文=池田敏明

他競技とは一線を画すVリーグのサプライヤー

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 2016-17シーズンのVプレミアリーグは、男子は東レ・アローズが8年ぶり3度目の、女子はNECレッドロケッツが2年ぶり6度目の優勝を成し遂げて幕を下ろした。ただ、両チームの優勝よりも大きな話題をさらったのは、長年にわたってバレーボール界を支えてきた木村沙織(東レ・アローズ)の現役引退ではないだろうか。

東レアローズに所属する木村沙織が22日、滋賀県大津市内で記者会見を開き、現役引退を正式に表明した。  緊張した様子で登壇した木村は、引退を決意した理由を「気持ち的に前ほど悔しい気持ちがなくなったり、試合に負けて『くそー』みたいな感覚が少し薄れてきた」と説明。「動きはピークと変わらずに試合に出ていた」とも語り、体よりもメンタルの要因が大きい様子だった。会見では何度も感謝の言葉を繰り返し、今後については「私らしく第2の人生を楽しみたい」と語った。
「私らしく第2の人生を楽しみたい」木村沙織 現役引退の報告会見 - スポーツナビ

 全日本でキャプテンを務め、人気、実力ともに抜群だった木村の引退により、17-18シーズンは新たなスターの登場が望まれる。東京オリンピックを見据える上でも、バレーボール界全体の盛り上がりは不可欠だ。

 そんなバレーボール界だが、Vリーグ所属チームのユニフォーム・サプライヤーを見ると、他の競技とは一線を画す状態になっている。16-17シーズンのVプレミアリーグとVチャレンジリーグⅠに所属していた男子チーム、女子チームのサプライヤーを見てみよう。

競争より共存――男女で異なるサプライヤー

 Vプレミアリーグ男子は、優勝した東レ・アローズはasicsだが、パナソニック・パンサーズとFC東京はDESCENTE、残りの5チームはMIZUNOとなっている。元々、バレーボールのユニフォームは世界的に見てもこの3社の影響力が強く、イタリアの男女代表はasics、カナダ女子代表やオランダ女子代表はMIZUNOのユニフォームを着用している。イタリアやドイツのブランドももちろん存在するが、Vリーグのサポーティングパートナーも務めるasics、MIZUNO、DESCENTEから海外ブランドに乗り換えるメリットは少ないだろう。

 木村が所属していた東レ・アローズは男子もVプレミアリーグに所属しているが、興味深いのは男子がasics、女子がMIZUNOとサプライヤーが分かれている点だ。これは全日本チームも一緒で、全日本男子、通称「龍神NIPPON」がasics、全日本女子、通称「火の鳥NIPPON」はMIZUNOと分かれている。ちなみに、ビーチバレーナショナルチームのオフィシャルウェアはDESCENTE製。3ブランドが日本バレーボール協会のオフィシャルサプライヤーとなっていることもあり、ブランド同士がシェア争いを演じるのではなく、共存するイメージなのだろう。

 ちなみに、Vプレミアリーグ男子のパナソニック・パンサーズとFC東京はいずれもDESCENTEがユニフォーム・サプライヤーとなっているが、DESCENTEは現在、サッカーブランドであるUMBROの日本国内での販売を手掛けている。パナソニック系列のガンバ大阪、そしてFC東京のサッカーチームはいずれもUMBROのユニフォームを着用しており、このあたりにはDESCENTE社とパナソニック、FC東京の良好な関係が見て取れる。

 VチャレンジリーグⅠを見ても、asics、MIZUNO、DESCENTEの3ブランドが大半のチームのサプライヤーを務めている。唯一、男子のつくばユナイテッドSun GAIAだけは着用しているユニフォームにブランドロゴの掲出がない。このチームはアパレル部門のSun GAIA Stationがグッズの開発販売を手掛けており、ユニフォームもオリジナル。VチャレンジリーグⅡを見ると、千葉ゼルバや長野GaRonsのようにユニフォームにブランドロゴの掲出がなく、大手のブランドと契約していないと思われるチームもある。有力ブランドがシェアを独占する中、つくばユナイテッドSun GAIAのようなチームが2部に相当するリーグでトップを目指して戦っていることは、多くのチーム、そして後発のバレーボールブランドに勇気を与えるはずだ。


池田敏明

大学院でインカ帝国史を専攻していたが、”師匠” の敷いたレールに果てしない魅力を感じ転身。専門誌で編集を務めた後にフリーランスとなり、ライター、エディター、スベイ ン語の通訳&翻訳家、カメラマンと幅広くこなす。