弱肉強食の厳しい世界で選手が努力をすることが、プロ化に向けて選手がすべきこと

 4月17日のSVリーグに関する会見に出席した東京グレートベアーズに所属する元日本代表の柳田将洋は「改めて身が引き締まる。あくまでスタート地点。これからさらに発展していくために選手教育であったり、チームもSVリーグそのものがどういった道を進んでいくのか。気概を持って来シーズン盛り上げていくことが非常に重要と感じています」と話した。

 一方で、共に登壇した日本代表の青柳京古は、新リーグについての感想を聞かれた際、自ら外国籍選手枠増について触れていた。

 「外国籍の選手が増える中で、日本人プレイヤーが活躍できる場面が減るんじゃないかということが危惧されると思うが、やはりプロを目指す中で弱肉強食ではないですけど、厳しい中で選手が努力をするということが、プロ化に向けて選手がすべきことではないかなと思っています。選手がこういう自覚を持って、取り組みに積極的に参加することが、私は本当に大事だと思っているので、私から発信できることがあればどんどんしていきたいなと今は思っています」

 やはり選手側には大きな関心事なのだろう。

 今年10月に開幕するSVリーグでは、外国籍選手のオンザコートルールがこれまでのVリーグでの外国籍選手枠1名とアジア枠選手1名の最大2名から、外国籍選手枠2名とアジア枠1名の計3名になる。さらにアジア提携国枠も新設され、まだ交渉中で現状どうなるか不明だが、もし交渉がまとまって提携国となると、そのアジアの国の選手は日本人選手扱いとなる。

続々と噂される海外ビッグネームの日本チームへの移籍

 筆者は普段、男子Vリーグを中心に取材していることもあるので、男子の動きについて触れたい。

 日本の新リーグで外国人枠が増えることについては昨夏から発信されていたこともあって、昨年末頃からヨーロッパのバレーボールニュースサイトで、来シーズンに日本でプレーする選手として、オリンピックや世界選手権でメダルを獲るような強豪国の代表選手たちの名前が続々と挙がっていた。特に資金力のある大企業のチームに加入が決まったとされる外国人2枠が、共に超大物選手となっており、普段バレーボールを取材するこちらも日々驚かされていた。

 これまでのVリーグの各チームの傾向として、多くのチームが攻撃専門のポジションであるオポジットに1枠の外国人枠を使っていた。2023・2024年シーズンのリーグ王者であるサントリーサンバーズ(SVリーグでは「サントリーサンバーズ大阪」)に関しては、元ロシア代表ドミトリー・ムセルスキーが、そしてウルフドッグス名古屋に4シーズンに渡って在籍したポーランド代表バルトシュ・クレク(2023・2024年シーズンをもって退団)などが最たる例だろう。

 その次に外国人選手が務めることが多いポジションが、アウトサイドヒッター。パナソニックパンサーズのアメリカ代表ジェスキー・トーマス、JTサンダーズ広島(SVリーグでは「広島サンダーズ」)に今シーズンまでの2シーズン在籍した同じくアメリカ代表アーロン・ラッセル。

 そしてアジア枠の使い方は多様でアウトサイドヒッターであったり、オポジットであったり、ミドルブロッカーであったりと分かれていた。ただ、強豪チームではアジア枠を中国代表のミドルブロッカーを獲得しているケースが多い。

 そして、外国人枠が1枠増えるSVリーグでは、現状名前の挙がっている大物選手たちのポジションの大半が、オポジットかアウトサイドヒッターだ。こういった情報が海外のニュースサイトやSNS経由で、日本人選手たちにも当然入ってくる。

達観、不安、期待、日本人選手たちの捉え方

 では、選手たちは一体どういう風に見ているのか。リーグ戦の終盤、複数の試合後に選手たちに話を聞いてみた。達観、不安、期待などそれぞれ入り乱れていた。

 まず、最も影響を受けるであろうアウトサイドヒッターの選手たち。

 3月31日のリーグ決勝で、パナソニックパンサーズを破って優勝したサントリーで、攻守にわたって大活躍だった藤中謙也。2022年には日本代表にも選ばれており、アジアの大会AVC cupの準優勝にも貢献したアウトサイドヒッターの実力者だ。

 既にプロ選手として長く活動している藤中謙也は、プレー同様、冷静に見る。

 「一番はコートに立つこと。色んな役割、立場でチームに貢献できたり、また、出場機会を求めて移籍することも大事ですし、留まって埋まっていくのではなく、色んな機会や立場を求めてチームが変わる変わらないは別の話で、同じチームでも別のチームでも自分の立場を見つけていくのが大事になると思います」

 同じく元日本代表で日本製鉄堺ブレイザーズのアウトサイドヒッター樋口裕希(※シーズン終了後にチームを退団)。2月17日のサントリー戦後に、質問をぶつけると、複雑な心境を吐露した。

 「正直にいうと、(噂に挙がるような)あれだけ世界レベルのアメリカ代表、ポーランド代表の選手、(身長が)2m数センチあってパス(守備)もできるサイドが来るとなると、今から何を頑張ってあれを抜こうというモチベーションには正直ならない…(苦笑)。無理だろうなというのが正直あって、ちょっとの差が見えているのであれば、そこを頑張ればいいんですけど…。SVリーグになってアウトサイドで2枚とも外国人を取るチームが出てきたら、試合数が増えるので(初年度に関しては実際には同じ44試合)、その選手がケガした時にバックアップで入るとか、そのチームのために何ができるんだろうというマインドに変えていかないといけないと思っている。試合に出るために頑張ろうでは多分やっていけなくて、松本さん(同チームで今もなお活躍する43歳の松本慶彦)みたいに長く続けることが本当に難しくて、狭き門になってくる。どうやって自分はチームに生き残っていけるんだろうと考えないといけない」

日本製鉄堺ブレイザーズでアウトサイドヒッターの迫田郭志(真ん中)と樋口裕希(右)

 一方で、樋口のチームメイトで同じアウトサイドヒッターの迫田郭志は、「僕は攻撃の部分では勝てないと思うので、チームで一番の守備のアウトサイドになっていければいいのかな」と冷静だった。(※迫田もシーズン終了後にチームを退団)

 昨シーズン(2022・2023年シーズン)後にサントリーを退団し、プロ選手としてジェイテクトSTINGS(SVリーグでは「ジェイテクトSTINGS愛知」)に移籍し、アウトサイドヒッターとして活躍した秦耕介はポジティブに捉えていた。

 「世界のトップで活躍している選手たちと一緒に練習できるので、日々どれだけ成長できるのかまず興味があります。ただ、試合出場の機会が減ったら、それはそれで嫌とは思っている。まだ始まってないのでなんとも言えないが、日本人選手の選択肢は国内だけでなく、どんどん広がっていくと思っている。それについては楽しみなのと、これからどうなんだろうという思いと半々。後者のマインドでいたら成長はないので、挑戦というところはしっかりしていきたい」

ポジションによって異なる見方

 アウトサイドヒッターではないポジションの選手たちは、少し異なる見方をしていた。
サントリーを優勝に導いたセッターで日本代表の大宅真樹は、楽しみだという。

 「すごく楽しみな部分が僕は大きい。チーム内の競争が激しくなる中で、普段の練習からスタートじゃない選手が相手でも、かなり負荷の高いバレーボールで日々を過ごせると思う。確かに日本人選手の出場機会は、もしかしたら減ってくるリーグになっていくかもしれない。しかし、そこをチームとして戦えるチームがより上位に入ってくると思っている。スター選手が来たからといって、日本にフィットするかもわからないし、そのチームに合うのかもわからない。やってみなきゃわからないのが正直なところ。まさにSNSで言われているような選手が本当に来るのであれば、日本のリーグはすごく注目されてると思うので、リーグがもっともっと盛り上がってくれば、男子バレーボール界も本当に世界最高峰を目指せるのではないか」

 同じく日本代表、サントリーでミドルブロッカーとして活躍する小野寺太志も期待を口にした。

 「噂なので、誰が来るのか正直僕もわかっていない。僕が見る名前は(ミドルブロッカーと)ポジションが違う選手が多いので、もちろん同じポジションにあたる選手は、ライバルがチーム内に増えることで(出場機会)厳しくなると思うが、僕自身はミドルブロッカー的な観点でいうと、常に対戦相手に世界トップクラスの選手がいることは良いことだと思う。日本代表で経験させてもらってることが日本のリーグに帰ってきた時に、日本人選手のレベルも高くなっていることも事実ですし、(Vリーグが)どんどん難しくなっているのも事実なんですけど、やはり高さが違う、パワーが違うというのもある。それを代表(の活動)期間が終わってから、リーグでも毎週肌で感じて味わえるのは、これからも日本代表でプレーしたいと思っている僕にはとってはすごく良い機会。そこで何か掴めるものがあるかもしれない。対戦相手に各国の代表選手がいて、そこで特徴を知っていたら、またプレーが有利に働くかもしれない。代表で戦ってかつミドルで戦っている選手からの見方であって、他の選手とは見方は違うかもしれないが、でも楽しみなのは事実で、その選手たちからポジションを奪う活躍を見せてくれたら、それこそ日本のレベル、国内リーグのレベルが上がると思う。名前負けしてほしくない」
(※大宅、小野寺ともに、2月18日の日本製鉄堺ブレイザーズ対サントリーサンバーズの試合後会見にて)

 セッターに外国人枠を使うチームが出てくるか、現時点ではわからない。ただ、筆者が学生時代に鮮烈に覚えているのが、1996年から3シーズンに渡って、東レアローズでプレーした203cmのアメリカ代表セッター、ロイ・ボール。日本人セッターにはなかなかない高さからトスを上げていて、当時衝撃を受けた。ちなみに、東レアローズでかつてミドルブロッカーとして活躍した小林敦GMは以前、「僕がスパイク賞を取れたのは彼のおかげですよ」と話していた。

 V2リーグ(2部)であれば、つくばユナイテッドSun GAIAがセッターに中国代表で196cmの于垚辰を起用していた(昨シーズンと今シーズンでプレー)。

 2023年度の日本代表のセッターで、VC長野トライデンツの下川諒(※シーズン終了後にチームを退団)は、大物外国人セッターのSVリーグ参戦を期待していた。

 「僕はセッターでどこかに来て欲しい。僕自身、海外でプレーしたいというのは高校の頃からあったので、海外のセッターを見ている中で自分が見て学べるかという思いがある。あと、言われているようなアウトサイドヒッターやオポジットの選手たちと試合をする中で、多く学ぶことができると思うのですごく楽しみ。勝てなくなるという心配は少しあるが楽しみ」(3月9日のジェイテクト戦後の会見にて)

 下川は、好きなセッターとしてアルゼンチン代表のルチアーノ・デ・セッコ、元イラン代表のサイード・マルーフの名前を挙げていた。2人とも世界トップクラスのセッターとして長年活躍し続ける名手だ。

外国籍選手枠増に日本人選手ができる選択肢が「3通りある」と語る、サントリー山村監督

 選手ではないが、サントリーの山村宏太監督が、2月18日の日本製鉄堺ブレイザーズ戦後の会見時に、外国籍選手の枠が増えることでの日本人選手への影響について問うと、明快に答えてくれた。(※山村監督はシーズン終了後にチームを退団)

 「3通りあると思う。代表で活躍できる選手、代表を目指す選手は、海外にチャレンジする。もしくは(国内の)ビッグクラブでAJ(サントリーのアライン)みたいにチーム内で競争していって、出場機会をビッグネームから奪っていく覚悟をもってクラブでやっていく。もうひとつは、そこまで資金力が無いクラブに入って対戦相手として経験していくという3種類があると思っている。その3つの中から、自分の価値を高められる方法を自分で選択していくのがプロの道。その中から、自分に合った選択、試合勘を失いたくないから出られるチームにいくのか。でも、まずは自分の価値を正当に評価してくれるクラブを探すことかなと思う。その中で自分がどうしていかないといけないのか、結局どこにいっても下手なプレーをしていたら使われなくなるし、価値は上がっていかない」

 枠が増えたことはポジティブに捉えているかと山村監督に再度問うと、「そう考えないとしんどいなというのが正直なところ。日本人にとっては相当厳しいと思うけど、それをいかに自分たちがやっていかないと、自分次第で変わっていけるんだというのを証明していかないといけない。(外国籍選手の枠に)アウトサイドを取らなくていいじゃん、オポジット、ミドルブロッカー、もしかしたらセッターで外国人枠を使っていこうと思わせることが、まずアウトサイドの仕事だと思う。他のポジションも譲らないよう、各ポジションの競争が生まれていくことが大事なのかと思います」

 SVリーグ開幕まで半年を切り、例年以上に、男子チーム、女子チームの日本人選手の退団が発表されている。その一つ一つの理由が、SVリーグの外国籍選手枠が増えることによるものかはわからないが、影響はあるのだろう。日本人選手たちがどんな道を選択していくのか。大物外国人選手たちの加入だけでなく、日本人選手たちの動きにも目が離せない。


大塚淳史

スポーツ報知、中国・上海移住後、日本人向け無料誌、中国メディア日本語版、繊維業界紙上海支局に勤務し、帰国後、日刊工業新聞を経てフリーに。スポーツ、芸能、経済など取材。