世界ランク1位を陰で支える日本人トレーナーの話
◇米国女子◇ANAインスピレーション 初日(30日)◇ミッションヒルズCC(カリフォルニア州)◇6763yd(パー72) 世界ランキング1位のリディア・コーは今季、ある日本人男性をトレーナーとして迎えた。工藤健正(くどう・たけまさ)さん、35歳だ。米国を主戦場とする宮里美香のトレーナーを2015年から務めるほか、昨年後半からの野村敏京に加え、コーのケアも並行して行うことになった。 「ケガはつきもの」と言われるアスリートが最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、最適なトレーニング法とケアを提供するのがトレーナーの仕事だ。今大会の会場では、練習ラウンドをする選手の傍らで、キャディとともにコース内を歩く工藤氏の姿があった。「これも仕事のひとつ。コースのアンジュレーション、芝の感触を自らの足で確かめながら、歩いている選手の身体のどの部分に負担がかかるかを把握して、ラウンド後のケアに生かしている」という。 コーは、工藤氏を起用した理由をこう話した。「ミカを担当していることは知っていたし、彼女からもタケ(工藤氏)の話を聞いていた。一度スポットで施術を受けたとき、すごく効果を感じたの。身体全体をものすごく理解していて、本当にプロフェッショナルな仕事をするんだなあって。選手の状態を見ながら適切なアドバイスとケアをしてくれるのはもちろん、人柄もGOODなのよ」。 工藤氏は身長180cmの恵まれた体格を生かし、高校時代は柔道に明け暮れた。自身もケガや故障が多かったことから、トレーナーになると決意。専門学校で2年間、その後、鍼灸(しんきゅう)を3年間学んで腕を磨いた。現在、トレーナー歴18年目のベテランだ。過去には女子プロゴルファーの諸見里しのぶ、プロテニスプレーヤーの松井俊英さん、澤柳璃子さんらのトレーナーも務めた。 選手とともにツアーを転戦し、試合のない週に日本の自宅に戻る生活は3年目になる。家族の理解と協力なしには実現できなかったことだ。 世界ランク1位の選手から指名を受け、サポートすることに重圧や気負いはないのか、という質問をぶつけてみた。「ゴルフの実力は、自分にとっては何の関係もありません。それぞれの選手にふさわしいこと、コンディションに応じて自分にできることを精一杯やるだけです」。 工藤氏の周りに国籍問わず選手、キャディらが自然と集まるのは、コーの言う“人柄”ゆえだろう。選手にスポットライトが当たる陰で、懸命にサポートする日本人トレーナーの活躍になんとも誇らしい気持ちになる。(カリフォルニア州ランチョミラージュ/糸井順子)
ロープ際で選手の様子をうかがう工藤健正トレーナー