DJ無念の欠場… 過去にもあったゴルファーの不幸なケガ
ジョージア州オーガスタ 。「マスターズ」前日に3段の階段から落下して腰を痛めたダスティン・ジョンソンが急きょ欠場した。今回の一件はゴルフ界の不幸な事件として、歴代のトップ10にランクインするのは間違いだろう。 しかし、これはどれくらい不慮な出来事なのであろうか?ランキングを決める上で、これまでプロゴルファーの負った他のケガと比較する必要がある。というわけで、歯磨き、柔らかいベッド、度が過ぎた祝福などが発端となった近年のゴルファーたちのケガを振り返り、今回のDJの一件の“落としどころ”を探ることにしよう。 人々は往々にしてスキーでケガを負うものであり、それはゴルファーも例外ではなかった。1994年シーズンに当時23歳だったミケルソンは、1勝を挙げ、トップ10入りを4度果たすなど、好調なスタートを切った。だが、フラッグスタッフ(アリゾナ州)のスキー場に立っていた一本の木と衝突した。ミケルソンの左大腿骨には未だにロッドが埋め込まれており、彼はその衝突からメジャー初制覇まで10年の年月を費やした。 ウッズはかつて柔らかいベッドで背中を痛めたことがある。“ベッド・ジョーク”を持ち出しているわけではない。リバティナショナルで開催された2013年の「バークレイズ」に出場したウッズは、ニューヨーク市内に宿泊すると、背中を痛めて水曜のプロアマの欠場を余儀なくされた。しかし、回復して大会に出場したウッズが、4日間連続で60台をマークし、2位タイで大会を終えたことを考えると、そこまで大したケガではなかったのだろう。 こういう話を聞いてしまうと、本当に自分はしっかりとした強さで歯磨きをしているのだろうかと疑いたくなる。フューリックは歯を磨いた後、薬を飲もうとした際に首筋を捻ってしまい、2006年の「ビュイッククラシック」を棄権した。フューリックはその翌週に開催された「全米オープン」で復帰し、2位タイに入った。 マキロイは“キックアバウト(イギリス英語で「遊びのサッカー」の意)”という聞き慣れないフレーズを米国のゴルフファンに紹介した。さらに、友達との遊びであれ、メジャーの間際ではサッカーをしてはいけないという反面教師にもなった。マキロイはセントアンドリュースで開催の2015年「全英オープン」を控え、サッカーをしている際に左足のじん帯を断裂して欠場した。また、これは偶然なのかどうかは定かではないが、以後、彼はメジャーで優勝をしていない。 当時の報道によると、2012年にジョンソンはフロリダの自宅近くでジェットスキーをして背中を負傷した。この背中の怪我により、ジョンソンはその年の「マスターズ」を欠場せざるを得ず、彼にとっては強烈な精神的打撃になったと考えられているわけだが、まあ、今回と比べたら…。 2011年の「トーナメント・オブ・チャンピオンズ」3日目にイーグルを決めた際にやったガッツポーズがあまりに激し過ぎ、ロバート・ガリガスは最終日まで張りを残した。結果的にプレーオフの末にジョナサン・バードに敗れたのである。「あんなガッツポーズ、もう随分と長いことやっていなかった」とガリガス。「あれはやり過ぎだった。今日(最終日)は全く張りが取れなかったんだ」と悔やんだ。 2003年、ケンドールは冷凍庫から取り出したベーグルを切ろうとしたが、うまくいかなかった。「とても鋭い包丁だったんだ。十分気をつけてやったのだけど、不幸にも、半分に切れたベーグルとともに、自分の指の半分もまな板の上に横たわっていたんだ」。彼が競技から遠ざかったのはわずか2週間だけだったが、彼はこのケガのため、一時的にグリップをオーバーラップからインターロッキングに変えなければならなかった。 トーマス・レベは2011年「フランスオープン」で優勝後、喜びのあまり池にダイブした。ここですねを骨折した。その後に控えていた「全英オープン」を欠場。「脚の負傷だけで済んで幸運だった」とレベ。しかし、話はこれで終わりではない。彼はその数カ月後、南アフリカで大会に出場していた際、小さい階段から滑り落ちて肋骨を骨折するという、これまたゴルフアーにとって一風変わったケガを負った。 2006年、ジョブが車庫の掃除をしている最中に、ほうきの柄が砕け、彼は2本の指先を切断してしまった。病院で接合手術を受けたが、以後5年間、PGAツアーでフルシーズンをプレーしていない。 これは熟考の末の順位である。確かに今回の一件は、祝福のダイブで脚を骨折したり、歯磨きで首をひねったりするよりはきまり悪くないといえるかもしれないが、断トツの優勝候補で迎えたメジャーの前日に起こったという不幸があった。DJが今週欲していたのは、このようなタイトルではなかったのは百も承知。しかし、好むと好まざるとに関わらず、彼は歴史の一部となったのである。 文 サム・ウェインマン Copyright(C) 2017 Golf Digest Publications.All rights reserved