世界最高峰を目指すSV.LEAGUEで世界最高峰のクラブを目指す

 6月11日、大阪市でリブランディング発表会が行われ、新チーム名「大阪ブルテオン」と、「B」をモチーフにした新しいチームエンブレムが披露された。BLUTEONは「Blue to Eon(永遠なる青)」という言葉を元に考えられた。

 日本代表の活動の合間を縫って会見に参加した西田有志は「デザインもチーム名も一新されて、やはりパナソニックパンサーズという名は昔から強いチームっていう印象がある中で、こうやって大きな変化があることだと思います。これからいろんな1ページを築いていくと思いますけど、本当に新鮮な気持ちでいっぱいです」と述べ、チームキャプテンである日本代表・山内晶大は「格好良いイメージと、パナソニックパンサーズという名前ではなくなる寂しさはありますけれども、チーム一丸となって、ファンの方々と一緒に世界最高峰のクラブを作っていけたら」と期待をこめた。

 チームの運営会社パナソニックスポーツの久保田社長は、リブランディングを実施した理由として「我々が目指すものは世界最高峰のクラブになること。SV.LEAGUEは世界最高峰のリーグを目指すと示していて、我々もクラブとして世界最高峰になっていきたい。そう考えた時にグローバルで唯一無二の存在になって価値を高めていく。これを目指していかなければならないと考えた」と会見で話した。

 そして、パンサーズという名前を手放した理由については「パンサーズというチーム名称は世界中、日本国内にも同じ名前のチームがたくさんある」(久保田社長)からとした。

 今後世界に名だたるチームを目指すにあたって、パンサーズのままだと、例えばインターネットの検索において埋もれてしまって上位に表示されなかったり、商標の面でもリスクがあったという。だからこそ思い切った変更を行った。

 また、チーム名に拠点の「枚方」ではなく「大阪」とした点についても「今後、大阪府下でホームタウンを拡大することも考え、大阪全体を代表するチームになれないかとこの名前を付けた」という。既に、枚方市だけでなく、周辺の門真市、守口市、寝屋川市、交野市とも連携協定を結んでいる。

新チーム名にファンからは戸惑いの声も

 新チーム名についてのファンからの反応は賛否さまざま。会見はYouTubeで生配信されていたが、コメントを見ると「カッコいい」「良いね」と支持する反応もあれば、「ださい」「パンサーズじゃなくなるのか・・・」といった戸惑いの声も目立った。

 そういった戸惑いも十分理解できる。パナソニックパンサーズという名前は既にブランドとして確立していると思えるほどリーグ屈指の人気ぶりで、昨シーズンのリーグ戦ホームゲームでは毎試合ほぼ満席であった。SNSでも工夫をこらした発信が多く、コメントやシェア数も多い。そしてアジアを中心に海外のファンも非常に多い。ここまで達しているブランド力にも関わらず、それまでのパナソニックパンサーズの名残が一切感じられないチーム名をしたのには驚きだった。

 会見後、久保田社長にチーム名をガラリと変えたことについて問うと、いくつか理由をあげてくれた。

 「今回新しい名前にするのに合わせて、新しいロゴ(エンブレム)にするのは、自分たちで自立、独立でやっていくという覚悟。(パナソニックパンサーズだと)パナソニックのイメージが強すぎて、地域名を入れたとしても地域の人が本当に応援してもらえるのかというと、私はそう思えなかった。他の競技と比べて、バレーボールはやはりバスケに非常に近しいというか、良くも悪くも影響を受ける。バスケのBリーグが(チーム名に地域名を入れて企業名を入れない)そういう状態なのに、バレーが企業色全開でやっていて、本当に新規の人から応援してもらえるのかなとすごく思っている」

 そして、バレーチーム単体で十分収益化できる可能性を感じているからこそ、思い切った変化が必要だったという。

 「バレーの場合は、我々が持っているラグビーチーム(埼玉パナソニックワイルドナイツ)と違って、十分に自立、独立(した経営が)できるほどのポテンシャルがある。抱える選手の保有数だったり、(日本のバレーへの人気が高い)アジアでのポテンシャルも含めて、十分やっていける。これはもう勝負です。勝負だからこそ自分たちが変わらないと、日本のバレー界も変わらない。我々が変わることによって他にも変わる影響が出たらいいなと勝手ながら思っています。ウルフドックス(名古屋)さんの方が先にやっていますけどね」

 新しいリーグのSV.LEAGUEは、これまで以上に各チームが地域密着を求めている。おらが町のチームとして地域活性に貢献し、社会的意義のある存在となることを求めている。これまでのような、会社の福利厚生としての存在だった実業団チームから、おらが町のチームに変ぼうするのはそう簡単ではない。だからこそ覚悟を示した。

 選手、監督、GMとして長年にわたってチームに在籍している南部正司GMに、チーム名が変わることの寂しさはなかったのかと尋ねたところ「その名前の時に、監督としても選手としても優勝しているので、もちろん愛着があります。しかし、その愛着のある人間が、新たな時代にいくという姿勢をみせないと変わらない」と決意を示し、「影響力のあるチームがやっていかないといけない。バレーボールのリーグ改革の中で、(SV.LEAGUEが)大きな舵切りという印象をファンはまだ持たれていないと思う。女子も男子も世界で団体球技トップになっているのは実はバレーだけなんですよ。これは誇れること。その競技が今回いよいよ新たになるから、その本気度という意味でチーム名の変更ってインパクトがあると思う」と話した。

リブランディングで重要なのはMVVの発信

 そもそもリブランディングする必要性は何か。特にチームエンブレムを変更するというのは、海外の有名スポーツチームでも行われている。日本でもここ数年、JリーグやBリーグなどでリブランディングを行うチームが増えている。チームエンブレムをスタイリッシュでシンプルなデザインにするのが特徴だ。あるチームの社長は、デザインをシンプルにすることで商品開発がしやすくなってグッズの売り上げが伸びたと功能を教えてくれた。ただ、久保田社長はリブランディングで重要なのはチームの理念などの説明や発信だという。

 「リブランディングっていうのは、単純にチーム名を変えることではありません。どちらかというと、MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)のところが大事。クラブが生まれ変わって何を目指して何のためにいるのかっていうことを、クラブ全員が共通していくことのために必要なこと。ファンの皆さんにもわかってもらいたいから、もうちょっと説明する機会を増やしていきたい。その地域の皆さんとかに応援してもらうのであれば、ファンの皆さんに向けて、もっと経営サイドで発信しないと応援してもらえない。今までは会社が(チーム運営を)持ってくれたから、ただ単に試合に行って応援してくれればいいだった。これからは、グッズも買ってもらわなきゃいけないし、チケットももっと買ってもらわなきゃいけないし、放送も見てもらわなきゃいけない。そして、どうしてそういうことをしてもらわなきゃいけないのか、きちんと説明しないと選手たち自ら言ってくれない。(チーム、選手、ファン、地域など)皆がハッピーになることをわかってもらうようにするのが自分たちの仕事と思う」(久保田社長)

リブランディング発表会に登壇した久保田社長(右)、南部GM(左)

 同じパナソニック系列のスポーツチームであるサッカーのガンバ大阪も、2021年にリブランディングでエンブレムを変えた。当時、やはりサポーターやファンから賛否両方の反応が沸き起こったが、今では浸透している。久保田社長は、今回のリブランディングにおいて「ガンバ大阪のリブランディングは多く参考にさせて頂いた」という。

西田「今年はゼロイチの年」

 大阪ブルテオンは、10月11日に東京体育館である新リーグの栄えある開幕戦カードに選ばれている(対戦相手はサントリーサンバーズ大阪)。

 西田は会見の質疑応答で、新リーグ初年度に新チーム名で臨むことについて覚悟を語っている。

 「今年はゼロイチの年。0から1に作っていくところが正直1番大切な部分。SV.LEAGUEになって、有名な外国人選手が入ったり、人気の選手が戻ってきたりだとか、人が集まりやすいシーズンではあるかもしれない。ですけど、その人たちを次もう一度、土日にバレーボールの試合があるんだったら観に行こうかなと選択肢に入るような、ブランディングにうまく力を入れていくことになると思う。その一歩、1年目で、正直どこのチームも様子見にはなってしまう部分はあるかもしれません。そこで大阪ブルテオンを筆頭にいろんなきっかけから、多くの方に足を運んでいただけるシーズンになれば良いかなと思っています」

 約3カ月後の開幕戦までに、これから更なる発信やイベント等を仕掛けていくだろう。新しく生まれ変わった大阪ブルテオンが、これから世界的なクラブとしてどのように変ぼうしていくのか。既存のファンはもちろん、これから見てみようという人たちにとっても面白いだろう。


大塚淳史

スポーツ報知、中国・上海移住後、日本人向け無料誌、中国メディア日本語版、繊維業界紙上海支局に勤務し、帰国後、日刊工業新聞を経てフリーに。スポーツ、芸能、経済など取材。