2シーズン連続での準々決勝敗退

 最強の盾と矛の激突は、前者に軍配が挙がった。バルセロナは、チャンピオンズリーグ準々決勝でイタリアのユベントスに敗れた。リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールが形成するスリートップ“MSN”は、今シーズン同大会で2失点しかしていないGKジャンルイジ・ブッフォンの牙城を180分で1度も崩せなかった。プレーの強度が低く、ファーストレグ前半をユベントスにプレゼントしたことに加え、得点力が自慢のスリートップが2試合を通して無得点に終わったことが大きな敗因だった。

 週末にレアル・マドリードとの“エル・クラシコ”が控えているが、バルセロナはこの欧州での敗戦により、来シーズンに向けての動きが一気に加速するだろう。今シーズン限りで退任を決めているルイス・エンリケ監督の後任人事、メッシとイニエスタの契約延長の更新、そして来シーズンに向けての補強についての報道が、タイトル争いよりも大きく扱われることになるはずだ。仮に“エル・クラシコ”に敗れ、リーガタイトルの可能性もほぼなくなってしまった場合は、その偏向はより濃くなるに違いない。

 2シーズン連続で準々決勝敗退となったバルセロナには変革が求められており、クラブは大きな岐路に立たされる。

グアルディオラへの回帰か、ルイス・エンリケ路線の継続か

©Getty Images

 バルセロナはこれまでにリーガ、チャンピオンズリーグ、コパ・デル・レイの3冠を2度達成した。2008-2009シーズンと2014-2015シーズンだ。初めての3冠はジョゼップ・グアルディオラがベンチにいた時に、2度目はルイス・エンリケが指揮していた時に成し遂げている。バルセロナと言えば、ボールポゼッションだ。ボール保持率を高め、試合の主導権を握って勝利するのが今や世界の誰もが知る彼らのスタイルであり、クラブのDNAと評される。

 だが、グアルディオラとルイス・エンリケが指揮するチームのフットボールは全く違う。前者は前記したバルセロナのスタイルとして世界中の人が認知している戦い方だったが、後者は才能ある南米の3人のアタッカーのタレントを全面に押し出したスタイルで、カウンターから得点を奪う機会が多い。

 グアルディオラのチームのモーターはシャビ、イニエスタ、ブスケツの3人がいた中盤にあった。中盤でボールを支配し、サイドアタッカー、もしくはセンターフォワードのメッシにボールを配給し、得点を奪っていった。一方、ルイス・エンリケのチームの中心はMSNのスリートップだ。ディフェンスと中盤は素早く前線の3人にボールを渡し、攻撃は彼らのタレント任せである。

 両チームの違いは数字にも表れている。グアルディオラが指揮した2010-2011シーズンの1試合平均のボールポゼッション率は72.7パーセントと近年で最も高かった。ルイス・エンリケのチームは就任初年度こそ68パーセントだったが、年々ボールポゼッション率を下げており、今は1試合平均64.5パーセントとなっている。両者のスタイルの違いは明確だ。

 バルセロナには来シーズン、新監督がやって来る。はたしてグアルディオラのような中盤でのボールポゼッションをメインにしたスタイルに回帰するのか。それともルイス・エンリケが創り出したMSNを中心にしたスタイルを継続するのか。クラブとしてどのようなプレースタイルを念頭に置いて人選するのかに注目が集まる。


座間健司

1980年7月25日生まれ、東京都出身。2002年、東海大学文学部在学中からバイトとして『フットサルマガジンピヴォ!』の編集を務め、卒業後、そのまま『フットサルマガジンピヴォ!』編集部に入社。2004年夏に渡西し、スペインを中心に世界のフットサルを追っている。2011年『フットサルマガジンピヴォ!』休刊。2012年よりフットサルを中心にフリーライター&フォトグラファーとして活動を始める。