知っ得!「マスターズ」の大会アラカルト
今週は2017年シーズン最初のメジャー、「マスターズ」がいよいよティオフを迎え、スポーツ界の注目はオーガスタナショナルGCに集まる。一年で最大のイベントをさらに楽しむための情報紹介しよう。 昨年はジョーダン・スピースの大崩れに乗じて首位に立ったダニー・ウィレットが、終盤に追いすがったリー・ウェストウッドのチャレンジを退け、イングランド人としては1996年のサー・ニック・ファルド以来となるグリーンジャケット獲得を果たした。 2015年王者のスピースを3打追う状況で最終日を出たウィレットだったが、スピースがハーフターンした時点では、その差は5ストロークまで広がっていた。しかし、ウィレットが最終日をノーボギーの「67」で回ったのに対し、スピースは12番でクアドルプルボギーを叩くなど、3ホールで6つスコアを落として後退した。 ウェストウッドは15番でイーグルを奪って1打差まで迫るも、ウィレットは16番でバーディを奪って通算5アンダーとし、2011年のシャール・シュワルツェル以来となるヨーロピアンツアーメンバーによる「マスターズ」制覇を果たした。 しかしながら、本来であればウィレットはオーガスタへ来られないところだった。夫人のニコールさんが「マスターズ」の週末に第一子の出産を控えており、ウィレットは大会を欠場する予定だったのだが、ザッカライア君が予定日よりも早く生まれたため、ウィレットは歴史的快挙を達成できたのだ。 他のメジャー3大会と異なり、「マスターズ」は毎年同じ会場で開催される。このゴルフ界で最も格式の高い大会のひとつが初めて開催されたのは1934年。初代王者は米国のホートン・スミスだった。 優勝者にグリーンジャケットが授与されるようになったのは1949年からのことで、王者たちは勝利の1年後にグリーンジャケットをオーガスタナショナルのクラブハウスに戻さなければならない。 1961年には、ゲーリー・プレーヤーが米国人以外としての初優勝を遂げた。プレーヤーは神聖なフェイアウェイで通算3勝を挙げたが、オーガスタをわが庭としたのは、長年同時代のライバルとして競い合い、グリーンジャケットを6着勝ち取ったジャック・ニクラスだった。 セベ・バレステロスは1980年に欧州選手として初めて「マスターズ」を制覇すると、その3年後に2勝目を挙げ、欧州勢が大会を席巻する一時代の礎を築いた。1983年のバレステロスによる勝利から、1996年にサー・ニック・ファルドが大会3勝目を挙げるまでの13年間で欧州勢は「マスターズ」を9回制覇した。 1997年には、2位に12打差をつける通算18アンダーで大会を制したタイガー・ウッズが、最小スコアと最大差勝利の記録を塗り替えるメジャー初制覇でタイガー時代の到来を高らかに宣言した。 18人の大会王者を含むスターぞろいのフィールドの先陣を切るのは、優勝した「WGCデルテクノロジーズマッチプレー」以来の出場となる世界ナンバーワンのダスティン・ジョンソンだ。ここ3年はいずれもトップ10入りを果たしているロリー・マキロイは、今週、キャリアグランドスラムの達成を目指してティアップすることになる。 フィールドには30人のメジャー王者が含まれ、グリーンジャケット獲得とここ9カ月で2度目のメジャー制覇を狙うヘンリック・ステンソンもその一人である。今大会に出場するヨーロピアンツアーは37人で、うち6人は大会デビューを飾ることになる。共にルーキーのティレル・ハットンとトーマス・ピータースは、初めてのオーガスタでの活躍を見据えている。 オーガスタナショナルGCのすべてのホールにはストーリーがある。コースはかつて苗床の栽培地だった場所に造成され、各ホールには関連した草花や木々の名が与えられている。 “アーメンコーナー”はゴルフの世界で最も恐れ多き場所として知られている。11番、12番、そして13番ホールからなるこの場所は、初日から、すべてを決定する最終日まで、毎年ドラマを提供しなかったことはなかった。 “ホワイトドッグウッド”と名づけられた11番ホールは長いパー4で、グリーンの左手前には池がグリーンを守っている。12番ホール、“ゴールデンベル”はゴルフ界で最も有名なホールである。“レイズクリーク”越えのパー3、155ヤードは、見た目は単純だがホールを渦巻く風は、長年にわたりスコア崩壊を招いてきた。 “アーメンコーナー”は510ヤードと短いパー5の13番“アザレア”で終了する。これは究極的なリスクと報酬のホールであり、追いかける選手には動きを見せるチャンスを与える。 また、ダニー・ウィレットが優勝を遂げた最終日に見事攻略したパー3の16番、“レッドバッド”も特筆すべきホールである。ウィレットはこのホールでティショットをピン側1.8メートルにつけると、バーディパットを沈め、残り2ホールで2打差のリードを築いた。 〇 今年のフィールド総数は94人。その94人のうち米国人以外は52人。「マスターズ」のフィールドで米国人以外が最も多かったのは、55人が出場した2009年大会だった。今年の52人という数は、「マスターズ」史上4番目の規模となる。なお米国人ではない52人の選手のうちプロは49人となっており、これはプロとしての出場者数としては歴代3位タイとなる。 〇 今年は22の国と地域を代表した選手たちがオーガスタに集結する。米国以外の21カ国で最も出場選手が多いのはイングランドの11人。 〇今大会の最年長出場者は60歳のマーク・オメーラ。今大会は1998年王者にとって33回目の出場となる。オメーラは1980年にアマチュアとして大会初出場を果たした。 〇今大会で最多出場の栄誉を得るのはサンディ・ライルである。2017年大会はスコットランドのライルにとって36回目の出場となる。ライルは1985年以来、毎年「マスターズ」に出場しており、メジャー通算2勝のライルにとって、今大会は94回目のメジャー出場となる。 〇1991年王者のイアン・ウーズナムは、今年で30回目の「マスターズ」出場の節目を迎える。欧州人でこの大台に乗るのは、サンディ・ライル、そしてベルンハルト・ランガーに続き3人目となる。 〇今大会に出場する「マスターズ」王者は18人。この18人によるグリーンジャケットの総数は23着となる。
マスターズには歴史とドラマがある