文=浅田真樹

若手の台頭がおもしろいJリーグ

 5月20日に開幕するU-20ワールドカップ(韓国)の組み合わせが決まった。

 グループDに入った日本は、一次リーグで南アフリカ、ウルグアイ、イタリアと対戦する。なかなか厳しいグループに振り分けられたが、言い換えれば、各大陸を代表する強豪国に対し、日本の若い選手たちがどんな戦いを見せてくれるか、非常に楽しみな組み合わせでもある。

 すべての出場国が出そろい、組み合わせも決まったことで、選手たちもこの大会をより具体的にイメージしやすくなっただろう。と同時に、出場資格のある選手、すなわち1997年以降生まれの選手にとっては、日々の試合やトレーニングに取り組むうえで、U-20ワールドカップが大きなモチベーションになっているに違いない。

 昨秋のアジア予選(アジアU-19選手権)を経験した選手は、当然、自分たちの手で勝ち取った世界大会行きのキップを他の選手に渡したくはないだろう。逆にアジア予選ではメンバーから漏れた選手の中にも、世界大会では絶対に自分が代表メンバーに入るんだという強い気持ちを持っている選手が少なくないはずだ。

 だからこそ、アジア予選で活躍した選手がどれだけ成長しているか。あるいは、アジア予選には出場していなかったが、一冬越して新たに台頭してくる選手はいないのか。そんなことを気にしながら、2月の開幕以来、Jリーグを見ているとおもしろい。

 しかも、今年からYBCルヴァンカップでは、各クラブに21歳以下の選手の出場が義務づけられた。こうした制度変更を生かし、U-20日本代表入りをうかがう選手が出てきてもおかしくない。

世界大会への出場がモチベーションにつながる

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 実際、3月15日に行われたルヴァンカップ第1節のベガルタ仙台(対FC東京戦)には、21歳以下の選手が控えも含めると6名も含まれており、うち4名が1997年以降生まれの選手だった。

 その中で唯一先発出場したのが、DF常田克人。公式戦初出場となった常田は、FC東京の猛攻にさらされ(0-6の惨敗を喫した)、無念の途中交代となったが、こうやって苦い思いを味わいながらも試合を重ねていくことが成長につながっていくのだろう。

 また、若手の台頭が著しい柏レイソルにあっては、18歳のDF古賀太陽が、J1第2節のガンバ大阪戦に途中出場。これがJ1デビューとなった古賀は、続く第3節川崎フロンターレ戦で初めての先発フル出場も果たしている。

「(初先発でも)緊張せず、平常心でやれた。ガンバ戦の(途中出場による)15分が今日の90分につながった」

初先発の試合後、古賀がそう語っていたように、若い選手は1試合出場するごとに落ち着いてプレーできるようになっていく。これから試合を重ねていけば、さらにポテンシャルが引き出され、自分の持ち味を発揮できるようになるはずだ。

 そんな古賀も「U-20ワールドカップには出たいと思うが、チーム(柏)の勝利に貢献することが一番。まずはチームで結果を残したい」。柏でのポジション争いに臨むうえで、世界大会への出場が少なからずモチベーションとなっているのは確かなようだ。

今シーズンは高卒ルーキーたちの活躍が目立つ

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 その他にも、今季は開幕早々、高卒ルーキーの活躍が目立つ。J1ではアルビレックス新潟のMF原輝綺が、J2でも湘南ベルマーレのDF杉岡大輝、ジェフ千葉のMF高橋壱晟といった選手が開幕戦デビューを飾った。

 1998年生まれの18歳にして、開幕からJ1で4戦連続先発出場の原は、「これといって手応えはない。課題が多いし、危機感しかない」と辛口の自己評価だが、堂々たるプレーぶりはとても高卒ルーキーとは思えない。

 原は昨秋のアジア予選にも出場しているが、当時はサブに回ることが多かった。しかし、J1で積み重ねた経験が、恐らく彼をいつまでも同じ立場ではいさせないだろう。世界の舞台では、主力としてU-20日本代表を支える存在になっているのではないだろうか。

 こうして若い選手が台頭してくる背景には、やはりU-20ワールドカップ出場が見逃せない。もしもアジア予選で敗れていれば、こうはなっていなかったかもしれないし、こうして動機づけとなる要素が(アジア予選で終わることなく)継続的に与えられることが、20歳前後の選手の成長には必要なのだと実感する。

 だが、久しぶりのU-20ワールドカップ出場に、高いモチベーションを与えられているのは選手ばかりではない。我々取材する側もまた同様だ。

 日々のJリーグを見ながら、常に20歳以下の選手を意識し、どんな選手が出てくるかと楽しみが増す。もちろん、U-20ワールドカップに出られなかったとしても彼らにまったく注意を払わないわけではないが、やはり意識の仕方が違う。

 日本がU-20ワールドカップに出場するのは、2007年大会以来、実に5大会10年ぶり。久しぶりにワクワクするような感覚を味わわせてもらっている。


浅田真樹

1967年生まれ。大学卒業後、一般企業勤務を経て、フリーライターとしての活動を開始。サッカーを中心にスポーツを幅広く取材する。ワールドカップ以外にも、最近10年間でU-20ワールドカップは4大会、U-17ワールドカップは3大会の取材実績がある。