文/福嶌弘

WBCの活躍で小林誠司が“巨人顔の選手”と認知される!?

©️共同通信

「久しぶりに巨人顔の選手が出てきたな」――侍ジャパンの一員として予想外の健闘をしている小林誠司を見て、そう評するベテラン巨人ファンの声をよく聞く。

 生来の巨人ファンであるわたしも「確かに」と頷けるものだった。小林のWBCでの活躍は予想外すぎるが、巨人顔の選手としてはすでに合格点。すでに引退した選手だが、高橋由伸(現・監督)以来のことではないかと記憶する。

 ……と、ここまで語ってきた「巨人顔」。いったいどういう意味かというと、「巨人の選手としてふさわしい顔立ちの選手」ということである。「巨人軍第●代4番打者」、「巨人軍は紳士たれ」と同じく、他球団ではほとんど聞かれない巨人独特の文化とも言える話だ。伝え聞く話では、V9時代の頃からファンの間で語られはじめ、現在でもオールドファンの間で語り継がれているという。

 ここで勘違いしてほしくないのは、巨人顔とは決して「チームの顔」というわけではないということ。仮にチームの顔という話ならばラッキーボーイ的な活躍を収めている小林ではなく、同じ侍ジャパンに選出されているチームメイトの坂本勇人や菅野智之らがチームの顔として挙がるだろう。

 では、過去に巨人顔と言われた選手にはどんな選手がいて、そもそも巨人顔とはどういう選手なのか……それを詳しく調べてみたい。

長嶋、原、そして由伸……歴代の“巨人顔”のラインナップ

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 Googleで「巨人顔 野球」と検索をかけると、おおよそ以下の選手が巨人顔の選手として挙げられていることが多かった。

・長嶋茂雄
・中畑清
・原辰徳
・高橋由伸

 ものの見事に野手ばかり。4人ともチームの主軸打者として活躍し、4番打者を務めた実績もある。現役時代の人気はみな抜群で、ファンに愛された選手たちである。そのためか、全員巨人で現役生活を終え、さらに中畑以外は巨人の監督に就任している。

 この4人のうち、現役時代から女性人気の高かったのは原と高橋。原は東海大相模高校在籍時代から甲子園で活躍して、アイドル的な活躍を収めていたし、高橋は現役時代、プロ野球選手の人気ランキングでは常に上位に入るほどの人気選手。端正なルックスを評されることも多かったふたりだけに、この2名が巨人顔として称されるのはよくわかる。

 一方、長嶋と中畑といえばどちらかというと男性ファンに人気のあった選手だ。ミスタージャイアンツと呼ばれた長嶋は言わずもがなだが、中畑は常に全力のプレースタイルが少々男臭く見えるタイプ。スマートなプレースタイルの原とは対照的で、風貌もあまり共通点がないように思えるが、両者とも巨人顔として挙げられる代表的な選手である。

篠塚や定岡、坂本らが該当せず!? “巨人顔”の条件とは?

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 原、中畑らが巨人顔と称されたわけだが、80年代の巨人で断トツの女性人気を得ていたのが篠塚和典。細身の体型でアイビールックを好んで着こなすなど、当時のプロ野球選手のなかにあって抜群にスタイリッシュな人物だったが、不思議と巨人顔の選手として挙げられることはほとんどなかった。同様に、アイドル的な人気を集めていた定岡正二もまた巨人顔の選手とは呼ばれることがなかった。現代の巨人で考えても、イケメンプレーヤーとして称される坂本勇人にもそうした声は聞かれない。

 ここまでを見ると、単純にルックスの問題ではないのかもしれないように思えるが、松井秀喜や阿部慎之助ら一度見たら忘れないタイプの顔立ちの選手もまた、巨人顔の選手としてファンの話題に挙がることは皆無。前球団のカラーが強いのか、小笠原道大らのFAなどで移籍してきた選手も、「巨人顔」と称されることはなかった。

 調べれば調べるほど深みにはまっていく感はあるが、「巨人顔」の定義としてはおおよそ以下のものが挙げられる。

・巨人の生え抜き選手として現役生活を終えた者
・レギュラーとして活躍した実績がある者
・大卒、社会人卒の者

 先に挙げた4選手はもちろん、今回の小林誠司も一応、これらの条件を満たしている。こうしてみると、複雑に見えた巨人顔の理論も実にシンプルに見えてくる。

新たな“巨人顔”の選手候補はあの名門大学の大投手!

 先に挙げた条件を考えると、現在巨人に所属する選手でも巨人顔と呼ばれる選手は限られ、さらに移籍選手にはノーチャンスなのがわかる。仮に今後、中田翔がFA移籍で巨人に入団するようなことが起こっても、「巨人顔の選手」とはまず呼ばれないだろう。これから呼ばれる選手が表れるとしたら、新たに入団してくるアマチュア選手ということになる。

 17年のドラフト候補生は清宮幸太郎(早稲田実業)をはじめ、高校生の野手に人気が集中しそうだが、どちらかというと愛嬌のある顔立ちの清宮は巨人顔の選手という条件には合わない。端正なルックスで高校野球ファンの注目を集めている金成麗生(日大三)も同様である。

 17年のドラフト候補生のなかで巨人顔として最もふさわしい選手として、東京大学の宮台康平を挙げたい。最速150キロを誇る切れ味抜群のストレートにスライダー、シンカーを混ぜたピッチングは即戦力候補間違いなし。東京大学出身という色眼鏡で見なくても十分の実力者である。

 くしくも現在の巨人の先発投手陣は菅野、マイコラス以降の3番手が固定できていない状態。宮台康平の獲得は戦力的にもプラスに働くはずで、さらに巨人顔の選手としてファンに親しまれることは必須。気の早い話だが、今オフのドラフト会議が楽しみになってきた。


BBCrix編集部