、後半にシーホース三河の猛反撃を浴びて沈む
『走れるビッグマン』根来が桜木とのマッチアップを制す B1は終盤戦を迎えている。第24節を終えて、シーホース三河は35勝10敗で西地区の首位に立ち、1位抜けが濃厚だ。大阪エヴェッサは22勝23敗で3位につけているが、2位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズから琉球ゴールデンキングス、京都ハンナリーズまで4チームが1勝差という大接戦。大阪はそんな激しい2位争いの渦中にいる。 両チームともに外国籍選手のオン・ザ・コート数「1」で迎えた第1クォーターは、大阪の流れになった。大阪の桶谷大ヘッドコーチは功労者として根来新之助の名を挙げる。「根来は今日ドライブがかなり良かった。(桜木)ジェイアールに対してスピードでアタックしていた」 195cmの『走れるビッグマン』根来は、昨年11月5日の琉球戦で負傷(腓骨筋腱脱臼)し、復帰からまだ1カ月ほど。ただ「手術をした理由はチャンピオンシップに行くため」と言う彼が、25日は攻守両面で奮闘した。 彼は桜木とのマッチアップをこう振り返る。「ボールを持たせたら相当怖いので、ボールを持たさないところが戦いだと思っていた。そこがファイトするところだったし、第1クォーターはうまく行った」。彼は25日の三河戦に限れば高さ、上手さ、経験値とすべてを持つ相手に対して上回るプレーを見せた。第1クォーターは根来が11得点という大当たりを見せた一方で、桜木は3アシストを決めたものの0得点。そんな奮闘もあって大阪が23-20とリードして第1クォーターを折り返す。 オン・ザ・コート「2」の第2クォーターも流れは変わらない。三河はギャビン・エドワーズが10分間に10得点を挙げる活躍だった。ただ、根来が引き続いて好調で、ジョシュ・ハレルソン、リチャード・ロビーといった外国籍選手もバランス良く得点を重ねた大阪がリードを保ち、38-36で前半を折り返した。 第3クォーター、インサイドの守備を立て直した三河が反撃 しかしハーフタイムが明けた第3クォーターに、流れが一変する。三河の鈴木貴美一ヘッドコーチは守備面の修正をこう振り返る。「前半は(インサイドに対する)ヘルプを全然していなかったので、しっかりヘルプしようということだった。ポジションも悪くて(リバウンドを)拾われすぎていた。3ポイントシュートを気にするあまり広がっていたので、もう少しボールの方にディフェンスが寄らなければいけないという指示をした」 インサイドへ切れ込む大阪のアタックに対して、前半は三河の対応がルーズだった。比江島慎もこう口にする。「根来さんのところに、しっかり3人目のヘルプが寄るということを話し合った。(中から外への)キックでもスイッチすることを意識しました」 「まず良いディフェンスをして、ディフェンスリバウンドも取れた。それから走れた」と鈴木ヘッドコーチが振り返るように、三河が速攻で大阪を圧倒した10分間だった。41-43のビハインドから18点のランを見せて一気に突き放すと、三河はそのまま68-48と20点までリードを広げて第3クォーターを終える。 大阪の桶谷ヘッドコーチはこう悔いる。「第3クォーターはあまりパスが回らずに、ポンポンと外打ちになってしまった。それが決まったらよかったんですけれど決まらなくて……。ハレルソンをX(エグゼビア・ギブソン)と変えたら、インサイドアウトが出なくなったし、エドワーズの脚力で走られた。エドワーズを止めないといけないところで、ヘルプに行って外にキックされて3ポイントシュートでやられる構図だった」。 機動力のあるエドワーズが速攻の先陣を切り、相手の守備を巻き込む。そして『ヒエカナ』の2人が気持ち良くシュートを打っていた。この10分間で三河は3ポイントシュートを「7分の6」の高確率で決めている。そのうち5本を決めたのが『ヒエカナ』の2人。比江島は12点、金丸晃輔は11点という荒稼ぎだった。第3クォーターのスコアは32-10。この10分間で試合が決したと言っていい。 西地区首位を独走する三河、今日勝てば地区優勝が決定 第4クォーターも三河がリードを保ち、89-66と快勝している。三河は比江島が23得点を挙げてポイントリーダーになり、金丸も18得点。またエドワーズが15得点6リバウンドという数字以上の貢献を見せた。 桶谷ヘッドコーチはこう述べる。「1クォーター、2クォーター、4クォーターとしっかり戦えているのに、一つのクォーターで流れを一気に持って行かれる。自分たちのやるべきことを40分間やり通せなかった弱さ、平常心でプレーし続けられなかった弱さが課題だと思う。ただ一生懸命ハードワークしているところはある。それにプラスしてソリッドに、賢く、自分たちのやるべきことを明日40分やり通さなければいけない」。熾烈な2位争いに向けて、大阪は教訓をすぐ生かす必要がある。 三河は早ければ今日にもチャンピオンシップ進出、さらには西地区の優勝が決まる。地区優勝はもはや決めたも同然だが、ここで決めればリーグ最速となりそうだ。ただし金丸は「全体の勝率でホームアドバンテージとかが決まるし、残りの14試合も落とせない」と気を引き締める。クォーターファイナルは地区1位ならばホームで開催できるし、ファイナルの開催も中立地だ。ただし「セミファイナルの開催地」を確実に勝ち取るためには、「18チーム中2位以上」を確保する必要がある。 三河と大阪、立場は違うが緊張感のあるシーズン大詰めを迎えていることに変わりはない。チャンピオンシップを視野に入れた戦いが続く。
文=大島和人 写真=B.LEAGUE